ナタリー PowerPush - HEY-SMITH
“過去”最高傑作となった“今”のアルバム
意見が割れる曲=ボツ曲
──アレンジの方向性や楽曲としての着地点は、ソングライティングをされている猪狩さんが決めるんですか?
僕が決めるときもありますけど、わりとみんなで話し合って詰めてますね。ギターソロもホーンセクションもみんながOKって言ったらOKっていう感じで。
──意見がなかなかまとまらない曲もありますか?
ありますけど、そういう曲はどんどん消えていきます。
──まとまらないものを無理にまとめようと動くことはないと。
まず動かないっすね。まとまらない曲は絶対いい曲じゃないんで。なんとかまとめようとして作り込むと、結果的に何回も演奏することになるわけじゃないですか。実は何回も演奏することって楽しかったりはするんですけど、でも、そんなことを楽しんでると曲がこなれてしまうというか、曲ができたときや初めて演奏したときの衝動がなくなってしまう。それは寂しいし、もっと衝撃が欲しいので。
──2年前にリリースされた2ndアルバム「Free Your Mind」は初期衝動を大事にして作ったという発言を読んだことがあるのですが、そのスタイルは本作にも受け継がれたと。
そうそう。「Free Your Mind」で、そういうスタイルが自分たちに合ってることに気づいたので、今回も引き続きって感じですね。
「New Album『Now Album』Now on sale」
──今回、特に思い入れが強い曲ってありますか?
「Start Again」ですかね。これ実はHEY-SMITHを結成して1番目か2番目にできた曲なんですよ。サビ以外の形は今と全然違うんですけど、曲自体はかなり昔からあって。俺はこの曲がすごく好きでね。でも今までのアルバムにはなんか似合わなくて、どうしても入れられなかったんです。アレンジを加えながら挑戦はしてたんですけど、毎回やっぱあかんってなってて。それが今回やっと来たなっていう。
──今回のアルバムに収まった理由はどこにあると思いますか?
アルバム全体にあるポップ感が影響してるかもしれないですね。あとは、30曲くらいあった中からガーッと削って収録曲を決めていったんだけど、16曲以下にはどうしても削れなくて。少ない曲数ならまだしも16曲も収録するならアルバム全体に起承転結をちゃんとつけないとなって思ったんです。で、この曲は俺らにはあまりない、アルペジオで始まる曲だったから、アルバムの最後のほうに入れたらよさそうだっていうイメージが浮かび、結果的にそれが思い切りハマったっていう感じですね。
──起承転結の“結”としてうまく収まったと。そういう意味ではラストの「Journey」もエンディングにふさわしい曲になってますよね。
この曲は1年半くらい前、アメリカにライブで行ったときにできたんですけど、その時点で次のアルバムの最後はこれやって思ってました。
──ゆったりしたサウンドと、センチメンタリズムにあふれたメッセージが胸を打つ曲だと思います。
アメリカで生まれたっていう記念感みたいなものもありますし、ちょっと大陸じみてる曲で仲間のことを歌うっていう、そんな雰囲気でアルバムを締めくくれたのはよかったなと思ってます。
──では「過去最高傑作」と断言できるアルバムに「Now Album」というタイトルを冠したのはどうしてですか?
俺はMETALLICAの「ブラックアルバム」(1991年のアルバム「METALLICA」の通称)みたいに「なんちゃらアルバム」っていうタイトルに憧れがあったんですよ。で、いろいろ考えてたときに、「HEY-SMITH、New Album『Now Album』Now on sale」っていう字面を想像したら笑いが止まらんくなっちゃって(笑)。もうこれしかないなと。ただちょっと勇気はいりましたけどね。「Now Album」ってなんやねん!って感じじゃないですか(笑)。
──HEY-SMITHが吐き出したい今の感情満載の内容を考えれば、納得できるタイトルではありますけどね。
そうっすね。ほんまに俺らの今のすべてが詰まってると思うんで。
放射線と風営法と戦い、君とヤリたがる
──ちなみに僕は4曲目の「Like A Gentleman」がすごく好きなんですよ。「俺はただ君とヤリたいだけなんだー!」っていう最低な曲で(笑)。
あははは。「Like A Gentleman」ですからね。「ジェントルマンのように」ってだけで、実際はジェントルマンじゃないっていう(笑)。これはもう若いときの俺ですね。
──あ、これは“Now”の猪狩さんではないと。
“Now”じゃないですよ(笑)。もう大人ですからね。でも、女性を敵に回すかもしれないけど、別にこういう感情ってあってもいいと思うんですよね。
──うん。真摯なメッセージを放つ曲がある一方で、こういうこともサラッと言えちゃうからHEY-SMITHは信用できるんだと思います。
男ならみんな持ってる感情だから、俺らが代表して歌ってあげようっていうことっすね(笑)。
収録曲
- Welcome To Now Album
- Dancing Is Illegal
- True Yourself
- Like A Gentleman
- D.I.Y(Dive Into You)
- Living In My Skin
- Download Me If You Can
- I Hate Nukes
- Heartbreak
- Summer Head
- Magic Leaf
- Real Tomorrow
- Lonely With Everyone
- Goodbye To Say Hello
- Start Again
- Journey
HEY-SMITH(へいすみす)
猪狩秀平(G, Vo)、Mukky(Vo, B)、満(Sax)、Iori(Tp)、Task-n(Dr)からなる5人組パンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年には1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL'12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに招聘されるほか、coldrain、SiMとのパッケージツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催するなど、より大きな舞台でのライブ活動も展開。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表した。