ナタリー PowerPush - 細野晴臣

「歌うのが好きになってきた」ソロ活動40年を振り返る

クレイジーケンバンドってライバルかな?

──本作は参加アーティストも豪華で、コーラスには吉田美奈子さんやアン・サリーさんたちのほか、Salyuさんや岸田繁(くるり)さんが参加しています。

若い人たちが入ってくれるとうれしいですね。ライブだと最近は青葉市子さんがよく来てくれて一緒にやってます。なんかね、青葉さんは一緒にやると合うんだよ。不思議なことに。

──ちなみに、青葉さんのほかに細野さんが注目している若手のアーティストはいますか?

わかんないんだよね。誰かいますか? そういうのはそっちに聞いたほうがいいでしょ?

──もし誰かいればぜひ教えてほしいなと思って。

うーん、久保田麻琴が最近プロデュースしている宮古島のBlack Waxってバンドには興味がありますね。あとはわかんないや……あ、そうだ、クレイジーケンバンドってライバルかな?

一同 (笑)。

レコード会社のスタッフ 「Heavenly Music」の発売日に、クレイジーケンバンドさんが「FLYING SAUCER」というアルバムを発売したんですよ。

彼、ちょっと横須賀っぽいんですよね。テレビでG.I.の格好しているのを見て、「これ、僕もやりたかったなあ」って思った(笑)。テレビでしか知らないんですけど。

前より気楽になっている

──新譜を出したばかりでこんな話もなんですが、そろそろ細野さんのオリジナル曲を聴きたいんですけど……。今オリジナルを作るとしたら、今作までのバンドフォーマットを踏襲する形になりそうですか?

うーん、僕はいつも予定とか計画が全然ないんですよね。例えば何かアイデアがあったとしてもできないことがあるし、そのときの環境とか状況で変わってきちゃうんで。さっき言った通り、「HOSONO HOUSE」を今やるとしたらどうなるんだろう……とか。これはあくまでアイデアですけど、ひょっとするとそれが実現するかもしれない。

──それはすごく楽しみです。

2013年5月22日「Heavenly Music」

いつになるかもわからないし、違うものができてくるかもしれない。「Heavenly Music2」になるかもしれないし……わかんないんです。ただ、オリジナル曲のストックがあるので、それらをいつか完成させようとは思っています。

──「Heavenly Music」のシリーズ化はよいアイデアですね。

うん。カバーってやりたい曲いっぱいあるので、入りきらないんですよね。

──リスナーとしてももっと細野さんにいろいろな音楽を教えてほしいっていう気持ちもありますし。今回の作品は1950~1960年代の楽曲のカバーでしたけど、今後1970年代や80年代の曲のカバーをやっていくというのは?

それも考えているんです。ライブでやっているんですよ、初期のロックを。TRAFFICとか、あとはYMOのカバーもやってますからね。まあ、レコーディングはいつでもできるし、今は作品を作り続ける気力もあるんで。

──でも以前細野さんは、還暦辺りのタイミングで、「もう音源出さないかも」って言ってましたよね?

そんなふうに思っていた時期もあったんですよ。でもその頃、「隠居して何をやりたいか?」って聞かれて、「音楽やりたいって」答えたのは覚えている(笑)。だから今がそれで、実はもう全部辞めているのかも(笑)。まあ前よりも少し気楽になっているのは確かです。

細野晴臣
ニューアルバム「Heavenly Music」 / 2013年5月22日発売 / 3150円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64031
ニューアルバム「Heavenly Music」
収録曲
  1. Close to You
  2. Something Stupid
  3. Tip Toe Thru The Tulips with Me
  4. My Bank Account Is Gone
  5. Cow Cow Boogie
  6. All La Glory
  7. The Song Is Ended
  8. When I Paint My Masterpiece
  9. The House of Blue Lights
  10. ラムはお好き? part 2
  11. I Love How You Love Me
  12. Radio Activity
細野晴臣(ほそのはるおみ)

1947年生まれ、東京出身の男性アーティスト / プロデューサー。エイプリル・フールのベーシストとしてデビュー。1969年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とバレンタイン・ブルーを結成し、翌年バンド名をはっぴいえんどに改名する。はっぴいえんど解散後はソロ活動と並行し、林立夫、松任谷正隆らとキャラメル・ママを結成。荒井由実などさまざなアーティストのプロデュースを行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成。YMO「散開」後は、映画のサントラを手がけるほか、松田聖子や山下久美子へ楽曲を提供しヒットメイカーとしてもその名を知らしめる。2000年代に入ると、高橋幸宏とのユニットSKETCH SHOW、忌野清志郎、坂本冬美と結成したHIS、SKETCH SHOWに坂本龍一を迎え結成したHuman Audio Spongeなど、さまざまなユニットで音源を発表。還暦を迎える2007年にはHARRY HOSONO & THE WORLD SHYNESS名義で「FLYING SAUCER 1947」をリリースしてソロ活動を再開。さまざまなライブイベントに出演する一方で、2013年5月に往年のスタンダードナンバーをカバーした「Heavenly Music」を発売した。