音楽ナタリー PowerPush - ハルカトミユキ

サウンドとビジュアルに刻まれた変化の道程

人生の“バッドエンドの続き”にあるもの

──「バッドエンドの続きを」も以前からある曲です。

ハルカトミユキ

ハルカ これは今回の作品では唯一バンドサウンド。ライブでもずっとバンドと一緒にこのアレンジでやってたんですよ。「マゼンタ」と同じように、なかなか作品にするタイミングが見つからなかったんですけど、今回、ほかの曲ともまた全然違うし、入れることにしました。

ミユキ 今の形のバンドアレンジは去年の1月にバンドメンバーと合宿したときにほぼ完成させたんですけど、この曲はもともとは2人で作っていて。その段階でいったん完成していたはずの曲だったんだけど、いろいろあって、一時は「もういいや!」ってなって封印してたから、バンドアレンジし直すことにしたんですけどね(笑)。でも2人でライブでやってるときから「2人だけでやってもドラムが聴こえるとか、そういうふうになったらいいね」って言ってたから、ちゃんとアレンジを完成させてバンドサウンドを具現化できたときは「よかったー!」っていう感じでしたね。

──「知らないフリをしてた 最後のページに何もないこと」っていう歌詞が印象的だったんですけど……。

ハルカ 本を読んでいて、どんどん左側のページの重さがなくなっていって、最後左側が1ページだけになったとき、そこに書かれてたのはバッドエンドで読んでる私は取り残されちゃった感じ。「で、私はどうすればいいんだ?」みたいな気持ちになることってあるじゃないですか。でも人生の場合はバッドエンドの瞬間もあるけど、明日もあるから生きなきゃいけないということを書いてみたかったんです。「人生にはバッドエンドも何回もあるんだけど、そこで本みたいに終わるわけにいかないから、その先を信じていく」みたいな感じですね。

──ちなみにハルカさんが思うバッドエンドな作品は?

ハルカ あー、なんでしょうね。私バッドエンドな作品嫌いなんですよ(笑)。だからこの曲ができたのかな。バッドエンドに向かっているように見えて、結局ハッピーエンドに持ってってくれる作品……あっ「流星ワゴン」、あれなんかはホントにわかりやすいハッピーエンド。結局死なない、ああいう作品が好きですね。

──全7曲の残る1曲は、「ヨーグルト・ホリック」ですが。

ハルカ これは「シアノタイプ」(2013年発表のアルバム)のセッションのアウトテイクですね。だからこの曲だけ自分の声が若いというか、かわいかったりするし(笑)。その当時の私たちにしてはものすごい明るい曲だったりはしたんですけど、今回のミニアルバムの中では普通になじんでます!

ミユキ そうそう。これはシンセのリフをループさせながら作ったんですけど、当時は「どうしよう。こんな明るい曲、出したくない」みたいな気持ちがあった。でも今の気分で聴いてみるとどこが明るいかわからない(笑)。

赤い口紅とドレスに照れずに象徴的なことをやりたい

──さて、このミニアルバムができたことで「今の自分たちはこれ」と胸を張れる感じになってます?

ハルカ そういうものができましたね。気持ちの変化がストレートに出てるし、ジャケットもね。「変えたい!」みたいな気持ちが自然と見た目にも出てますし。

──ヘアやメイクを変えると気持ちも変わりますよね。

ハルカ 変わりますねー。私は特に形から入るとものすごく効果的なので(笑)。

ミユキ (笑)。

ハルカ たぶん根がナルシストなので、自分がいい感じの見た目でいないと気持ちまで落ちていくみたいな(笑)。だから逆にいい感じの見た目になれれば、性格までいい方向に変わりますね。

──その新イメージを伝える「世界」のPVなんですけど、赤にこだわってますよね。赤というと情熱とかチャレンジみたいなイメージがありますけど……。

ハルカ 赤というか、深紅ですよね。それこそ「嘘ツキ」の歌詞の世界と同じというか、口紅とか赤いドレスって女の人の憧れの1つの象徴ではあるけど、恥ずかしがってると絶対身に付けられないじゃないですか。でもそこであえてこの色を身に付けることで自分自身を魅せるというか、はっきりと自分を象徴してみたかったんでしょうね。

──ミユキさんもサイドを大胆に刈り上げましたけど気分はどうですか?

ミユキ これはホント気合いが入りますね(笑)。今までそうじゃなかったわけじゃもちろんないですけど「ライブも、もっとわかりやすくやんなきゃ」とか、今までよりももっと大きくて明確なビジョンを意識するようになりましたから。リハにもニューロマの曲を聴いてテンション上げてから行くようになりましたし(笑)。

ハルカ 最近スタジオでもメッチャ頭振ってるしね(笑)。

──アグレッシブなライブになりそう(笑)。

ハルカ 私も、小さい頃にバレエをやってて、最近また始めたりとか、もともと動くことは好きなので。ライブにそういうところも出てきたらいいかなとは思ってますね。

──楽しみですね。ところで女子のデュオは珍しいですけど、自分たちの立ち位置みたいなものは考えます?

ハルカ 考えますけど、わかんないですね。

ミユキ デュオとして立ち位置を見付けるというより……。

ハルカ 2人だからできることもあるから、そこを模索して。

ミユキ 試そうとしてる感じですね。

ミニアルバム「世界」 / 2015年4月22日発売 / Sony Music Associated Records
ミニアルバム「世界」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2700円 / AICL-2859~60
通常盤 [CD] / 2160円 / AICL-2861
CD収録曲
  1. 世界
  2. tonight
  3. マゼンタ
  4. 君はまだ知らない
  5. バッドエンドの続きを
  6. ヨーグルト・ホリック
  7. 嘘ツキ
初回限定盤DVD収録内容

ハーモニー / Harmony #1 2015.2.6 東京キネマ倶楽部

  • 終バス(未発表曲)
  • 嘘ツキ
  • ニュートンの林檎
  • 青い夜更け
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるフォークロックユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2作目のCD「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。同年11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表し、2014年には3作目「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」を発表し、2015年1月からは毎月新曲を配信で発表している。そして同年4月、初めてのミニアルバム「世界」をリリースした。