ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん / の子 (Vo,G)

メンバー全員自宅訪問! 異例の個別インタビューでバンドの本質に迫る

音楽なんて終わってネットが主流になればいいのに

──もし音楽をやっていなかったら、の子さんは今何をしていたと思いますか?

恐ろしいですね。ケーヨーD2とかジョイフル本田で適当に働いてるんじゃないですかね。僕は音楽をやってるおかげで生きやすくなった部分もあるし。

──やっぱりの子さんにとって音楽は重要なんですね。

でも、なんだかんだで一番重要なのはネットですよ。

──音楽よりネットをやってるほうが楽しい?

もちろん楽しくないときもあるんですけどね。本音が飛んできたりするから、たまに精神的な部分をいじくられて憂鬱になったりしますし。でも、それでも俺にとってはありがたいんですよ。一時は「音楽なんて終わってこっちが主流になればいいのに」って本気で思ってましたから。音楽なんてくだらないなと。

──配信で視聴者からリアクションが戻ってくるのが、の子さんにとって居心地が良いということでしょうか。

居心地が良いわけじゃないですね。「未来が見える」みたいな感じ。

──でも、これからバンドがどんどんメジャーになっていくと、配信を続けるのは大変になるかもしれませんね。

どうなんですかね。やりますけど。

みんなも死んでほしい奴がいるんじゃないですか?

──ここまで話を聞いて、の子さんが動画配信をやってる理由はなんとなく見えてきたんですが、じゃあ音楽をやってる理由ってなんなんでしょうか?

趣味ですよ趣味。いろいろやってきたけど全部趣味。でもせっかくだから、ここまで来たら富と名声まで得ちまおうか、くらいの気持ち。

──例えば音楽で世界平和を訴えたいとか、人の人生を変えたいとか、そういうメッセージを意識したことはありますか?

それはないですね(笑)。おこがましい。自分が楽しいからやってるだけです。発散ですから。

──でも結果的に、神聖かまってちゃんの曲を聴いて救われたと言う人もどんどん増えているわけで。

インタビュー写真

知ったこっちゃねえよバカ野郎、です。「僕の気持ちを代弁してくれてんですよねー?」とか。うっせバカ野郎! 早く帰れコノヤロー!

──わはは(笑)。それじゃあ多くの人がそんな風に「代弁してくれてるんですよね?」って言うのはどうしてだと思います?

みんなも死んでほしい奴がいるんじゃないですか? よくわかんないですけど。曲を聴いた人がみんな共通して言うことは「私だって『死ねー!』って言いたいですもん!」ってこと。だったらおまえも書けばいい! なにが代弁者だよ!

──「夕方のピアノ」の「死ねよ佐藤 お願いだからぼくのためにさ」という歌詞のことですね。きっと何度も聞かれていることだと思うんですが、佐藤って誰なんですか?

佐藤って誰なんですか。そんなことは予想できると思いますよ。

──学生時代のクラスメイトとか?

はい。僕こういうことあんま話したくないんですよ。仮にメンバーであっても。

──の子さんが作る歌には人の名前が多く出てきますよね。佐藤のほかにも“かおりちゃん”とか“たけだくん”とか。

かおりちゃんは初恋の人です。でも詳しいことは誰も知らないです。メンバーも知らないこといっぱいありますよ、僕のこと。

──このままかまってちゃんが話題になると、佐藤だったり、歌われてる本人が曲を聴くこともきっとありますよね。

いや、もう本人は聴いてるけど。どうなんだろう。

──意識してますかね。

わかんないです。

このCDは僕の作品じゃなくてバンドの作品だから

──神聖かまってちゃんは今急速にファンが増えて注目を集め始めていますが、の子さんが作った音楽がリスナーに理解されてるという感覚はありますか?

ああ、そういうことは感じますね。「こんな曲ばっかやって、ふざけんなコノヤロー!」っていう人も割と多いですけど。僕はただ自分の曲を聴いてもらいたいってだけなんですよ。それだけでいいです。ここまで生きれたからもう俺、まだ満足とは言いたくないんですけど、なかなかよくやったなと思います。

──今回のCDを出すためにレーベルから声がかかったとき、どう思いました?

いや別に全然。どうでもいいです。

──じゃあ今回CDを出そうという話は誰が決めたことなんですか?

知らない。蚊帳の外のことなんで。あんまり考えないようにしてます。俺はとりあえず知名度さえアップして、ちょっと聴いてくれる人が多くなればいいかなぐらいな感じです。最終的には事務所を足蹴にして俺という存在を見せてやりますよ。

──ミニアルバムの収録曲はどうやって決めたんですか? 例えばさっき話に出た「夕方のピアノ」は入っていませんけど。

メンバーが適当に決めた。

──最近のライブで好んで演奏している「天使じゃ地上じゃちっそく死」「自分らしく」「黒いたまご」のような新しい曲はあまり入らず、これまでの代表曲を集めたベスト盤のような内容ですよね。

インタビュー写真

だってCDのレコーディング時間、ものすごい少なかったんですよ。レコーディングの合間にどんどん新しい曲ができてたのに。

──いつも完成した曲をすぐにネットで公開してきたのと比べると、CDはリリースまで時間がかかるし、だいぶ勝手が違う感じですか。

だから俺大変なんです! いろいろと! CDは「ぺんてる」と「ちりとり」だけは良かった。でもその2曲は単に曲が好きなだけ。だから言わばCDに入ってるのは全部クソみたいな感じ。

──ちなみにこれまで自分が作った曲で一番好きな曲ってなんですか?

気分によって違うけど「23才の夏休み」とか。あと「黒いたまご」も好きだし。

──「23才の夏休み」はミニアルバムにも収録されてますが、このCD音源も好きじゃないんですか?

大っ嫌い。僕の作品じゃないという感じですかね。あくまでバンドの作品なんですよ、そこらへんはもう僕の中で分けてるんですよ。

ミニアルバム「友だちを殺してまで。」 / 2010年3月10日発売 / 1575円(税込) / PERFECT MUSIC / XQFL-1014

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ロックンロールは鳴り止まないっ
  2. ぺんてる
  3. 死にたい季節
  4. 23才の夏休み
  5. 学校に行きたくない
  6. ゆーれいみマン
  7. ちりとり
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)

アーティスト写真

の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」をリリース。