家入レオ|最前線のクリエイターたちとセッションした みんなで騒げて、笑えて、泣ける1枚

家入レオというフィールドで本気でバトルしてくれた

──「TIME」では杉山勝彦さん、須藤優さん、本間昭光さん、大西省吾さん、山口隆志さん、Soulifeのお二人に、かねてから家入さんがフェイバリットミュージシャンとして公言していた尾崎雄貴(warbear、Bird Bear Hare and Fish、ex. Galileo Galilei)さん、前作にも参加したPop Etcのクリストファー・チュウさんという、バラエティ豊かな顔ぶれが参加しています。

はい。杉山さんは以前からお願いしてみたかったので、シングルの「ずっと、ふたりで」で初めてお声をかけてみたら、杉山さんも「ずっと仕事をしたかった」と思ってくださっていたみたいで。うれしいことに尾崎さんもそうだったんですよ! 本間さんに至っては、それこそ槇原敬之さん、ポルノグラフィティ、いきものがかり、SMAPや関ジャニ∞といったアーティストとの仕事で、言わば音楽シーンを作ってきた、(楽曲制作において)余裕で100点を出せる方ですよね。でも「微熱」のアレンジでは「僕とレオちゃんがやるんだったら、もっとここをこう直したほうがいいと思うんだ!」と、大人の余裕もありながら、闘志を燃やしてくださって。皆さん、家入レオというフィールドで本気でバトルしてくれて、その熱さがアルバムのクオリティをどんどん上げていってくれたんです。

──それは理想的ですね。

はい。だからそれはもう楽しかったし、アルバム制作ってこうあるべきなんだなって思いました。つまり、単に「楽曲を提供してもらいました」「アレンジしてもらいました」「弾いてもらいました」ではなくて、私と皆さんとの間にきちんとした出会いと関係性が築かれていて、それによって生まれた曲だけが収録されているんです。あとは先ほどお話しした、私自身のより客観的な視点ですね。ボーカルのテイク選び1つとっても、リード曲として「春風」を選ぶにあたっても、ともかくより届けることを第一に考えて、自己満足にならないよう徹底して臨みました。

──「春風」はどこか懐かしい青さと切なさを持った曲ですね。今日、この取材に向かう電車で車窓から流れる景色を見ながら聴いていたら、ことさらにグッときました。

うれしい! そういう聴き方がばっちりハマる曲だと思います(笑)。「春風」の作詞はSoulifeの河田総一郎(Vo, G)さんですが「面影(シルエット)」「季節(シーズン)」「メモリー」といった言葉を最初に見たときは、一瞬どうかな?って迷ったんです。でもこの野暮ったさや懐かしさがキャッチーなんだよなあって思い直して。

──本当にそう思いますよ。

その一方で尾崎さんが使う言葉はやや難解ですけど、味わいがあると言うか、とてもロマンチックですよね。「どうしてこんなに女の子の気持ちがわかるんだろう? 本当は女の子なのかな?」と思うぐらい(笑)。でもそこがちょっと少年っぽい私の声とよくマッチしたと思うし。歌のディレクションについても、何も言わないんです。たぶん、そこは彼自身がシンガーだからだと思うんですね。何か意見を言うときの温度感もとても気を遣ってくれているのがわかったし。なんて言うか……プロの作家のアプローチと、アーティストのアプローチの違いと説明すればいいのかな? そうした違いや利点も、このアルバムのバランスに大きく作用しているんじゃないかな。

シーン最前線のクリエイターとの制作で学んだこと

──もっと言えば、杉山さんはAKB48、SKE48、HKT48、欅坂46や嵐の楽曲に参加されていて、Soulifeも欅坂46や乃木坂46の楽曲に参加されています。須藤さんは米津玄師さんやゆずのサポートを務めていますし、本間さんについてはさきほどの通りです。こうしたプロフィールを見ると、この「TIME」は現在のシーンにおける最前線のポップクリエイターたちが集結したアルバムになったとも言えるのでは?

自分がご一緒したかった方への興味とクオリティを追求したら、結果としてそうなりましたね。特にアイドルへの楽曲提供って、日本の作家にとって、本当にいい修練のような場であり、その畑で実力を認められた方々が最前線へと踊り出るんだなって、今回の制作を通して改めて学んだという思いです。

──そうした制作を通じて得られた経験や思い出されるエピソードは?

