KENJI03(BACK-ON)×IKE対談|ソロプロジェクトHi-yunk本格始動、友情のコラボ曲制作過程に迫る (2/2)

この曲でみんなはどんなストーリーを思い浮かべるんだろう

IKE 「Good Bye Forever」を改めて聴いたとき、時代とは逆行しているかもしれないけど、僕らの原点のミクスチャーの音だなって思った。

KENJI03 新しいものを追うというより、時代に流されずに残るものを作りたかったんだよね。だから歌割もただのユニゾンで終わらせるのではなく、僕の感情とIKEの感情が同時に走ってる感じを表現したくてミックスにもこだわりました。この曲は2Aがなくて1番のあと、すぐに落ちサビみたいなパートにいくっていうわりと珍しい展開です。2人ボーカルがいるのでもっと長い曲にしてもよかったし、そこでお互いがおいしいところをたっぷり出してもいいんだけど、「シンプルでキャッチーな曲にしたい」と思って2Aはなしにしました。それは勇気がいる決断ではありました。

IKE 斬新だよ。

KENJI03 IKEも理解してくれたので感謝してます。

IKE 尺を短くすると、歌詞を削ってシンプルにせざるを得ない分、書き方が難しくなるんだけど、でも躊躇なくそうしたよね。本当に大事なメッセージだけを伝えている、何度リピートしてもらっても自然に聴ける曲になった気がします。

左からIKE、KENJI03。

左からIKE、KENJI03。

KENJI03 僕の友人のこともありましたが、この2人で“せーの”で「Good Bye Forever 悲しみはきっと通り過ぎていく」と歌えば完結しちゃうんですよね。手紙に1行「愛してる」って書いてあるほうが伝わるのと通じるけど、短くシンプルなほうが僕たちらしいなと思いました。

IKE リスナーはきっとこの1文で感じてくれるものがあるだろうと。誰しも人生の中でどうしても何かと決別しなきゃいけない瞬間ってあると思うんです。断ち切るときはしんどいんだけど、永遠にさよならするぐらいの気持ちになれたときにこの曲が役に立ってくれたらいいなと思います。この曲がリリースされて世の中に響いたら「みんなはどんなストーリーを思い浮かべるんだろう?」って思うよね。僕たちのバックグラウンドを知っている人がどう思うのか、逆に知らない人が聴いたら何を思うのか。この曲が生んでいく化学反応が楽しみです。あと、実は3年前から、友達であるKENJIと一緒に曲を作ってみることで、どんな形であれいつか一緒にライブができる未来をもたらしてくれるんじゃないかなと思ってたんだよね。

KENJI03 そうだったんだ。でも僕にも「初めてIKEと歌で絡むことで何かに発展していくだろうな」と思ったし、「これからもよろしくね」という気持ちもありました。

あのときの衝動に感謝してる

IKE 当時の僕は歌の牙が取れていた時期だったので、この曲は歌のことを思い出させてくれました。全然歌ってなかったから、すごく弱気だった。KENJIに弱めのIKEを見せちゃったと思うんだよね。そんな状態で歌った歌をKENJIが手際よく編集してくれたのがうれしかった。

KENJI03 IKEは気心が知れた仲間だから、あまり気を張って「ピッチがどう」とかっていうことよりも、「とりあえず楽しくやろうよ」っていう気持ちでデモ制作をやって、その中でポッとこの曲が生まれた感覚があったんだよね。

──「悲しみはきっと通り過ぎていく」というフレーズは最初からあったそうですが、喪失感を歌う曲は「悲しみを超えていく」というような能動的な歌詞が多い印象があります。受動的な表現になったことについてどんな思いがありますか?

KENJI03 そのフレーズはIKEから出た言葉なんですが、「面白い言い回しをするな」と思いました。

IKE 歌うときは「悲しみは“きっとおり”すぎていく」って言葉を縮めてもいるしね。僕は感覚で歌ってきているところもあるから、この歌詞できっと伝わるっていう自信を持ってゴリ押ししたんだよね。正確で丁寧な言葉はほかにもあるんだろうけど、「多少端折っても伝わればそれでいい。だってそう感じるんだから」と思ってる。“耳の正義”というものを大事にしていて、その言葉や音がフックになっているんだったら正解だと思ってます。そもそも「Good Bye Forever」って文法としてもおかしいんだけどね(笑)。

IKE

IKE

KENJI03 だからもう、最初の時点でできあがっていた曲だよね。

IKE そうだよね。最初に衝動で出てきた歌詞がなかったら、こうやって一緒に曲をリリースすることにもつながってなかったかもしれない。だから、あのときの衝動に感謝してる。

自分が音楽人として健康でいるためのソロ活動

──Hi-yunkとしては「Goog Bye Forever」を配信したあと、3月下旬、4月下旬とシングルをリリースして、5月下旬にアルバムを発表するそうですが、今後の作品はどんなものになっているんでしょう?

