ナタリー PowerPush - 家入レオ
「この世界に染まりたくない」17歳の決意
歌しか居場所がなかった
──レオさんがシンガーを志したきっかけはなんだったんですか?
歌を歌いたいと思ったのは、やっぱり自分が小さい頃からすごく不器用だったからだと思うんです。小さい頃から歌うことが大好きで、歌しか居場所がなかったと言っても大げさじゃなくて。歌っているときはどんな感情を見せても許されるし、大人にも褒めてもらえたから。
──感情をうまく表に出せない子供だったんですか?
そうですね。心を開いた人に対しては、イタズラしたりギャンギャン言ってたんですけど(笑)。そこにいくまでが大変で。保育園の先生には「子供っぽくない子供」って言われていたみたいです。
──今は自分がなぜそういう子供だったのか分析できているんですか?
そこは3枚目のシングル「Bless You」を書いたときにちゃんと向き合えたんです。
──あの曲はレオさんが幼い頃から抱いていた感情や感覚を表現した曲ですよね。
そうですね。やっと冷静に向き合えたというか。家庭の事情で小さい頃に両親と離れて親戚の家を転々とした時期があったんです。周りの人にはすごく愛してもらっていたし、そのことを悲観的に捉えることはなかったんですけど。でもそれが今の私に及ぼしている影響は大きいし、子供ながらにワガママを言ったらまた別の場所に追いやられてしまうんじゃないかという不安を覚えていたのも事実で。
──どうしたって、そうなりますよね。
それで大人の人の表情に敏感になっていったんです。子供って普通は感情をストレートに出せると思うんですけど、それを出してしまうと周りに迷惑をかけると思っていたから、どうしても無表情になってしまっていたんです。そうしてるうちに心の中に閉じこもることが多くなっていって。
親の世代からも相談を受けるんです
──「Bless You」の歌い出しのライン、「愛なんていつも残酷で もう 祈る価値ないよ」みたいな思いは、幼い頃から抱いていたんですか?
そうですね。今まではずっと抱いていました。親戚の家を転々としたのちに福岡で両親との生活に戻った後も、やっぱりお互いうまく踏み込めない時期があって。大げさかもしれないけど、「ああ、私は愛されていないのかもしれないな」って思ってました。
──それまでの環境を考えれば、全然大げさではないと思う。
ずっとそのことでいろいろ悩んでいたし、葛藤もあったんですけど。でも東京に来て自分の世界が少しずつ大きくなっていったときに「私って、やっぱりちゃんと愛されてたんだな」って気付くことができたんです。
──音楽活動をきっかけに10代で自立して、両親と離れて気付くことがあった。
そうですね。今、一番いけなかったと思うのは、親子なのにお互いがお互いを傷付ける勇気がなかったということで。「なんであのとき、私を手放したの?」って素直に訊くことで、両親も「こういう事情があったからだよ」って言えたと思うし。そうすることで、怒鳴り合いながらでも距離を近付けることができたと思うんですよね。今、学校でクラスメイトの話を聞いていても親との距離感に悩んでる子が多くて。リスナーの方からも「大人との距離の取り方がわからない」というメッセージをたくさんいただくんです。私の親の世代の方からは「娘、息子が何を考えているかわからない」というメッセージがあったり。
──親の世代から?
そうなんです。だから「Bless You」は、自分の経験を音楽に活かして、同世代の子の気持ちを代弁できたらいいなと思って書いたんですよね。「愛なんていつも残酷で もう 祈る価値ないよ」って、心を落ち着かせるために小さい頃から胸の中で唱えていて。でも歌詞にも「僕は愚か者」ってフレーズがありますけど、今はそう思っていた自分は愚か者だったんだって気付けたから。ちょっとは成長できたのかなって思います。
音楽塾ヴォイスに中1で突撃
──自分で曲を作ろうと思ったのは13歳のときだったんですよね。
そうですね。当時はまだ自分の世界から大人という存在をシャットアウトしていて。全く喋らなかったんです。何されても無視みたいな。大人が怖かったんですね。両親に対する疑心を全ての大人に対しても抱いていたし。今はホントにごめんなさいって思うんですけど。曲を作って歌いたいと思って、音楽塾ヴォイスの門を叩いたときも私はヒドい態度を取ってしまったんです。そこで今プロデュースをしていただいている西尾(芳彦)さんと出会うんですけど。普通はデモテープを送って、合否が出て、レッスンが始まるという順序を踏むんですね。でも、私はデモテープを送った後に待ち切れなくて「会わせてください!」って突撃して(笑)。普通はそこで拒絶されると思うんですけど、西尾さんは会ってくれたんです。
──レオさんのただならぬ熱意を感じたんでしょうね。
でも、お会いしたときに私は「あなたは私に何を教えてくれるの?」って言ったんです。
──上から目線で(笑)。
はい。その瞬間、その場がシーンってなって(笑)。
──でも大した度胸だと思う。
違うんですよ。ホントに自分のことをわかってなかっただけで。そこで追い返されると思ったら、「大丈夫。一緒に音楽をやっていこう」って言っていただいて。この人なら信じられると思ったんです。西尾さんには、今になって「なんだこいつは!?って思ったよ」って言われるんですけど(笑)。ホントにヒドかったんです。人との対話が苦手で。
──普段は心を閉ざしていたけど、自分の曲を作って、それを歌いたいという情熱がレオさんをアグレッシブに突き動かしていたんでしょうね。
そうだと思います。とにかく動きたかった。中学1年のときにこのままずっと制服を着て、教科書を広げる日々が何年も続くかと思ったら耐えられなくて。もっとドキドキすることないかな?と思ったら、やっぱり自分には音楽しかなかったし。
1stアルバム「LEO」/ 2012年10月24日発売 / ビクターエンタテインメント
LIVE INFORMATION
家入レオ 1st ワンマンツアー“LEO”
2013年1月17日(木)
福岡県 福岡DRUM Be-1
2013年1月19日(土)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2013年1月20日(日)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2013年1月25日(金)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
家入レオ 1st ワンマンツアー“LEO” 追加公演
2013年3月9日(土)
大阪府 大阪BIG CAT
2013年3月17日(日)
東京都 赤坂BLITZ
家入レオ(いえいりれお)
1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼少時代にピアノを習い始め、小学校時代は合唱部に所属するなど幼い頃から音楽に親しむ。13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。圧倒的な存在感を放つ透明感あふれる歌声、強い意志を感じさせる詞世界が魅力。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年5月に2ndシングル「Shine」、9月に3rdシングル「Bless You」をリリースする。同年10月に1stアルバム「LEO」を発表。