ナタリー PowerPush - じん(自然の敵P)
一大メディアミックスのサイドストーリーを告白
高校生時代はドラマーだった
──楽器を始めたのはいつごろですか?
6歳のときに叔父が「自分もやってるからやってみろ」って感じでキーボードを買ってくれまして。その頃は島に住んでて音楽教室みたいなものがなかったので、自宅にピアノを持っていた学校の音楽の先生にちょっとだけ習ってて、本島に引っ越してきてからちゃんと音楽教室に通うようになりました。
──バンドを組んだりは?
中学生の頃、僕と同じようにTHE BACK HORNやASIAN KUNG-FU GENERATIONがすごく好きな友達がいて。高校も一緒だったので「高校生だし、バンドやらない?」ってことで、僕がドラムでその友達がボーカル、あと高校で仲良くなった友達と結成してはみました。
──「結成して“は”みた」って?
THE BACK HORNとかアジカンとかナンバーガールとかをちょっとコピーして、あとオリジナル曲もあったんですけど、ドラマーだから曲作りに直接タッチはしてないし、その曲自体、僕のドラムが「ズッタン! ズズタン!」って8ビートで入って、その上に適当な歌詞と3コードのメロディを乗せたものを「オリジナルだ」って言い張ってた感じで(笑)。そのくらいの活動しかしてなかったんです。
──でも、今やボカロPだしギターも弾いてますよね。作曲やギターはいつ頃から?
ギターはそのバンドでドラマーとして活動する裏でこっそりと(笑)。ギターボーカルをやるのが恥ずかしくてドラムを選んだんですけど、やっぱりギターボーカルってカッコいいじゃないですか。なので、家で耳コピをしながら練習だけはしてたんです。で、僕、高校を卒業してレコーディングエンジニア専攻のある専門学校に通ってまして。高校のバンドは卒業と同時に解散しちゃったんですけど、進んだ学校が学校だけに趣味の合う友達も結構いて、その人たちとまた例によって「バンドやろうか」って話になり、ギターボーカルとキーボード、それから楽曲制作を担当するようになりました。
──そのバンドではどんな曲を?
そのときは歌モノは作ってなくて、「アーッ」とか「ワーッ」っていうクワイヤ(聖歌隊)っぽいコーラスが入るだけの曲。なんていうか、toeみたいな速いビートにRADIOHEADやSIGUR ROSっぽい上モノが乗る感じ。なんのてらいもなく、好きなバンドの影響を受けまくったポストロックっぽい曲を作ってました(笑)。で、そういう曲をやるには打ち込みと生演奏を同期させる必要があったから、DAWやDTMのソフトを揃えていったって感じですね。
ボーカロイドってこういうこともできるんだ
──ボーカロイドを使うようになったのもその頃ですか?
そうですね。実は専門学校に入ってすぐにバンドを結成したわけじゃなくて、入学して1年くらい、いや8カ月かな、バイトに専念していた時期があって。その後、バンドを組んで打ち込みが必要になったから、周りの詳しい友達に教わりながらDTMやDAWを始めたんですけど、その中のひとりにボカロPがいたんですよ。正確には学校の友達のお兄さんなんですけど、友達の家に遊びに行ったら「今、兄ちゃんがボーカロイドで曲を作ってる」って言うんで「聴きたい、聴きたい」ってなって、そこで初めて「ああ、初音ミクってこうやって使うんだ」って知ったんです。
──18歳のときに専門学校に入学して、1年のブランクののち、バンド活動を再開した頃にボーカロイドを知ったっていうことは、19~20歳の頃。つまり、1~2年前ですよね。今どきの若者にしてはボカロ情報を仕入れるのがちょっと遅い気が(笑)。
島出身だからっていうこともあるのかもしれないんですけど、高校を卒業するまで家にパソコンがなかったんですよ。supercellのryoさんの「メルト」をどこかで聴いたことがあって、一応ボーカロイドの存在自体は知ってたんですけど、ニコニコ動画どころかネットもほとんど見てなかったし、実際にボーカロイドがどんなものなのかっていうことも本当にわかってなくて。
──じゃあ、そのお兄さんがボカロの師匠?
ですね。まず、お兄さんが作っていた楽曲がシューゲイザーっぽい感じだったのを見て「ボーカロイドってアイドルポップみたいなやつじゃなくて、こういうこともできるんだ」ってビックリして、「これなら僕もやってみたい」っていうことで「初音ミクを買ってきます」って島村楽器に走ったくらいですから。そのあと、最初の曲を投稿するときもお世話になりっぱなしでしたし。お兄さんから投稿するにはPVが必要なことを教わってたから、お兄さんの弟、要は学校の友達にイラストを描いてもらったんですけど、動画の作り方も投稿の仕方も全くわからなくて。結局、曲とイラストをお兄さんに送って「音源と絵だけ送るので、動画を作って投稿してください!」って代理投稿をお願いするという(笑)。
ニューシングル「チルドレンレコード」/ 2012年8月15日発売/ 1st PLACE / IA Project
- 「チルドレンレコード」初回限定盤
- 「チルドレンレコード」初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 MHCL-2110~2112
- 「チルドレンレコード」通常盤 [CD+DVD] 1575円 HCL-2113~2114
収録曲
- チルドレンレコード
- 群青レイン
- チルドレンレコード(Instrumental)
- 群青レイン(Instrumental)
DVD収録内容
- チルドレンレコード(Music Video)
- 如月アテンション(Music Video)
【初回生産限定盤】スペシャルブック付、スーパーピクチャーディスク仕様
1stアルバム「メカクシティデイズ」
収録曲
- ロスタイムプロローグ
- カゲロウデイズ
- ヘッドホンアクター
- 空想フォレスト
- エネの電脳紀行
- デッドアンドシーク
- 人造エネミー
- 透明アンサー
- 如月アテンション
- メカクシコード
- コノハの世界事情
- シニガミレコード
- カイエンパンザマスト
じん(自然の敵P)(じん しぜんのてきぴー)
1990年10月20日生まれ、北海道利尻島出身のボカロP。幼少期より音楽に親しみ、学生時代にはバンド活動を行う。2011年にニコニコ動画に投稿した「人造エネミー」でボカロPとしてデビュー。瞬く間にニコ動ユーザーの間で話題を集め、数々の楽曲でランキング上位入りを果たす。2012年5月、それまでに発表した楽曲の世界観を1枚のアルバムに集約した1stフルアルバム「メカクシティデイズ」をリリース。楽曲に登場するキャラクターの物語を小説化した「カゲロウデイズ -in a daze-」で、小説家としてもデビューした。2012年8月に1stシングル「チルドレンレコード」をリリース。