家入レオ|最前線のクリエイターたちとセッションした みんなで騒げて、笑えて、泣ける1枚

家入レオが5枚目のアルバム「TIME」を2月21日にリリースする。前作「WE」からおよそ1年7カ月振りのアルバム作品となる本作には、ドラマ主題歌として好評を博したシングル「ずっと、ふたりで」や、本人出演のCM曲「Relax」に、家入レオ×大原櫻子×藤原さくら名義でリリースされた「恋のはじまり」のソロバージョンを含む全13曲が収録されている。前作アルバムで打ち出した解放感はそのままに、シーンの最前線で活躍中の才能たちとの有機的なコラボレーションによって楽曲単位のクオリティを追求することで、より多くのリスナーの心に寄り添うポップスの完成を目指したと言うこの1枚。まさにその通りの結実を迎えた力作となった。

家入にとって音楽ナタリー5度目の登場である今回のインタビューでは、デビュー5周年を経て本作へとたどり着いた経緯から、杉山勝彦、本間昭光、尾崎雄貴(warbear、Bird Bear Hare and Fish、ex. Galileo Galilei)ら多彩な作家陣とのコラボレーションの模様やライフスタイルまでを、率直な言葉でじっくりと語ってくれた。また特集後半には、本作に参加したクリエイターが「TIME」のリリースに寄せたコメントを掲載する。

取材・文 / 内田正樹

初めての経験なのに、レコーディングの最中に「ただいま」って思えた

──家入さんはご自身のオフィシャルブログで繰り返し「絶対に届けたいの」「待ち遠しい。早く聴いて貰いたい。届けたい」と書かれていました。それだけの手応えをこの「TIME」に感じているのだなと受け取ったのですが。

そうですね。今こうして話している間も、早く届いてほしい、聴いてほしいと思っています。私は自分自身の思いをすぐに音楽へと変換できるような器用さに欠けていて、いつもすごく時間がかかるんですね。でも、こうしていろんな作曲家さんやアーティストとアルバムを作るのは初めてのことなのに、レコーディングの最中に「ただいま」って思えたんです。不思議ですよね。それぐらい、このアルバムの中には、私がちゃんと私として存在している。制作の途中から、そんな手応えのようなものが感じられました。

──新作に触れる前に聞かせてほしいのですが、家入さんは前作アルバム「WE」(2016年7月リリース)から今作までの間に初の日本武道館公演(2017年4月30日開催)を行いましたね。この日の模様はすでに映像作品「5th Anniversary Live at 日本武道館」としてもリリースされていますが、今振り返ってみて、初めて立った武道館のステージはいかがでしたか?

いろいろな思いが巡っていましたが、ともかく、あの時点でやりたかったこと、形にしたかったことを、自分なりにしっかりと表現することができたことが本当にうれしかったです。

──会場で観ていて、堂々としたパフォーマンスだと感じました。

うれしい! ありがとうございます。一瞬一瞬に、私からの、バンドからの、お客さまからの愛があふれていたステージだったと思います。ここから10周年に向かっていけるという手応えや、そのための課題のようなものを手にすることができました。まだ感覚めいたものしかありませんが、それを具体的に、立体的にしていくことが、ここから自分が進んでいくうえでの指針になりそうですね。

家入レオ

みんなで騒げて、笑えて、泣ける1枚を目指した

──デビュー5周年と武道館を経て自信を付けることもできたからこそ、そうした指針が生まれたのでしょうか?

そうかもしれません。もしかしたら、5周年を機に私のファンを卒業しちゃう人だっていたかもしれない。そういう入れ替わりは仕方のない部分もある。でもやっぱり私は私で、いろんな人が応援してくれるよう、いつも新しい何かにトライしているアーティストでありたい。まさに初めてのドラマ出演(2017年10月から12月にかけて放送されたテレビ東京系ドラマ「新宿セブン」。主演をKAT-TUNの上田竜也が務めた)はそういうトライの一環でしたし。

──「新宿セブン」の出演は大きかったですか?

むちゃくちゃ大きかったですね。これまでもそういったお話はいただいていたのですが、完全に自分の力不足の問題で、お受けしても期待にお応えできないかもって。だってほら、器用なタイプじゃないから。ただ5周年という節目を迎えて、毎年のようにシングルとアルバムをリリースしていくという流れに、正直ちょっと限界を感じ始めていたんです。毎回すごく楽しいし、もちろん全力をかけてはいるんですが、どこかルーティン化してしまっているんじゃないかって危機感もあって。ずっと音楽を続けていきたいからこそ、新しいトライにも踏み出すべきだと思うようになって。その気持ちをスタッフに話していたら、ちょうどドラマのお話しをいただいたんです。なんの役かもよくわからないまま「やります!」って手を挙げて、蓋を開けてみたら餃子屋の看板娘で殺し屋の役だったという(笑)。

──ネット上では“家入レオの怪演が怖すぎる”みたいなまとめができていましたけど(笑)、女優初体験の演技でそこまで書かれるなんて素晴らしいことですよね。

私もそう思いました。うれしかったし、面白かった。ものすごく勉強になりました。歌を歌っているときはすべてにおいて自分が中心ですが、ドラマの現場はそうじゃない。主役を中心にたくさんの役がいて、その中の1人として脇を固める自分がいる。そうした立ち位置からじゃないと経験することのできないことって、たくさんあるんですよ。あと、例えばあるセリフに自分なりの気持ちを込めても、相手にはまったく違う形で伝わることがある。そんな当たり前の発信者と受信者の視点の違いについても、改めて学べるいい機会になりましたね。

──そうした経験は今回の新作にも反映されていますか?

