映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」 PR

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」 梅田航監督インタビュー|「人生ってすげえ」身近な“後輩”が撮影したハイスタのリアル

Hi-STANDARDのドキュメンタリー映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」が11月10日に全国公開される。

過去の映像とメンバー3人のインタビューで構成された本作の監督を務めたのは、WRENCHの元マネージャーとしても知られるカメラマンの梅田航。映画の中には、かつてハイスタのライブ写真を撮影し、メンバーと交流のあった彼だからこそ映し出すことができた表情や言葉などが記録されている。

バンド結成から活動休止、紆余曲折を経ての活動再開、そして今現在のメンバー3人の思いまで、“ハイスタのストーリー”を凝縮した「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」はどのような過程を経て完成したのか。梅田監督にその舞台裏を聞いた。

取材・文 / 阿刀“DA”大志 インタビュー撮影 / 佐藤早苗(ライトサム)

「この人たちは一体何なんだろう」

──梅田さんはどうやってHi-STANDARDと出会ったのでしょうか?

梅田航

1996、7年ぐらいに、当時ハイスタのローディをやっていた高校の同級生がいたんですけど、当時自分はフリーランスでライブ写真を撮ってたので、その同級生にハイスタのライブを撮らせてもらえるようにお願いしたら快くOKしてくれて。それから何回か撮らせてもらいました。

──出会った当時、梅田さんにとってハイスタはどういう存在でしたか?

その頃、僕は海外のバンドばかり聴いてたんですけど、「DOLL」っていうパンク雑誌を見ると、ハイスタが海外ツアーをやっている情報が載ってたりして、日本だけじゃなくて世界で活躍してるバンドなんだという認識はありました。しかも歌詞は英語だし、初めて聴いたときは海外のバンドだと思ったぐらいで。だから、友達がローディをやってるバンドという認識がありつつも、自分がその頃に知ってたような日本のバンドとは全然違うし、頭ひとつ抜けてたイメージはありましたね。

──当時、多くのパンクリスナーが似たような認識を持っていたと思います。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

でも、写真を撮らせてもらってる中でメンバーと話してみると、3人共普通の“先輩”って感じなんですよ。それなのにライブがものすごいっていうギャップが面白くて、「この人たちはいったい何なんだろう」って思ってましたね。

──それだけすごいバンドだと近寄り難い雰囲気がありそうだけど。

そうそう、ロックスターみたいな感じでね。だけど、ハイスタの3人は全然そうじゃなくて。

いきなり「映画作って」

──当時、「近所の兄ちゃん」と例えられることも多かったですよね。

そうですね。そうやってライブを撮らせてもらうのと並行して、僕はWRENCHのマネージャーをやることになって。彼らはハイスタとけっこう近いところにいるバンドだったので、「AIR JAM」にも出してもらったりしました。でも、そうこうしているうちにハイスタが活動休止してしまって。同じくらいの時期に自分もWRENCHのマネージャーを辞めてカメラマンに戻って、ハイスタのメンバーとも会うことはなくなったんですけど、難波さんがソロ活動を始めることになった2010年頃、「取材でカメラマンが必要だから撮りに来て」って難波さんのスタッフから頼まれて、そこからまた難波さんとのつながりができました。

──ずいぶん時間が空いたんですね。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

はい。そこからまた時間が空いて、ハイスタが活動を再開した2014年頃、今度は「NAMBA69のドキュメンタリー用の動画を撮りたいからツアーに同行してほしい」とお願いされるわけです。でも、僕はライブを撮影したことはあるけど、バンドに密着して撮影したことなんてなかったから、自分は撮るだけ撮って、編集は別の人にお願いしたんです。それがきっかけで難波さんの中で「梅田は動画が撮れる」って認識されたみたいで(笑)。

