Dizzy Sunfistがアルバム「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」を10月27日にリリースした。
10月15日をもってオリジナルメンバーであるいやま(Vo, B)が卒業したディジー。現在はサポートベーシストを迎えて活動しているディジーが、3年9カ月ぶりに発表したアルバムが「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」だ。本作にはリード曲の「So Beautiful」や、あやぺた(Vo, G)が自身の愛娘に向けて書いたラブソング「Little More」などの計12曲が収録されている。
これまで音楽ナタリーではあやぺたとSUGA(dustbox)やHATANO (HAWAIIAN6)との対談(参照:Dizzy Sunfist「Dizzy Beats」発売記念 あやぺた(Dizzy Sunfist) × SUGA(dustbox)対談 / Dizzy Sunfist「DREAMS NEVER END」特集|あやぺた(Dizzy Sunfist)× HATANO(HAWAIIAN6))を企画してきたが、今回はあやぺた、moAi(Dr, Cho)と、難波章浩(Hi-STANDARD、NAMBA69)での対談をリモートで実施。ディジーにとって憧れのアーティストだという難波に「DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-」の音源を聴いてもらい、3人に収録曲やお互いのバンドの印象について語り合ってもらった。
取材・文 / 阿刀“DA”大志
Dizzy SunfistとNAMBA69は大事なタイミングで接点がある
──あやぺた(Vo, G)さんはこれまでにSUGA(dustbox)さん、HATANO(HAWAIIAN6)さんと対談をされています。今回は難波章浩(Hi-STANDARD、NAMBA69)さんを迎えて3人で話していただくことになりました。こうして難波さんを前にした心境はいかがですか?
あやぺた(Dizzy Sunfist / Vo, G) やばたにえんっすよ、マジで(笑)。
moAi(Dizzy Sunfist / Dr, Cho) 「難波さんだ……!」ってなってます(笑)。
難波章浩(Hi-STANDARD、NAMBA69 / Vo, B) なんでよ、普通に会ってるじゃない。
あやぺた 会ってますけど、打ち上げの場でもない対談という形なので緊張して……こうして話ができる機会をいただけて光栄です。
──2組の出会いはいつなんですか?
あやぺた 5、6年ぐらい前にFANJ twiceという大阪のライブハウスでやったHEY-SMITHのイベントで対バンさせてもらったのが最初です。緊張しすぎて「何からしゃべったらいいんやろう……?」と思ったのをめちゃくちゃ覚えてます(笑)。
moAi その頃、僕はディジーに加入したばかりでまだほかのバンドの方に顔も名前も覚えてもらえてないような状況だったので、難波さんはもちろん、HEY-SMITHのメンバーを含めて先輩だらけで緊張しまくったことしか覚えてないです。
難波 ライブのことはあまり覚えてないんだけど、2人に会ったのは覚えてるよ。2人とも「うぅぅー!」って緊張してた。
あやぺた・moAi あはは!
難波 でも、俺も緊張していたからね。ディジーとNAMBA69は大事なタイミングで接点があって、ko-hey(NAMBA69 のギタリスト / コーラス。2016年に加入)が入って初めてのライブはディジーに誘われたライブだったし、ディジーにとってここが勝負なんだろうなというときに競演することも多くて、俺らの中でディジーは同期みたいな感覚なのよ。
moAi えええー(笑)。
難波 もちろん、Hi-STANDARDとしての俺は先輩になるかもしれないけど、NAMBA69として初めて対バンしたときは「うわ、今キテるディジーじゃん!」と思った。ディジーは常に俺らよりも先を行っていて、作品はどんどん発表するしライブの動員も俺たちより早く増えていっていたから、バンド内で「俺たち、置いていかれてるんじゃない?」と話したこともあったのよ。正直、悔しいなって勝手にライバル視してたところはある。
──ディジーにとっては大先輩だけど、難波さんとしては追いかけるべきライバルだったという。
難波 そう。もちろんNAMBA69と比べたらディジーのほうが活動歴は長いんだけど、なんか同期のように感じられるんだよね。
──ディジーにとってNAMBA69はどういう存在なんですか?
あやぺた NAMBA69はライブも音源も常に「カッコいい」を更新してるイメージしかないので、うちらも追いかけてます。音源を聴くたびに、ライブを観るたびに刺激をもらってます。
moAi 僕もそうですね。ライブもサウンドもエネルギーにあふれているし、バンドが常に更新されてるのをすごく感じるので、今難波さんからそんな言葉が聞けて、「ええー!?」ってなってます(笑)。とんでもねえっす!
難波 俺もディジーに対してそう思ってるよ。みんなすごく進化してるから。
あやぺた いやいや、NAMBA69は音源もライブも音がよすぎていちいちびっくりします。「どうやったらああいう音になるのかな?」といつも思ってます。
難波 そうだねえ、音は負けたくないねえ。
あやぺた いやあ、本当に毎回すごいです。
自分の子供に向けて書いたラブソング
──難波さんはディジーのニューアルバム「DIZZY LAND –To Infinity & Beyond-」を聴いてみて、いかがでしたか?
難波 めちゃめちゃよかった。一気にばーっと聴いちゃった。
──わかります。聴きやすいし、流れもいいですもんね。
難波 作品の資料に書いてあるように、「捨て曲なし」。今回はみんなめっちゃがんばったんだなというのがわかる。
あやぺた うれしい!
