ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん / の子 (Vo,G)

メンバー全員自宅訪問! 異例の個別インタビューでバンドの本質に迫る

ライブで何回も同じ歌を歌いたくない

──でも自分で宅録した曲をバンドで演奏したかったから、メンバーを集めてかまってちゃんを結成したわけですよね。

初めはそうだったけど、どんどん気持ちが薄れていって……。僕の個人的な問題ですけどね。僕が思い描くことが表現しきれなかったというか。だってデモは全部1人で作ってますもん。音を繊密に繊密に作れますもん。やってらんねえな。

──それはバンドの演奏をできるだけデモに近づけたいということですよね。メンバーのアイデアやバンドならではのアンサンブルに期待する部分はあまりないですか?

ないわけじゃないですけど、ちょっと難しいですね。うちのメンバー何も考えてないんで。あいつらは適当っていう名のもとに生まれてるんで。

──例えば、の子さんのデモ音源を忠実に再現できるメンバーがいたとしたらどうでしょう。

でも一緒にバンドやる相手は人間的な優しさが重要だから。楽器は人並みにできてればいいって思ってるから……。まあ、違うメンバーとやるだなんて今さらって感じですよ。もう遅い。

──今回はバンドでレコーディングしましたが、本当は自分のデモをそのままCDにしたかった?

インタビュー写真

それはないな……。要するに、1回出ちゃったものにはもう興味ないんですよ。だからライブで何回も同じ歌を歌いたくないし。誰でもそうなんじゃないですか?

──確かにそういう人もいるとは思いますが。の子さんがライブで同じ曲を何度も歌うのが嫌なのは、その曲を作ったときの嫌な気分を思い出すからだったりするんでしょうか? やっぱりの子さんは自分の精神面を削りながら歌を作ってるように見えるので。

ふふ(笑)。別にそんなんじゃないっすよ。そこらへんのコンビニにフラッと買い物に行くような、そんな気分で歌ってます。

──逆に、歌うことで自分の中のトラウマが小さくなって気分が楽になるとか?

わかんないです……。とりあえずそんな感覚はないです。

ネットの人たちを殺してまで

──かまってちゃんのライブについて語られるときに、よく「ライブで流血!」「ハプニング続出!」みたいなセンセーショナルな感じで煽られたりしてますよね。そういうことについて本人はどう思ってるのかなと。

いつの時代だよっつう話だ。くだらないですね。今どきそんなもんネタになるんすか?

──ライブ前に「今日は血を流そう」とか「今日は脱いでやろう」と考えたりすることもありますか?

いや、そのときそのときによりますよ。でも別に騒がれることを狙ってやってるんじゃない。どうしようもなく悲しいときとかに、思わずやっちゃう。

──悲しさを紛らわすために?

紛らわすんじゃなくて……、叩きつける感じ。無我夢中だから覚えてないことも多いです。酒に酔ってることもあるし。精神的に本当にガクブルガクブルガクブルガクブルガクブルだったりして、飲まなきゃ緊張がほぐれないんですよ。

──ライブの内容がハッピーなものになるのか荒れたものになるのかは、の子さんのコンディションによるところが大きいですもんね。あとセンセーショナルといえば、「友だちを殺してまで。」というアルバムタイトルもインパクトがありますが。

「ネットの人たちを殺してまで」っていうことです。

──の子さんにとってネットの人たちは友達なんですか?

友達とまではいかないですけど、いろんなことでお世話になったので。

──「ネットで話題のバンド」みたいなところから抜け出して、もっとメジャーなシーンに行くんだっていう宣言なんでしょうか。

まあ……、少なからずそういった伏線はありますよ。

「男の子」でも「女の子」でもないから「の子」

──ところで、そもそもな話なんですけど「の子」という名前の由来は?

「男の子」でも「女の子」でもないから「の子」です、って昔は言ってましたけど、適当ですよ……。まあ、単に響きがかわいいから。

──なるほど。でもその、男でも女でもない存在になりたいという感覚は「自分らしく」の歌詞でも表現していますよね。

そんな時期もあったってだけです。時期によるんで……。

──の子さんはよく、ボイスチェンジャーを使ってオクターブ上げたピッチで歌ってますよね。あれは子供の頃のことを歌っているから変声期前の声を表現しているのかと思っていたんですが、もしかするとあれも「男でも女でもない声」を意図したものなんですか?

うん……、多少はあります。どっちの意味も。でも実際は自分の頭に初めて曲が思い浮かんだときに、その歌が高い声だったってだけです。曲なんか全部直感です。考えて作るもんじゃないです。いつの間にかできるんです。そんなふうに作ったものだから、時間が経ち過ぎて覚えてないです。

──じゃあ今は「男でも女でもない存在に」という気持ちはあまりない?

……そう思ってたことはありますけど、今言われてもって感じです。そのときそのときなんで本当に。……いや、でも今日配信できたらよかったですね。すいません。

──配信できなくなったからテンションが下がってるんですね。

そう……、配信できないから一気にテンション下がった。周りにメンバーがいたらまだ少しはハイテンションになれたのに、ニコ生が停止されたショックもあって、もう完全に精神状態がオフですわ……。

──せっかくだから撮影だけ風呂場でやりますか?

いやいや……、いいですよ、もう(笑)。

インタビュー写真

ミニアルバム「友だちを殺してまで。」 / 2010年3月10日発売 / 1575円(税込) / PERFECT MUSIC / XQFL-1014

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CD収録曲
  1. ロックンロールは鳴り止まないっ
  2. ぺんてる
  3. 死にたい季節
  4. 23才の夏休み
  5. 学校に行きたくない
  6. ゆーれいみマン
  7. ちりとり
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)

アーティスト写真

の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」をリリース。