音楽ナタリー PowerPush - HEY-SMITH

アメ村のライブハウスから野外へ 猪狩秀平が提唱する“本物のフェス”

HEY-SMITHが9月に大阪・泉大津フェニックスにて開催したイベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」がDVD化。1月1日にリリースされる。

「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」通称“ハジマザ”はHEY-SMITHが2010年から行っている自主企画イベント。2012年までは大阪・アメリカ村周辺のライブハウスを使ったサーキットイベントとして実施されており、今年は初めて野外で開催された。「前夜祭」と銘打たれた9月13日、「本祭」と呼ばれた14日の計2日間にはHEY-SMITHと普段から親交のあるパンクバンドが出演。当日は大阪のみならず全国のパンクキッズが集結し、年に1度のお祭りを楽しんだ。

HEY-SMITHにとって“ハジマザ”とはどういう存在なのか。バンドのフロントマンである猪狩秀平(G, Vo)に話を聞いた。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 佐藤類

「Warped Tour」の風景がとにかくカッコよかった

──今回の「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」は初の野外での開催でした。野外での開催はいつから構想してたんでしょうか?

「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL Vol.0」をやった2010年から「これをいつか野外でやろう」と決めてました。

──なぜですか?

猪狩秀平(G, Vo)

その当時、自分が本気で好きなフェスが少ないなーって思ってて。なんか商業的やったり、お金が絡んでるイベントが多いなって。自分たちで主催して、本物の音楽フェスをやりたいなって思った。もっとシビアな、カッコいいバンドばっかりが出てるフェスがやりたかった。

──サーキットイベントじゃなくて、野外のフェスを目指したのはなぜですか?

単純に気持ちいいから(笑)。もう1つは、スケボーのショーとか、アートやブランドのブースとか……つながりのある連中みんなを集めようと思って。知らない人はナシで、関わってる人を集合させようと思うと、やっぱり野外じゃないとできなかった。アメリカの「Vans Warped Tour」に憧れがすごくあって、「ああいうのを日本でやりたい!」っていう思いが昔からあったんです。

──「Warped Tour」のどういうところに惹かれたんですか?

まず出てるバンドが好きやって。NOFXとかPennywiseとか出てた、あの頃の。まずはメンツに惹かれて。しかもそのメンツでツアー回っていくなんて、完全に修学旅行でしょ。絶対やってるほうも楽しいし、俺らもあの人たちがライブ以外でも楽しんでる映像とか観てすごく楽しくなったし。あと、スケートランプがあって、VANSのバナーがあって、っていうあの風景がとにかくカッコよかった。何がいいのかわからんけど、観て「うわっ、カッコいい!」って一撃で。

──カルチャー全体で盛り上がってる感じに憧れた?

うーん、それもあると思う。けど横のつながり感、あの“仲間感”みたいなものへの憧れがすごく強かった。

メンバーが交通整理をしていた1年目

──実際、今年野外でやってみてどうでした?

めっちゃ楽しかったです。開催前まではいろいろ問題があって。場所の問題とか。最初この場所でできるって言われてたのにいきなりダメになったり、「アコースティックイベントはいいけど、ロックイベントはダメだ」とかそういうことがいっぱいあって。ただ単に開催するっていうことだけにすごく手こずって、もう次はやりたくないって思うくらいに疲れてたんですけど、1日目の1バンド目始まった瞬間「またやろう!」って思えた。それくらい強烈に、純粋な楽しさがありました。

──サーキットイベントとは何が違いました?

「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」の様子。(撮影:半田“H.and.A”安政[Showcase])

規模が違ったから、大変さは違いました。そのぶん、手伝ってくれてる人がすごく増えてるんですけどね。1回目なんかはホンマに3人くらいでやりましたからね。

──ええっ! メンバー+3人くらいですか?

そうそう。その年はメンバーが自分たちのライブの前までずっとアメ村の交通整備とかしたし、ゴミの分別したり落ちてるゴミ拾ったりしてて。そういう状況から、規模が大きくなっていくにつれてフォローしてくれる人も増えて。今年に関してはセキュリティしてる人、1人ひとりの名前わかるかって言われたらそれはわからないんですけど、そういう人とか、鉄骨の高いところで作業してくれてる人とか、知らない人が関わってくれるくらいの規模になったんやなあって思って。ステージ作るのに1週間くらいかかるんですけど、そういう姿を見てから本番でステージを踏むと、すごくうれしいし、「ありがとう」ってすごく思って。自分の性格上、人にこんなに感謝するなんてそんなにないんで(笑)、「こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます」って感じ。それが楽しかった理由なのかも。

──みんなで作り上げたっていう達成感みたいな。

ありましたね。なんか気持ち悪いですけど。

ライブDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」2015年1月1日発売 / 3131円 / CAFFEINE BOMB ORGANICS / CBR-66 / Amazon.co.jp
ライブDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」
収録内容

9/13 HAZIKETE 前夜祭

  1. Drug Free Japan
  2. Skate Or Die
  3. Stand Up For Your Right
  4. Lonely With Everyone
  5. Journey
  6. Free Your Mind
  7. Over

9/14 OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014

  1. Endless Sorrow
  2. True Yourself
  3. Theme Of HEY
  4. Like A Gentleman
  5. Jump!!
  6. Living In My Skin
  7. The First Love Song
  8. We Sing Our Song
  9. Download Me If You Can
  10. Goodbye To Say Hello
HEY-SMITH(ヘイスミス)

HEY-SMITH

猪狩秀平(G, Vo)、Mukky(Vo, B)、満(Sax)、Iori(Tp)、Task-n(Dr)からなる5人組パンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL '12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに招聘されるほか、coldrain、SiMとのパッケージツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催した。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表し47都道府県を回るレコ発ツアーを大成功に収める。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催しており、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2015年1月1日に同イベントの模様を収録したDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」をリリース。