難波 「このタイミングですごいものを生み出してやる」という気合いをバンドからもチームからも感じた。コロナで大変な状況下で、よくこのハイテンションを保って作ったなと思ったよ。最近のパンクバンドの中でトップクラスにテンションが高いと思う。
あやぺた うちらも高かったですけど、NAMBA69の「CELEBRATION」(2021年9月リリースの3rdシングル)もテンション高くないですか?(笑)
難波 まあね! そこは確かに負けたくないけど、ディジーのアルバムは「ヤバい! ヤラれる!」と思うくらい刺激をもらった。どの曲もよかったんだけど、「Little More」がめちゃめちゃよかったんだよね。アレンジやアプローチがすごく面白かった。
あやぺた あー! うれしい!
moAi ありがとうございます!
あやぺた メロディも歌詞も両方好きな曲なのでめっちゃうれしいです。この曲は自分の子供に向けて書いた初めてのラブソングで、優しいメロディックパンクになりました。
moAi 僕からの「ギターはこんな感じでどうかな?」という提案に対してあやぺたがスッといいメロディをつけて、難航せずにできあがった曲で、自分たちの中でも「これはキタね」という感覚があったので、難波さんにピックアップしてもらえて驚きました。
難波 今回、リード曲は「So Beautiful」でしょ? 俺は「『Little More』でもいいんじゃねえの?」ってくらいヤラれちゃった。ほかにもそう思うヤツは多いと思う。
──奇をてらわず真っ向からメロディックパンクと向き合った作品でここまでいいと思えるものはなかなかないですよね。
難波 なかなかない。世界的に見てもないと思う。
──難波さんは何がこの作品を素晴らしいものにしていると思いますか?
難波 それについては俺も考えたよ。やっぱり、ディジーはメロディックパンクがとにかく大好きなのよ。メロディックパンクをやりたかったのよ。日本のポップスの要素も入ってるけど、これまでの人生で体感してきたメロディックパンクを自分たちなりに消化してるよね。世界中のメロディックパンクを吸収した日本からの回答、みたいな。それぐらいの内容だと思う。俺もメロディックパンクは大好きだけど、いざ自分がメロディックパンクのアルバムを作るとなってもこれはできない。
──それはなぜでしょう?
難波 俺はディジーほどメロディックパンクが好きじゃないからなのかもしれない。
moAi いやいやいや! そこに着地するんですか!(笑)
──難波さんがそう言いたくなるのもわかります。この作品にはメロディックパンク愛が詰まってますよね。
難波 そう、現代のメロディックパンクの最高峰なんじゃないかな。それぐらいヤラれたな。
あやぺた 今回、メロディックパンクな1枚ができたと自分でも思ってたので、そう言ってもらえてうれしいです。
海外進出への意欲
──あやぺたさんはさっきから「うれしい」しか言ってないですよ(笑)。
あやぺた そうですね。もう満足してます(笑)。
難波 このアルバムには最高なメロディックパンクを作ってやるという熱が詰まってるんだよね。俺にもそういうことはあるんだよ。「PROMISES」(2018年6月にリリースされたKen YokoyamaとNAMBA69のスプリットCD「Ken Yokoyama VS NAMBA69」の収録曲)を書いたときは「メロディックパンクを作るぞ!」という気持ちだったし。だけど、あくまでも曲単位なんだよね。これは海外でリリースしないの?
あやぺた 出ないですねえ。
難波 本当に? 出してもいいでしょう。FAT WRECK CORDS(かつてHi-STANDARDが所属していた、NOFXのファット・マイク主宰のアメリカのレーベル)とかに送ってみたら?
あやぺた ね。送ってみたいと思ってます。
難波 世界に行っちゃっていいと思うんだよね。評価されると思うなあ。
あやぺた 行きたいです、本当に。
難波 YouTubeのコメントも海外の人が多いよね?
あやぺた そうですね。インドネシアが多いですね。
──東南アジアはパンクやハードコアが熱いみたいですね。
難波 J-PUNKってジャンルがあるんだよね。
あやぺた・moAi へええ!
難波 メロディックパンクじゃないんだって。
──メロディックパンクのサブジャンルみたいな感じなんですか?
難波 たぶん、日本のメロディックパンクはメロディの乗せ方が独特なんだと思う。構成もそうで、AメロがあってBメロがあってサビ、みたいな。アメリカのパンクはサビがどこにあるのかわからなかったり、そんなにサビが抜けてなかったりする曲が多いから。前に「ハイスタの曲はサビがドカンと抜ける感じで面白いね」とアメリカの人から言われたことがあって、「なんでそうしないの?」と聞いたら、白々しいからあえてやらないんだって。
moAi あえて狙っていかないんですね。
難波 狙わないでいかに抜いていくかで競ってるって言ってた。でも、最近はEDMの流行りもあって、サビでスコーンと抜けてくる曲がエモの界隈あたりから出てきてるんだよね。アメリカでは90'sパンクのリバイバルが2、3年前から始まってて、Pennywiseとか90年代に活躍した人たちが息を吹き返してるんだよ。20歳前後の若者が90'sパンクのバンドのコピーをしているみたいで。俺の息子が大学生だから話をよく聞くんだけど、最近、その現象が日本でも起き始めているらしくて、今までメタルコアをやってたけどメロコアにハマっちゃいましたって感じの人が増えている。そういう人たちが今回のディジーのアルバム聴いたらモロに食らっちゃうと思う。高速だし、情報量が多いし、moAiのドラムアレンジも半端ないから。
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あやぺたの声が伸びやかになった