石崎ひゅーい|一度きりの人生を描いた「パレード」

石崎ひゅーいがニューシングル「パレード」をリリースした。

この作品はCDシングルとしては2016年8月発売の「ピノとアメリ」以来となるもので、テレビアニメ「歌舞伎町シャーロック」のEDテーマである表題曲と、カップリング曲「世界の終わりのラブソング」が収められている。今回のインタビューでは新曲が生まれた背景や、私立恵比寿中学に提供した「ジャンプ」などについて話を聞いた。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 映美

自分とエビ中を重ねていく作業

──シングルの話を伺う前に、私立恵比寿中学に提供した「ジャンプ」について聞かせてください(参照:私立恵比寿中学「playlist」インタビュー)。石崎さんの他アーティストへの楽曲提供と言えば菅田将暉さんが浮かびますが、あれはもともと友人関係から始まっていますよね。なのでエビ中へ提供すると聞いて、ちょっと驚きました。

石崎ひゅーい

安本(彩花)さんが僕の曲を歌ってくれているというのは聞いていたんですけど、そういうのもあってオファーをいただきました(参照:安本彩花、表現してみたいこと詰め込んだ21歳バースデーライブ)。自分の曲を女性に歌ってもらうのは今までなかったと思いますね。

──面識はあったんですか?

いや、なかったです。クリープハイプの尾崎世界観くんが「蛍の光」という曲をエビ中に提供していて、その流れで彼と一緒にライブを観に行ったことはあったんですけど。

──「ジャンプ」はどうやって作っていったんでしょう?

ライブを観ていたのでどういうパフォーマンスをする子たちなのかは頭の片隅にあったし、いろいろと大変なことを経験しながら前に進んでいるグループということは知っていて。そういう部分と自分の中にあるものを重ねていく作業でしたね。

──自分の曲を書くときとモードとしては違う意識もありました?

「ジャンプ」に関してはけっこう自分に近かったかもしれないです。自由に作っていいと言ってもらったのもあって、あまり意識せずに曲ができたかなと思いますね。自分の癖を生かして書き進める中で、自然とエビ中の視点になった部分もあるし、そういうのがうまく合わさったかなと思います。

──「今だ!」と叫ぶところなど、石崎さんらしいなと思いました。

あそこはでかい会場でエビ中が歌って、それを自分が聴いて泣くっていうのを想像しながら書きました。去年幕張メッセに観に行かせてもらったんですけど、案の定泣きましたね(笑)(参照:私立恵比寿中学、安本彩花も共に歌ったバンドセットの「大学芸会」)。すごくよかったです。ちょっと変な言い方になりますけど、親になった気分でした。

何か1つキーワードやテーマを考える

──新曲「パレード」はテレビアニメ「歌舞伎町シャーロック」のために書き下ろしたとのことですが、どの程度アニメを意識して作ったんでしょうか?

どのくらいだろう……タイアップのお話をいただいて作るときは、あまり意識しないほうがいいといつも思っていて。でも作品から離れすぎると意味がわからないものになってしまうから、何か1つキーワードやテーマみたいなものを考えるようにしていますね。今回に関しては謎解きのアニメなんですけど、ただの謎解きではなくて、人間の死生観が強く出ている作品だったので、そういうところをフィーチャーしました。人生みたいなものを書けたらいいなって。

──「パレードは終わるさ」で始まる歌詞が印象的でした。夢を見すぎないというか、すごくリアリティがありますよね。

石崎ひゅーい

「人生は続くよ。まだまだ長いから大丈夫だよ」と言うのと、「人生なんかすぐ終わるんだからくよくよすんなよ」みたいな言い方と、どっちがいいか迷ったんですよね。文章って面白くて「どっちを書いても一緒の意味だな」と思うことが最近多くて。この曲には「パレードは終わるさ」のほうが合ってると思ってそっちを選びました。あとアニメのキャラクターにインスピレーションを受けた部分もあります。

──具体的にどのキャラクターに?

主人公のシャーロック・ホームズとジェームズ・モリアーティです。ネタバレになるからあまり言えないんですけど、この2人の関係性を描こうというのはなんとなくあって。彼らにどんな言葉を投げかけたらいいんだろうと思いながら書きました。

──そうなんですね。全体的なトーンとしては暗くなりすぎず、でも楽観的でもなく、絶妙なバランス感があると思いました。

彼らへのメッセージを、現実とファンタジーを織り交ぜてどうロマンチックに言えるか、みたいなところはすごく考えましたね。

死ぬかと思った

──アレンジに関して言うと、ホーンセクションがいいアクセントになっています。

トオミヨウさんが管楽器を入れようって提案してくれました。管楽器を入れるのはひさしぶりだったのでどういうふうになるのかなと思ったんですけど、歌詞自体が底抜けに明るいわけじゃないからいい塩梅になったと思います。

──軽快なリズムとの相性もいいですよね。

世に出てない曲も含めてなんですけど、「重ための曲が多いね」ってトオミさんと話していて。軽やかな曲を作ろうということでリズムも考えていきました。

──ミュージックビデオは山田健人さんが監督です。

菅田将暉くんが監督した「クローバー」という作品で一緒になったことはあるんですけど、自分の作品を撮ってもらうのは初めてでした(参照:菅田将暉「クローバー」を石崎ひゅーいと弾き語り、アルバムへの思い語る)。発想が面白いし、とてもクレバーな方ですね。

──雪山が舞台で、すごく寒そうで。

いやー……死ぬかと思いました(笑)。本当に。「まあ大丈夫だろ」って思っていたんですけど、なめてましたね、雪山を。到着したら吹雪だったんですよ。ケータリングのおにぎりがカチンコチンでしたもん(笑)。そういうのを乗り越えて撮りました。観てる方が想像する100倍くらいキツかったです。