ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん / の子 (Vo,G)

メンバー全員自宅訪問! 異例の個別インタビューでバンドの本質に迫る

取材当日、自宅でインタビュアーの到着を待っていたの子(Vo, G)にはひとつのアイデアがあった。それは大好きな風呂に入りながら気分良くインタビューを受け、その模様を配信サイト「ニコニコ生放送」で生中継するということ。そこで彼は風呂場にノートパソコンを持ち込み、湯船に浸かりながら配信をスタート。しかし音声の調子が悪いのを直そうとして浴槽から立ち上がったときに、たまたま彼の全裸がネット配信され、違反行為としてサイト運営者からアカウント停止処分を受けてしまう。

ナタリースタッフが予定時間を少し遅れて千葉ニュータウンに到着し、の子の住む団地の玄関扉を開けると、インタビュー配信ができなくなったため意気消沈し、見るからにテンションの下がった彼がノートパソコンの画面を眺めていた。

僕の曲はPVを作ったときに初めて完成する

インタビュー写真

──それではまず、音楽を始めようと思ったきっかけから教えてください。

曲を作り始めたのは14~15歳くらい。B'zとTHE BEATLESが好きだったから、ポップなものが好きってのは基盤になってますね……。チクショウ、ちんこ出すんじゃなかったわ……。ちんこ出さなかったら風呂場に行って、一緒に風呂に入ってインタビュー配信ができたのに……。それが一番面白かったのに……。クソッ!!

──その件は残念でしたが気を落とさずに……。最初に興味をもった音楽はB'zだったんですか?

B'zは最初だけど、ロックに興味が出たきっかけはTHE BEATLESかな。THE BEATLESのことを知ったのはちょうどベストアルバムの「1」が発売された頃で、TSUTAYAさんで借りたら頭の中でずっとずっと、もう頭おかしくなるんじゃねえかなってくらい「♪All You Need Is Love~」ってメロディが流れてて。

──「ロックンロールは鳴り止まないっ」の歌詞そのままなんですね。とすると、もう10年も曲を作り続けてるということになりますが。

ああ、よく曲作ったなあとは思うけど。でも僕はPVを作って初めて完成だと思ってるんで。曲とPVを離しちゃったら、もうそれは作品として成り立ってないんですよ。

楽器も映像もどっちも独学です

──曲はどういうときに作るんですか?

気分が安定してるときですね。でも「曲を作ろう」みたいなことはあんまり考えない。

──精神的に安定しないときはやっぱり作れないものなんですか。

いろんなところに問題があるんですよ。曲を作ったらPVも作んなきゃいけないし、そのPVも鬱の曲だったら鬱っぽくしなきゃいけないみたいな。いろいろ考えてますよ俺は。音楽においては。

──ネットにアップされているの子さんのデモを聴いた印象だと、ギターだけじゃなくていろんな楽器ができるみたいですけど、楽器の演奏や映像制作はどこかで習ったことはあるんですか?

どっちも独学です。結構勉強してますよ。映像にしろ音にしろ、僕はB級なのが好きなんですよ。きれいに作ろうと思えばできるんですけども、B級さが好きだからあえてやってるんです。まあ、パソコンのスペックが悪いことの言い訳なんですけど(笑)。

動画配信は本性を暴いてくれるから楽しい

──最近いろいろインタビューを受けてると思いますが、自分の話を聞かれるのはどんな気分ですか?

楽しかったですね。インタビューがっていうか、インタビューを配信するのが楽しいです。配信するとどんどん暴いてくるんで。

──視聴者がの子さんの本性を、ってこと?

インタビュー写真

うん、そう。普通なら面と向かって言わないようなこともボンボン言ってくるのが面白いです。当然、僕への中傷もいっぱい来てヘコむんですけど、そういったのも全部含めて面白いです。

──今日はインタビュー配信ができなくなってしまって残念でしたが、でもそもそもどうして動画配信を始めたんですか?

Googleで検索してたら「ライブストリーミング配信」って言葉を見つけて、最初それがライブハウスのことだと思ったんですよ。スティッカムってサイトなんですけど。なんだコレ? って思ってアクセスしてみたら、変なおばちゃんがカタカタしゃべってるだけで。だから最初は「何言ってんだこのおばちゃん! オナニーじゃねぇかこんなもん!」って思ったんだけど、あとで「やっぱこれすげえな! 新しいよ! こんな世界があるんだ!」って気がしてきて。自分でもやってみたいってなりました。

──それは何歳の頃?

22の後半ですね。2年前の話。その頃は2ちゃんねるに書き込みしてたんだけど、兄貴分から「おまえも配信しろよ! おまえならいけるよ!」とか言われて。

2chで自分のバンドのスレをじーっと見てる

──具体的には配信のどんなところに新しさや魅力を感じましたか?

サブカルチャー的な部分。いやいや、サブカルチャーっていうよりも、もっとドロドロドロドロした面があるな。okailoveくんっていう人がいたんですけども。配信しながら保育園の運動会に乗り込んでいって、「僕はロリコンでーす!」って叫んで警察沙汰になったの。いやー、okailoveくんはがんばったと思いますよ。俺は本当に尊敬してますね。まだ16歳で。すごいな。どっからあんなエネルギーが出てきたんだろう。

──自分の音楽を発表する手段として動画配信を始めたわけではないんですか?

そのつもりもありましたよ。みんなに音楽を聴いてもらうためにPV作ったりもしたし。でもそんなの全部オナニーだったから、まさか反響がくるとは思わなかった。ただ、ああやって目立とうとすれば「こいつがんばってんなあっ!」てことでさ、面白い奴が寄ってくるとかさ、やっぱそこらへんはわかってましたよ。

──なるほど。そういうアピールをするために以前は2ちゃんねるにコテハンで書き込みをしてましたけど、最近やってないですよね。

コテハンでは書きませんよ僕は! だって今コテハンでスレ立ててもアンチしか来ないんだもん。いや、2ちゃんねるには興味ありますよ。だから今はただ自分のバンドのスレをじーっと見てんの。ああ、こういうファンもいるかぁ、って。

──かまってちゃんのスレにはアンチはいないんですか?

いや、俺はみんなファンだと思いますよ。悪いコメントも良いコメント全部含めて。むしろ悪いコメント書いてる人のほうが意外とファンなんじゃないかなって思ったりするんですけど、どうなんですかね。

ミニアルバム「友だちを殺してまで。」 / 2010年3月10日発売 / 1575円(税込) / PERFECT MUSIC / XQFL-1014

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ロックンロールは鳴り止まないっ
  2. ぺんてる
  3. 死にたい季節
  4. 23才の夏休み
  5. 学校に行きたくない
  6. ゆーれいみマン
  7. ちりとり
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)

アーティスト写真

の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」をリリース。