ナタリー PowerPush - Hi-STANDARD
東北AIR JAM成功の軌跡とバンドの未来
今年はAIR JAMをやらない代わりにいろんな人が活動してる
──そして構想から約1年半を要して、昨年9月に東北でのAIR JAMが実現しました。まず驚いたのは、初の2日間開催。これはAIR JAM史上初でしたし、しかもあれだけの大きい会場だし、「2日間埋まるのかな?」って心配してました。だけど最終的には、2日とも本当に大勢のお客さんが集まった。客席の写真を観たときは、正直ジーンときましたよ。
難波 横浜公演含めて出演してくれた方たち、オーディエンスも含めてみんな一丸となってくれたのは、本当にうれしかったですね。ずっと「届け、届け!」と言い続けてきたけど、その「届け」というワードはツネちゃんから出てきたもので。ただ東北にAIR JAMを持っていってハイスタのライブを見せるために「届ける」だけじゃなくて、もっと気持ちというか……とにかくそばに行きたかったんですよね、東北のみんなのそばに。2年近くもかかっちゃってごめんねって思ったけど。
横山 そりゃかかるよ。考えてみてほしいんだけど、2011年3月11日に震災があって、バンドでミーティングしたのはその1カ月後ぐらいかな。だから、震災の1カ月後には東北でAIR JAMをやろうっていうアイデアが出たんですよ。でも実際にできたのはその1年半後。候補地に挙がったところが実際には遺体安置所で使われていたり、いい更地があっても現地には受け入れ体制がなかったり。
難波 会場までの交通手段もままならなくて。
恒岡 そういう問題が、実は大きかったですね。
──でも視点を変えたら、1年半くらい時間が空いたことはよかったのかなと思える部分もあって。最近特に、時間が経ったことで震災で我々が体験したこと、感じたことが風化してしまうんじゃないか、記憶が薄れるんじゃないかと思うんです。
横山 本当にそうですね。僕も最近よく考えるんですけど、震災直後にすぐ何かアクションを起こした人、数カ月経ってから動き始めた人、1年2年経ってから動き始める人、いろいろあっていいと思うんです。その人のペースで、その人の考えに従ってやればいいことであって。気持ちがあれば絶対にうまくハマると思うんですよね。
難波 そうしたら長く続けられますし。みんなで手分けしてやれる。先にやる人、あとでやる人、そして次に来る人をサポートして。
横山 途中でガス欠しちゃう人もいれば、考えが変わって「あっ、俺は支援したくない」って思う人だっているかもしれない。それはそれで誰も責められないと思う。ハイスタの場合はたまたま、震災から1年半経って東北にAIR JAMを持っていくことができた。これがハイスタには合ってたんでしょうし、実際よかったんでしょうね。
難波 復興の道のりは長いですから。これからもまだまだ続いていくし。今年はAIR JAMはやらないことにしてたんですけど、その代わりに今年はいろんな人たちがそれぞれの活動をしてくれてる。みんなで……“代わりばんこ”って言ったら変だけど、東北に意識を向けて、お祭りを始めたりいろいろやっていくといいんじゃないかと思いますね。
僕たちが行くところにはすごくいいエネルギーがある
──もしかしたらAIR JAMに勇気をもらって、自分たちも何かやろうと思って動く人もいるかもしれないですね。
横山 実際いっぱいいると思いますよ。僕、それが“つながる”ってことだと思うんですよね。被災地でもね、今みんながんばってイベントを作ったりとか、お祭りをしてますし。やっぱり被災地の方たちはがんばってますもん、みんな。
恒岡 僕なんて現地に行くと逆に元気をもらって、がんばろうって気持ちになって帰ってきますから。
横山 でも、そうなんだよね。なんだろう……被災地の人たちはあれだけ不条理で、あれだけ怖い目に遭って、復興という形ですごく人から優しくしてもらったと思うんです。そうすると彼ら自身も優しくなるんですよね。現地に行って接すると、みんな気持ちが優しい人ばかりで、逆に僕も元気をもらうんです。「来てくれてありがとう。よく来てくれた。また機会あったらよろしくお願いします」って言われて……僕たちが行くところにはすごくいいエネルギーがあると思いますよ。だからね、何回も行きたくなっちゃう。
──まさに横山さんと難波さんは8月中旬、Ken BandとNAMBA69で東北ツアー「Nippon Its Tour」を行いましたし。
横山 そうなんですよ。Ken BandもNAMBA69も単独で何度も行ってるけど、ちょっと今回は……ちょうどお盆も近いこともあったし、AIR JAMができない代わりとまでは言わないけど、今年はこれでっていうつもりで回りました。ツネちゃんも東北でカホンのワークショップをやってるしね。
恒岡 僕も東北ライブハウス大作戦の一環で石巻に行ったことあるんですが、そこでは演奏しなかったんです。いずれライブで行くだろうけど、また違った形で音楽を通して地元の人たちと触れ合うことはできないか、一緒に楽しいことはできないかと思ったときに、カホンを使ったワークショップをやろうと思ったんです。
横山 いろんな人が参加して、カホンを叩いたりするってこと?
恒岡 そう。6月に1回行ったんですけど、年内にもう1回やるつもりです。一度に20人くらい参加するんですけど、やっぱりみんなで一緒に演奏するのは楽しいので。
横山 参加した20人の中から「これハマるわー」って人が出てきてくれたら、もうそれだけでうれしいことだもんね。そこからさらに一流のプレイヤーが生まれたら、それこそ一大事だし。
恒岡 小学校4、5年生ぐらいの、普段楽器をやったことのない男の子がいたんですけど、ものすごく上手で、もしかしたら眠ってた才能が開花したみたいな(笑)。打楽器は入り口がシンプルなので素直にみんなで楽しめます。
横山 この経験を通じて、カホンを叩くことが生きがいになるかもしれないしね。
恒岡 そうなんですよね。だからまず一度、体感してもらえたらいいなと思ってます。
- ライブDVD「Live at TOHOKU AIR JAM 2012」/ 2013年9月11日発売 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZBA-8
- [DVD] 3915円 / PZBA-8
-
収録曲
DAY 1
- TURNING BACK
- STANDING STILL
- SUMMER OF LOVE
- DEAR MY FRIEND
- SUNNY DAY
- CALIFORNIA DREAMIN'
- CLOSE TO ME
- TEENAGERS ARE ALL ASSHOLES
- FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL
- ENDLESS TRIP
- SATURDAY NIGHT
- BRAND NEW SUNSET
- STAY GOLD
- MOSH UNDER THE RAINBOW
DAY 2
- GROWING UP
- STAY GOLD
- WHO'LL BE THE NEXT
- MY FIRST KISS
- STOP THE TIME
- MY HEART FEELS SO FREE
- NEW LIFE
- MAKING THE ROAD BLUES
- MAXIMUM OVERDRIVE
- THE SOUND OF SECRET MINDS
- STARRY NIGHT
- CAN'T HELP FALLING IN LOVE
- BRAND NEW SUNSET
- MOSH UNDER THE RAINBOW
Hi-STANDARD(はいすたんだーど)
難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし、知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期から海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。本作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。
約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを敢行した。2012年2月にはこの日のライブを収めたライブDVD「Live at AIR JAM 2011」を発売。同年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。そして2013年9月、「AIR JAM 2012」でのハイスタのライブを完全収録したライブDVD「Live at TOHOKU AIR JAM 2012」をリリース。