KENJI03 BACK-ONはもう20年ぐらい活動していて、自分たちのサウンドが確立されています。メンバーが抜けて2人になったタイミングでいろいろと新しいことにチャレンジして作ったアルバムもいい作品だと思っているんですが、去年ぐらいぐらいから「BACK-ONが進むべきレールと自分自身が新しく進むレールは別にしたほうがいい」と思ったんです。ソロアルバムはその気持ちが出た作品になっていると思います。

IKE ソロは意識的にBACK-ONとは分けてるの?

KENJI03 去年ぐらいから自分の中できっぱりセパレートしようと思った。BACK-ONは20年もやってるので、聴いてくれる人のイメージみたいなものがちゃんとあると思うんです。でも僕はメンバーが脱退して今の2人体制になったときに「改革したい」と思って、自分が持っているものをてんこ盛りにして作品を作ったんですが、結果出た答えは「BACK-ONは元のレールを走ったほうが健全だな」と。そのうえで自分が音楽人として健康でいるために、ほかのキャラクターをどこかで消化する必要があると思った。それが楽曲提供やソロという新しい道ですね。

IKE めっちゃわかる。BACK-ONは届ける相手の中にもう共通の顔があるんだよね。ソロでは届ける先をずらしてみたんだ?

KENJI03 そう。飲食店に例えると、最初はファミレスになりたかったんだよね。だけど、BACK-ONが和食屋だとしたら、そこにナポリタンとか麻婆豆腐を出したらわけわかんなくなっちゃう。だから、BACK-ONはちゃんと和食で走り続けようと思った。でも、やっぱりいろいろなものは作りたいから、住み分けするのが自分にとって一番健康なやり方だと思うんだよね。

KENJI03

KENJI03

──IKEさんは昨年12月に初めてのセルフプロデュース曲のクリスマスソング「MY DEAREST」をリリースされましたよね。

KENJI03 「MY DEAREST」はいい曲だよね。

IKE ありがとうございます。

KENJI03 なんで季節モノの曲を歌ったの?

IKE 単純に支えてくれたファンの人たちへのプレゼントとして作りたかったんだよね。僕にはクリスマスプレゼントを全員に配る財力はないけど、聴いてもらうプレゼントは作れる。KENJIとの「Good Bye Forever」で制作に少し慣れさせてもらえたんだよね。「2023年最後に僕がファンのためにできることってなんだろう?」と思って、クリスマスが近いから曲をプレゼントしてお返しをしようっていう気持ちだけで作ったんだ。

KENJI03 IKE1人の名義で最初の作品が季節モノっていうのは意表を突かれたところがあったので理由が知りたかったんだよね。でも、今の話で腑に落ちた。

IKE 「Good Bye Forever」ですごくいいリハビリをさせてもらった感覚があるので、本当ありがたいと思ってる。いつかKENJIとも一緒にステージに立ちたいな。

KENJI03 俺もいつかIKEと同じステージに立てる日を楽しみにしてる。IKEのことは本当にボーカリストとして尊敬してるし、単純に声が好きだから、このまま自分の道を開拓していってほしいなと思ってます。

左からIKE、KENJI03。

左からIKE、KENJI03。

BACK-ON ライブ情報

BACK-ON「"CHEMY×STORY" Release Party」

  • 2024年2月23日(金・祝)大阪府 Yogibo HOLY MOUNTAIN
  • 2024年3月16日(土)東京都 UNIT

プロフィール

Hi-yunk(ハイユンク)

BACK-ONのKENJI03(Vo, G)によるソロプロジェクト。バンドの活動と並行してEXILE、東方神起、倖田來未、BiSHなどのアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行っている。2024年2月にHi-yunk名義では初の作品となる、IKEをフィーチャリングゲストに迎えたシングル「Good Bye Forever feat. IKE」を配信リリース。5月には過去に提供した楽曲のセルフカバーや、親交のあるアーティストとのコラボ曲を収録したアルバムのリリースを予定している。

IKE(イケ)

愛知県出身のボーカリスト。2022年より持病の潰瘍性大腸炎の治療に専念するため音楽活動を休止。昨年はBAK、SEAMOの楽曲にフィーチャリングゲストとして参加したのち、12月にセルフプロデュースによるオリジナル楽曲「MY DEAREST」をリリースした。2024年2月リリースのHi-yunkのシングル「Good Bye Forever feat. IKE」には作詞とボーカルで参加している。