「僕たちのうた」は恩師とその教え子と共に

──2曲目に収められるのは最新アルバム「PUNKY」の収録曲「僕たちのうた」の混成3部合唱バージョンです。

この曲はデモを聴いた瞬間から卒業シーズンを思わせるような雰囲気だったり、切ないけど前に進んでいくような感じだったりがあって。そういう感覚を大事にしながら歌詞を書いていたときに、「合唱バージョンを絶対作ろう」と思ってたんです。それで今回、私が中学生のときに音楽を教えてくれた“マチコちゃん”と呼んでいる油原真智子先生に合唱をお願いしようと。調べたら今も音楽を教えていて、その学校が合唱コンクールの常連校だったんです。私と一緒に歌っているのはその先生の教え子たちですね。レコーディングをしたのは学校の卒業式のあとだったんですけど、マチコ先生がちょうどほかの学校に異動になるときで、1、2年生だけでなく卒業した3年生も合唱に参加してくれました。

──それは生徒たちにとっても感慨深いレコーディングになりましたね。

そうですね。私はもともと歌を歌うのが好きで、小さい頃からアーティストになるのが夢だったんですけど、「歌というものはお腹から声を出す」っていうのを最初に教えてくれたのが、マチコ先生だったんです。そこからどんどん歌にのめり込んで、休み時間は音楽室にピアノを弾きに行ったり、合唱に参加させてもらったり。なので、マチコ先生が教え子たちに指導している姿を見て、「私もこの先生に教えてもらえてよかったな」って感動しました。

──レコーディング当日も先生は指導をされていたんですね。

何度も同じ場所を歌っているとメロディだけをなぞるようになって、感情のない歌声になりがちなんです。その場で歌詞を理解しながら歌わないと人に伝わる歌にならないと思うんですけど、そういうことを先生が教え子たちに話して、生徒に歌詞を朗読させていて。やっぱり歌ってすごく繊細で、特に合唱はいろんな方向に向いた意識を1つの歌声にしなきゃいけないから、「こういうことを正しく教えてくれる先生はいいなあ」「私はこの先生に教えてもらってよかったなあ」って思ってました。

──今後、卒業シーズンに全国で「僕たちのうた」が合唱されるかもしれませんね。

歌ってもらえたらうれしいですね。

思い出深いNo Doubtの「Just A Girl」

──そして３曲目。今年1月に東京・Billboard Live TOKYOで行われたアコースティックライブ「MTV Unplugged: Kaela Kimura」で披露された、No Doubtの「Just A Girl」のカバーです。

キーボードのヒイズミマサユ機さん（H ZETTRIO）、ベースの佐藤征史さん（くるり）、ドラムの柏倉隆史さん（the HIATUS、toe）、ギターの會田茂一さん（FOE、ATHENS）というツアーのメンバーに、チェロの徳澤青弦さん（anonymass）をお迎えしています。

──「MTV Unplugged」といえば歴史ある人気企画ですが、カエラさんも楽しみにされていたそうですね。

アコースティックのライブって歌がまっすぐ聴こえて、下手だとお客さんにバレちゃうし、なかなか挑戦する機会がなかったんですけど、「いつかやってみたいな」とは思っていたんです。今年の私のテーマは「できないことをやっていこう」なので、ずっとできなかったアコースティックのライブができて、すごく楽しかったですね。普段速いテンポで歌っている曲でもゆっくりになって歌がメインに出てくると、自分自身に歌詞の内容がすごく突き刺さって聞こえて。だから「アコースティックっていいなあ」と思いながらやってました。

──No Doubtの「Just A Girl」をカバーしようと思ったのはなぜですか？

MTVの企画ということもあり「何か洋楽の曲をカバーしてくれませんか」というリクエストがあったので、高校生のときに聴いて影響を受けた「Just A Girl」をやることにしました。私は当時バンドがやりたくて、いかつい男の人たちの中、紅一点のグウェン・ステファニーみたいなスタイルで歌うことができたらいいなと思いながら夢を追いかけてたんです。そんな思い出深い曲を「MTV Unplugged」のステージで歌えたらすごくうれしいなと思って選曲しました。ただ、この日のライブは抽選制で来られなかった人もたくさんいたし、このカバーはなかなか人前で披露することもないから、今回シングルに入れることにしたんです。