──面白いものですね(笑)。

そして、今度は2015年の後半にハイスタのライブが3本あったんですけど、また「動画撮ってよ」とハイスタのスタッフから軽く頼まれて、こっちも「行く行くー」っていう軽い気持ちで撮影しに行ったら、そのとき撮った映像をメンバーが気に入ってくれたみたいで。ちょうどその頃からハイスタが新曲を作り始めることになったので、「今、ハイスタが曲作りしてるからスタジオまで撮りに来て」と言われ、その映像の落としどころがわからないまま、とりあえず毎回撮りに行くっていう(笑)。で、撮り始めてしばらくしてから、メンバーとスタッフから「これ、ゆくゆくは映画にしようと思ってるから監督やって」と突然言われて、「ええーっ!?」っていう。

──とんでもない展開に。

本当ですよ(笑)。それまで、映像作品なんてスペースシャワーTVの30分番組を1本作っただけなのにいきなり「映画作って」ですから。なので、最初はすごく悩みました。引き受けたいのはもちろんなんだけど、不安しかなくて。でも考えていくうちに、自分みたいな経験のないヤツに映画を撮らせるなんてこんなにパンクなことはないなと思って、周りに手伝ってくれる人はいっぱいいるし、とにかくやってみようと。

──なるほど。

僕は今でも、映画監督としてこの作品を撮ったとは思ってないんですよ。自分のことはカメラマンだと思ってるし、僕はその場で起きてることを記録するのが得意なだけで。だからこそ最初に「監督やれ」って言われたときも、自分でできないことは人に頼めばいいし、そうしたら1人でやるよりもすげえものができるんじゃないかって開き直れたんです。

──そうでしたか。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

もちろん、監督1人で全部やるっていうのはカッコいいし、できるなら自分もそうしたかったけど、残念ながらそんなことができる人間じゃないので。

──そこまで開き直れたのは大きいですね。

ハイスタも似ているところがあって、3人それぞれ優れているところがあるから、足りない部分をお互いに補い合ってここまで来てるんですよね。だから、自分も周りにいるボンクラだけどその筋では優秀な仲間を集めてがんばりました(笑)。撮影したのも僕だけではないし、昔のアーカイブも大先輩が撮り溜めてきたもので、そうやって総力戦でぶち当たった結果、いい形にまとまりました。

──図らずもDIY的な作品になったと。

スタッフとも「DIYでやるしかないからさ」っていう話をしてたんですよ。メンバーインタビューのときなんて、本当なら録音のプロを入れるべき状況だったんですけど、メンバーが知らない人を入れてしまったらあんなに赤裸々なインタビューなんて撮れっこないんですよ。でも、自分が知る中でそういうことができる人がいなかったから、仕方なく自分たちでやったという(笑)。結局、「こんな感じでいいかな?」ってノリでやったらノイズが乗りまくってて、マスタリングのときにすごく苦労しましたけど。

──そういう話を聞くとまた味わい深いですね。

はい。「ああ、これがDIYなんだな」って。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」
2018年11月10日 全国公開
映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」
Hi-STANDARD(ハイスタンダード)
ハイスタンダート
恒岡章(Dr)、横山健(G, Vo)、難波章浩(Vo, B)らなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期には海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。同作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。
約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」を開催。同フェスでハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを実施した。2012年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。2016年10月に事前告知なしで突如16年半ぶりの新作「ANOTHER STARTING LINE」をリリース。同年12月にカバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」を発表し、福岡 ヤフオク!ドームにて「AIR JAM 2016」を行った。2017年10月には18年ぶりとなるアルバム「THE GIFT」を発表。2018年9月にZOZOマリンスタジアムで「AIR JAM 2018」を開催した。
梅田航(ウメダワタル)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業後にWRENCHのマネージャーを務め、その後カメラマンに。2016年にスペースシャワーTVで放送されたHi-STANDARDの特別番組のディレクターを務め、映像作家としても活動し始める。2018年11月公開の「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」が映画監督デビュー作となる。