いっぱいあるなあ……例えば、提供された詞曲には、リクエストは加味されていても、最初は自分のDNAは宿っていないわけですよね。だから歌でどう個性を付けるか、爪跡を残すかを考えるわけですが、今回はどの曲も自分で作った曲以上に自分らしさが滲み出ていることが面白かった。客観的な視点から自我を消そうとすればするほど、より自分らしさが浮き彫りになると言うか。

──それは興味深いですね。

あと、これは自分なりのやり方なんですが、打ち込みメインの曲とか、今回の「ファンタジー」みたいなオケの場合、私はこれまであまりオケ録りには参加してこなかったんです。それは仕上がってきた緻密なオケに対して、正確に歌を合わせることでグルーヴを作りたかったから。でも今回のアルバムの曲「春風」や「ありきたりですが」はあえてBPM通りじゃなく、少し後ろノリだったり前ノリだったりするので、歌とオケを合わせたほうが味が出るんじゃないかなって。だから、できるだけスケジュールを合わせてオケ録りから顔を出して、仮歌を歌いました……そうそう、「ありきたりですが」は、杉山さんに「山口百恵さんや中森明菜さんのような曲が歌いたい」と発注したらこれが届いたんですよ。

──今回のアルバムで随所に感じられる歌謡性の一端はそういうことでしたか。

はい。中森明菜さん、山口百恵さん、美空ひばりさんの存在は自分の中でとても大きくて。松田聖子さんも最近になって追求し始めたんです。やっぱり1曲1曲、歌の中の主人公を演じるような気持ちで歌える歌が好きなんですね。

──ちなみに明菜さんや百恵さんはどのぐらい好きなのですか?

中森明菜さんの「ザ・ベストテン」のDVDはコンプリートでそろえています。それを部屋で観ながらマネするのが大好きで(笑)。

──思った以上にガチですね(笑)。

はい! 山口百恵さんも古本で写真集や書籍を買い漁ってます(笑)。

家入レオ

強い曲を書かないと埋もれちゃうんじゃないかという危機感もあった

──先ほど話題にのぼった通り、今回家入さんは「恋のはじまり」「TOKYO」「アフターダーク」「だってネコだから」「微熱」「祈りのメロディ」と全13曲中6曲で作詞または作詞曲を手がけています。自身の作家性についてはどう捉えていますか?

うーん……まず自分で書く詞曲には、先ほどお話しした歌謡曲からの影響が色濃く表れていると思いますね。不器用ながらも、伝えたいことがより明確になってきたんじゃないかなって。あとこれはうれしい悲鳴なんですけど、今回はたくさんの作家さんのいい曲がいっぱい出そろったので、強い曲を書かないと埋もれちゃうんじゃないかという危機感もあったかな(笑)。例えば「微熱」は、本間さんに例のプロットみたいなものをお渡ししたら、本間さんがそれを歌詞だと勘違いなさって、そこにそのままメロディをつけて返してくれたことから生まれたんですよ。

──それは面白いなあ。

作詞のフォーマットも関係なく、自分の中で今本当に思っていることがそのまま赤裸々に表れていて。だから詞先か曲先で言うと、私にとっては初めて詞先で生まれた曲になりましたね。

──それこそ家入さんは十代でデビューした頃はただただ歌うことにがむしゃらだった。例えば16歳とか17歳の頃って、年齢以上に自分の中身は成熟していても、なかなか他者にそれを伝えるのは難しいじゃないですか。23歳を迎えた今、ようやく自分の表現と年齢の足並みがそろってきたのかもしれませんね。

それ、すごくあると思います。あとね、私、すごいショートスリーパーで、夏場とか2時間しか寝なくてオッケーなんですけど……。

──マジですか(笑)。大丈夫ですか?

一時、不眠症なのかとすごく悩んだんですけど、どうやら診断を受けたら、私にとってはそれで正常だからいいという結論に至って。

──それって人より2時間の眠りが深いということなんですかね?

