KENJI03(BACK-ON)×IKE対談|ソロプロジェクトHi-yunk本格始動、友情のコラボ曲制作過程に迫る

KENJI03(BACK-ON)がソロ名義のHi-yunkによる初の配信シングル「Good Bye Forever feat. IKE」をリリースした。

Hi-yunk名義でこれまでEXILE、東方神起、倖田來未、BiSHといったアーティストに楽曲を提供してきたKENJI03。彼は自身のプロデューサーとしての活躍の場を広げるべくソロ名義でのリリースを決め、その第1弾となる楽曲にかねてから親交の深いボーカリスト・IKEを招いた。2人は別れや旅立ちを描いた「Good Bye Forever」の歌詞を共作。音源ではそれぞれの魅力を存分に発揮したハーモニーも響かせている。

メジャーデビュー当時に初対面を果たし、それ以降徐々に親交を深め、現在では「ライバルでもあり、リスペクトもする」親友となった2人。互いがこれまで歩んできた道のりや、それぞれが持つ人生観も反映された今回の楽曲はどのようにして生まれたのか。音楽ナタリーではKENJI03とIKEの対談をセッティングし、コラボ曲誕生までのストーリーを語り合ってもらった。

取材・文 / 小松香里撮影 / 塚原孝顕

ストーリーがある楽曲をストーリーのある人と

──まず、KENJI03さんがソロプロジェクトを始めた理由を教えてください。

KENJI03 けっこう前からソロをやりたい気持ちはあったんですが、なかなかタイミングが合わなかったんです。いろいろなアーティストに楽曲提供したり、プロデュース業をやったりする中で、去年の年末ぐらいに「提供曲のセルフカバーや新曲を作るプロジェクトをやったら面白いんじゃないか」というプランが生まれ、話が進んでいきました。第1弾はストーリーがある楽曲を、ストーリーのある人と一緒にやりたいと思い、IKEにお願いしました。

IKE ありがとうございます。KENJIがいろんな人に楽曲提供をしてるのは知っていて、アーティストと兼任してプロデュースもしっかりやっているんだろうなという匂いは感じてたんだよね。だからいいタイミングで絡めたらと思ってました。それで、3年くらい前にKENJIと飲むきっかけがあって、「自分には作曲能力がないから何か一緒にやらないか?」って相談したことがあって。

KENJI03 僕は子供が生まれてからルーティンができあがった生活を送っているんですが、IKEはアクティブな人間だし、「たまには現実逃避しろよ」っていう感じで連絡をくれるんです。それで、年に数回僕を外に連れ出してくれる。「Good Bye Forever」のデモ自体はその飲みの流れで3年前にはあったんですよ。

KENJI03

KENJI03

IKE そう。飲んだあとにスタジオにお邪魔して、今感じていることを一緒に歌ったり、メロディを出し合ってデモを作ったんだよね。そこで4~50%できあがったよね。そこからお互いの活動のペースもあって、少し時間が空いて、1年半くらい前にKENJIが「調子どう?」って連絡をくれて、ソロプロジェクトのことを話してくれた。そこからゆったり完成に向けて動き出しました。

KENJI03 この曲のメロディはお互いゼロベースから感覚的に歌い上げて作ったこともあってすごく印象に残ってたし、単純にいいメロディだったので「形にしたい」という思いが強かったんです。最初にIKEとデモを録ったときから、「Good Bye Forever 悲しみはきっと通り過ぎていく」という歌詞はありました。でも、なんのことを歌っているかということも特に深く考えなかった。デモを作った頃、僕の中学校時代の友人ががんで亡くなっちゃったんです。そのことが頭にあったから「Good Bye Forever」っていうワードが出てきたんじゃないかと思うんですよね。ネガティブな言葉ですが、僕らだったら前向きな楽曲にできるんじゃないかと思って、広げていきました。

半分嫉妬ですよね

IKE 僕らはデビュー時期がほぼ一緒なんです。厳密にはBACK-ONのほうが先輩なんですけど。僕らが「メジャーデビューするぞ」という欲望を抱えている時期に渋谷のRUIDO K2でBACK-ONと対バンしたんですよ。同じ歳だし、バンドのジャンルとしてはミクスチャーで同じシーンをこれから進もうとしているということもあって、お互い敵意むき出しでしたね。