それはもう。特に自分の表現を客観視できるようになったという点に関しては。だから今回のアルバムは「自分ってこういう人なんです」とか「こういう経験をしました」止まりじゃなく、ともかくみんなで騒げて、笑えて、泣ける1枚を目指そうという思いでレコーディングに励みましたね。

「WE」が2度目の1stアルバムなら、「TIME」は?

──今回の新作に関するイメージを具体的に描き始めたのはいつ頃でしたか?

制作という意味で言えば「WE」の完成直後からやってはいたんですけど、具体的には去年からでした。「WE」以前までの私はアルバムの楽曲の半分以上を西尾芳彦さんと作っていたので、日頃から2人の間でストックがあったんですね。で、その形を卒業して作ったのが「WE」でした。今振り返ると、主に多保孝一さんとタッグを組んだ「WE」は、音楽的にもメンタル的にも、あらゆる意味で解き放たれた一枚になりました。これについては前回のナタリーのインタビューでもお話ししましたよね?(参照:家入レオ「WE」インタビュー|10代の葛藤を超えてたどり着いた“2度目の1stアルバム”

──“修行のように過ごした十代の呪縛”から解き放たれた時期でしたよね?(笑)

はい(笑)。でも必要な時間でしたね。同時に、打ち込み中心だったトラックが生楽器中心になったことで、いろいろなミュージシャンの方々とも知り合えました。それまで以上に「何これ? レコーディングって、めっちゃ面白いじゃん!?」と思える瞬間もたくさん増えて。

──それこそ前回のインタビューで「WE」を自ら「2度目の1stアルバム」と語っていましたが、それで言えば今回の「TIME」はまさに……。

「2度目の2ndアルバム」ですよね?(笑)

──はい(笑)。

私も本当にそう思います。今回は自分のストックや手札は一旦置いといて、1曲1曲、ゼロから新たに設定したかった。そのうえで「自分が今聴いている音楽はこうだから、こういう曲を作ってみたい」とか「私はこの曲でリスナーにこういう顔になってほしい」とか、これまで以上にきちんとしたスケッチを描いて作りました。

──ちなみにそのスケッチとは、家入さんの頭の中だけにあるものですか? それとも絵や文字化されたものなのですか?

文字ですね。走り書きのようなプロットです。それをディレクターさんやマネージャーさんが集まったミーティングの場で広げて、「客観的にどう思う?」と聞いて。「こういう要素もあったほうがいいよね」とか「あのミュージシャンにお願いしてみたら?」といった意見を交わし合いました。特に今回は全体的なコンセプトを重視すると言うより「1曲1曲いい曲がそろえば、必ずいい1枚のアルバムになるはずだ!」という思いから、1曲ごとに強く情熱を込めて作ろうと決めて。

家入レオ「TIME」
2018年2月21日発売 / Victor Entertainment
家入レオ「TIME」初回限定盤A

初回限定盤A [CD+DVD]
5292円 / VIZL-1311

Amazon.co.jp

家入レオ「TIME」初回限定盤B

初回限定盤B [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1312

Amazon.co.jp

家入レオ「TIME」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64927

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. ずっと、ふたりで
    [作詞・作曲・編曲:杉山勝彦]
  2. 春風
    [作詞:河田総一郎(Soulife) / 作曲・編曲:Soulife]
  3. Relax
    [作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴]
  4. 恋のはじまり
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志]
  5. TOKYO
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:大西省吾]
  6. アフターダーク
    [作詞:家入レオ / 作曲・編曲:須藤優]
  7. ファンタジー
    [作詞:家入レオ / 作曲:本間昭光 / 編曲:nishi-ken]
  8. ありきたりですが
    [作詞・作曲:杉山勝彦 / 編曲:坂本昌之]
  9. だってネコだから
    [作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志]
  10. パパの時計
    [作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴]
  11. 微熱
    [作詞:家入レオ / 作曲・編曲:本間昭光]
  12. 祈りのメロディ
    [作詞:家入レオ / 作曲:須藤優 / 編曲:須藤優、佐々木望(Soulife)]
  13. 大事なものすべて
    [作詞:尾崎雄貴 / 作曲:尾崎雄貴、クリストファー・チュウ / 編曲:尾崎雄貴、Pop Etc]
初回限定盤A DVD収録内容

家入レオ 5th Anniversary Live at Zepp 2017.9.7 at Zepp DiverCity映像

  • サブリナ
  • lost in the dream
  • Kiss Me
  • Silly
  • Party Girl
  • 恍惚
  • Lay it down
  • 君がくれた夏
  • love & hate
  • イジワルな神様
  • ひと夏の経験
  • 少女A
  • だってネコだから
  • 純情
  • Bless You
  • Hello To The World
  • 僕たちの未来
  • Shine
  • ずっと、ふたりで
  • サブリナ
初回限定盤B DVD収録内容
  • Relax (Music Video)
  • Relax (Making Movie)
  • 春風 (Short Film)
  • 春風 (Music Video)
  • 恋のはじまり (Recording Document)
家入レオ 6th Live Tour 2018 ~TIME~
  • 2018年5月3日(木・祝)東京都 オリンパスホール八王子
  • 2018年5月12日(土)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2018年5月13日(日)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2018年5月19日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2018年5月20日(日)香川県 サンポートホール高松 大ホール
  • 2018年5月26日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年6月1日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
  • 2018年6月2日(土)北海道 音更町文化センター
  • 2018年6月9日(土)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2018年6月16日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2018年6月22日(金)三重県 三重県文化会館 大ホール
  • 2018年7月1日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
家入レオ(イエイリレオ)
家入レオ
1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼い頃から音楽に親しみ、13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞。以降もコンスタントにリリースを重ね、2016年7月に4thアルバム「WE」を発表した。デビュー5周年を迎えた2017年4月に初の東京・日本武道館公演を開催し、2018年2月にはニューアルバム「TIME」をリリースする。