たぶん。つまり起きてる時間だけで言うと、人が1年生きている時間で、私は1年3カ月ぐらい生きている計算になるわけで、デビューしてからの5年間も、体感としては5年よりも長いわけで。だからよく何か懸案になっている課題をマネージャーさんに「あの案件、どうなりました?」と確認すると「まだだよ。なんでそんなに焦ってるの?」とか言われて。つまり皆さんにとっては3日しか経ってないけど、私は1週間ぐらい経っているという体感なので。

──なるほど。なかなか生き急いでいますね(笑)。

そうなんです。Netflixとか動画配信サービスはだいたい利用しているし、本も読んで映画も観ますけど、別に情報処理能力がズバ抜けているわけではないので、単に起きている時間が長いだけで(笑)。しかも友達にもスタッフさんにも毎日相手はしてもらえないし。ただ、感情と年齢の足並みがそろってきたからか、最近はようやくショートスリーパーな自分との付き合い方や自己管理のコツもわかってきて。たくさん寝られる人がうらやましいし、誰かが泊まりに来たり、どこかに泊まりに行ったりすると大変なんですよ。起きちゃうから。だから住むところもできるだけ繁華街にしていて。街灯とかないような土地だとマジで死んじゃいそうだから。

──なんだか家入レオ、苦労が多いなあ!(笑)

多いんですよ! 大変なんですよ!(笑)

家入レオ「TIME」
2018年2月21日発売 / Victor Entertainment
家入レオ「TIME」初回限定盤A

初回限定盤A [CD+DVD]
5292円 / VIZL-1311

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家入レオ「TIME」初回限定盤B

初回限定盤B [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1312

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家入レオ「TIME」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64927

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CD収録曲
  1. ずっと、ふたりで
    [作詞・作曲・編曲:杉山勝彦]
  2. 春風
    [作詞:河田総一郎(Soulife) / 作曲・編曲:Soulife]
  3. Relax
    [作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴]
  4. 恋のはじまり
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志]
  5. TOKYO
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:大西省吾]
  6. アフターダーク
    [作詞:家入レオ / 作曲・編曲:須藤優]
  7. ファンタジー
    [作詞:家入レオ / 作曲:本間昭光 / 編曲:nishi-ken]
  8. ありきたりですが
    [作詞・作曲:杉山勝彦 / 編曲:坂本昌之]
  9. だってネコだから
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志]
  10. パパの時計
    [作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴]
  11. 微熱
    [作詞:家入レオ / 作曲・編曲:本間昭光]
  12. 祈りのメロディ
    [作詞:家入レオ / 作曲:須藤優 / 編曲:須藤優、佐々木望(Soulife)]
  13. 大事なものすべて
    [作詞:尾崎雄貴 / 作曲:尾崎雄貴、クリストファー・チュウ / 編曲:尾崎雄貴、Pop Etc]
初回限定盤A DVD収録内容

家入レオ 5th Anniversary Live at Zepp 2017.9.7 at Zepp DiverCity映像

  • サブリナ
  • lost in the dream
  • Kiss Me
  • Silly
  • Party Girl
  • 恍惚
  • Lay it down
  • 君がくれた夏
  • love & hate
  • イジワルな神様
  • ひと夏の経験
  • 少女A
  • だってネコだから
  • 純情
  • Bless You
  • Hello To The World
  • 僕たちの未来
  • Shine
  • ずっと、ふたりで
  • サブリナ
初回限定盤B DVD収録内容
  • Relax (Music Video)
  • Relax (Making Movie)
  • 春風 (Short Film)
  • 春風 (Music Video)
  • 恋のはじまり (Recording Document)
家入レオ 6th Live Tour 2018 ~TIME~
  • 2018年5月3日(木・祝)東京都 オリンパスホール八王子
  • 2018年5月12日(土)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2018年5月13日(日)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2018年5月19日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2018年5月20日(日)香川県 サンポートホール高松 大ホール
  • 2018年5月26日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年6月1日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
  • 2018年6月2日(土)北海道 音更町文化センター
  • 2018年6月9日(土)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2018年6月16日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2018年6月22日(金)三重県 三重県文化会館 大ホール
  • 2018年7月1日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
家入レオ(イエイリレオ)
家入レオ
1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼い頃から音楽に親しみ、13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞。以降もコンスタントにリリースを重ね、2016年7月に4thアルバム「WE」を発表した。デビュー5周年を迎えた2017年4月に初の東京・日本武道館公演を開催し、2018年2月にはニューアルバム「TIME」をリリースする。