KENJI03 一応握手はしたけど、あれは本当の握手じゃなかった(笑)。

IKE 名古屋と東京で土地は違えど、関わってる人たちも近いところがあったしね。僕の好きなPay money To my PainにいたJINくんが当時BACK-ONをプロデュースしていて、「すごいな」って思いつつ、「負けねえぞ」っていう気持ちがありました。半分嫉妬ですよね(笑)。その後もう1回対バンをしたんだよね。

IKE

IKE

KENJI03 2011年の「Hello World」ツアーのときに、対バンに誘ったら出てくれたんです。彼らのメジャーデビュー曲がめちゃくちゃカッコよくて、どうしても対バンがしたかった。そうしたら、mito LIGHT HOUSEのライブに出てくれました。そのときにわかり合える瞬間があったんだよね。

IKE そう。やっとKENJIの目が見れた(笑)。そこから酒の席でボーカリスト同士、語り合う機会が何度かあったよね。

KENJI03 会わない期間もあるんだけど、IKEは要所要所で連絡をくれるから、「気にかけてくれてんのかな」と思ってました。でも、会ってもあまり音楽の話はしないんです。僕は鎧を脱ぎ捨てて気心知れた仲間と腹を割って飲むのが好きなんですが、彼からは同じ匂いがした。それでハモったんじゃないかな。

IKE そうだね。酒をちびちびやりながら、プライベートの話題を中心に話し合う。そういう関係だからこそ楽曲制作でも自由に向き合えたんだと思う。

ライバルでもあるしリスペクトもしている

KENJI03 そういう仲だからIKEが休養するって聞いてすごく心配しました。連絡してお茶したんですよね。「これからどうするの?」っていう話をして。僕はボーカリストとしてのIKEは唯一無二だと思っていて、すごく尊敬しているので、「何かできることがあれば」と思ってました。それで、ソロプロジェクトをやると決まって真っ先に声をかけさせてもらいました。

IKE 時が経つにつれて自分が向かいたい方向が少しずつ固まっていって。でも、自分で作曲はできないし……と思っていたときにKENJIが手を差し伸べてくれた。何も尽力するものがないとき、僕をもう1回音楽に溶かしてくれたというか。音楽って夢の塊じゃないですか。僕は自分が歌う曲をリピートしているとき、超集中するんです。すごく細かいところまで聴くし、練習する。「Good Bye Forever」の制作のときは「こういうことをやっていたな」という懐かしさを感じたし、自分とKENJIのボーカルを聴いてる時間が幸せでした。だからこそ「違う」と思ったことははっきり言わせてもらったし。

左からIKE、KENJI03。

左からIKE、KENJI03。

KENJI03 ずっと前から「一緒にやりたい」という気持ちはあったし、ライバルでもあるしリスペクトもしているから、お互い納得するまでやりたかったんだよね。レコーディングで初めてIKEのすぐ横でアカペラを聴いたときに「やっぱ本物だな」と。「一緒にやれてよかったな」って思いました。

IKE KENJIは僕より明らかにハイトーンが出るんですよ。そこは昔から僕が背伸びしたって敵わない部分で。だから僕はその1個下のキーでどう輝くかを考えました。KENJIには「上ハモ、いい感じのやつ頼む」ってお願いして、お互いができるものを足していったよね。

KENJI03 うん。俺はどこまでいってもクリーンな声だから、IKEの瞬発力のあるシャウト系の歌は憧れで。俺がストラトだったらIKEはレスポールというか。お互いの声はわかっているから、それがいい具合に混ざればなと。

IKE 確かに、俺はどうがんばったってレスポール側だろうね(笑)。

KENJI03 レスポールはストラトになれないし、ストラトはレスポールになれない。自分とは違う声を目指したこともあったけど、結局背伸びになっちゃう。だったら、自分が伸ばせるものをただ伸ばせばいいと思うんだよね。

IKE 俺もそう思う。