KAN|23歳大学5年生の日々、僕の音楽的原風景

The Beatlesがインプットされている

──「コタツ」以外では「る~る~る~」にもツアーのバンドメンバーが参加されていますね。

そうです。あの曲については、リズム録りのときは菅原くんにギターを弾いてもらったんだけど、そのあと僕がすべてのギターを弾きました。というのも、僕はギタリストとしては田舎の中学生みたいなもんですけど(笑)、ビートルズライクなこの曲にはそういう“気”を込めたかったんです。

──“気”というのは?

KAN

ビートルズの曲って、技術的にうまい下手とは別のところにあると思うんですよ。ただうまいだけじゃダメ。ビートルズのことを本当に好きで「全曲歌えます」というくらいの人でないと、それっぽく弾けないんです。ジョージ・ハリスンのギターのニュアンスこそがビートルズだし、サイドギターもジョン・レノンのニュアンスがあってこそ。ちょっとした瞬間にもジョージやジョンの癖があって、それは中学生の頃からビートルズをコピーしまくってる僕の体にはインプットされているんです。だけどそうじゃない人にとっては再現するのは難しいだろうし、僕がやったほうがいいなと思って。

──なるほど。では次にスウィングジャズ調のナンバー「ほっぺたにオリオン」のお話を。コーラスの重ね方や曲調が相まって、KANさんのこれまでの作品にはあまりないタイプの楽曲だと感じました。

2010年に「小学3年生」という曲をビッグバンド編成で作ったんですけど、すごく楽しかったのでそういうのをまたやりたいと思って、2011年にこの曲を書きました。でも同じ編成だと前と比べて小さくまとまってしまう気がして、しばらく寝かせておいたんです。で、いつ頃からか「この曲はドラムとベース以外全部自分の声でやってみよう」と考えるようになった。そうすればまったく新しいものができるんじゃないかと思ったんです。

──KANさんの声が多角的かつ重層的に聴こえてきて、すごく新鮮でした。

でも、これもライブでは再現できない曲ですよね(笑)。音程がある楽器はベースだけだし、ジャジーなコードがかなり動く曲なので、歌声のピッチが少しでもずれると成立しない。だから僕じゃなくて、ゴスペラーズとかが歌ってくれたらいいな(笑)。

──「ほっぺたにオリオン」と同じく、「ふたり」も書き始めてから時間を置いて完成させた曲だとか。

この曲は2006年から2008年頃に制作して、なんとなく置いておいたんですけど、今回やっと完成させました。アレンジも歌詞も、とにかくシンプルに仕上げてあります。唯一エレピのパートだけは、音をデータの段階で3つに分けてリスナーの左右と右後ろあたりから聴こえるようミックスしたので、聴いているうちに「これは普通じゃないな」とわかってくる不思議な感じにしました。

──そういった細かな工夫もありつつ、シンプルだからこそ耳に残る曲になっていると思います。

ギターの佐橋(佳幸)さんもレコーディングのときにいろいろアレンジ案を持ってきてくれたんですけど、結局「これ以上はやらないほうがいいね」と話し合って、アコギのストロークだけにしました。一方で、表題曲の「23歳」には佐橋さんのアイデアをたくさん入れさせてもらいましたけどね。

きゃりーちゃんとPerfumeは必ず

──ここまでざっとアルバム曲のお話を聞かせてもらいましたが、今作には楽曲制作の裏側を覗けるドキュメンタリー映像が収められたDVDが付属するのもポイントだと思います。この映像の見どころは?

打ち込み系の曲に関しては、僕の作業スペースでどんなふうに曲を作り始めるか、作曲の初期段階を映像の中で具体的に説明しているので面白いかもしれません。あと、「キセキ」でギターソロを弾いてくれた秦くんのレコーディング風景も入っていますし、秦くんのファンの方々にもエレキを弾いている彼の姿をできるだけ見てほしいですね(笑)。同様にTRICERATOPSがスタジオで僕に「ここはもっとこうしたほうがいいですよ」とアドバイスしてくれているシーンなんかもあるので、そういうところも観て楽しんでもらえたら。

──わかりました。ちなみにKANさんは最近、音楽をどのように聴かれていますか?

最近はあんまりたくさんは聴けていないですね……(笑)。昔レコードを聴いていたときとは比べものにならないくらい、聴くCDの量は減っていると思います。でもこれだけ長年活動していると知り合いのアーティストがたくさん増えるもので、彼らが新しく作ったものを聴くだけで十分かもしれないです。僕も、みんなが出す作品にはとても興味がありますし。

──今作に参加されているTRICERATOPSや秦基博さん、親交のあるMr.Children、aikoさんの作品だったりとか?

そうそう。aikoも本当にさすがですよね……まあ、そうは言いつつCDはけっこう自分で買っていると思います。ラジオでかける曲もなるべく買うようにしてますし、僕が純粋に好きで聴いているきゃりーちゃん(きゃりーぱみゅぱみゅ)とPerfumeの作品は毎回必ず買ってます。

──ここ数年、その2組への愛は揺るがないですね。あとはKANさんが毎年発表されている「Album of the Year」、今年はどの作品が選ばれるのか、ファンとしても気になるところです。

ははは(笑)。あれは完全に僕の好みで選んでいるだけなんですけど、気が付いたらもう10年以上続いていました。意外と皆さん楽しみにしてくれているようでなによりです(笑)。今年ももう終わりますし、そろそろ僕の独断で今年のベストな1枚を発表しようと思いますので、楽しみにしていてください。

KAN