音楽ナタリー Power Push - ハルカトミユキ

「より多くの人に届けたい」2人が踏み出した新たな一歩

今年1月より12カ月連続で新曲を発表する企画を展開中のハルカトミユキが、4月にリリースした「世界」に続き早くも新たなミニアルバム「LIFE」を発表する。前作からわずか5カ月で発売されるこの作品は「命」をテーマに、現在抱えている思いやメッセージを新たなアプローチで打ち出した1枚だ。

2人は「世界」と「LIFE」の制作を経てどのような変化を遂げたのか、今後どこへ向かおうとしているのか。そして来るべき10月3日の東京・日比谷野外大音楽堂でのフリーライブでは何を見せようとしているのか。じっくりと語ってもらった。

取材・文 / 宇野維正 ライブ写真撮影 / Aki Ishii

ようやく新しいハルカトミユキの音楽を提示できた

──「ハルカトミユキの変化」という意味では、これまでのフォークロック的なサウンドから80年代ニューウェイブ的なサウンドにガラっとイメージチェンジをした前作「世界」もターニングポイントとなる重要な作品でしたが、今回の「LIFE」はその先にハルカトミユキの新しい世界があることをしっかり提示してみせた素晴らしい作品になりましたね。

ハルカ(Vo, G) ありがとうございます。

ミユキ(Key, Cho) よかった(笑)。

──自分も含めて、インディーズ時代からハルカトミユキの音楽を聴いてきた人は、前作「世界」に戸惑う部分もあったと思うんですね。まさに変化の過渡期にある作品ということで、新しい音楽にチャレンジしてる部分と、これまでの自分たちの音楽を守る部分に、わりとはっきり分かれていて。そういう見方では、本当の意味でハルカトミユキの第2章が始まるのは今回の「LIFE」からなのかなって。

ハルカ(Vo, G)

ハルカ そうですね。そうなってるとしたらうれしいです。前作「世界」のときは「がむしゃらでやってはいる中にも、ここまでやったらどう思われるだろう?」とか、そういうことを考えながらやっていた部分があったんですね。「最終的にはどこに行き着くんだろう?」っていう、目的地が見えないまま1曲1曲に向かっていったというか。だから、今回の1曲目の「肯定する」という曲が最後に完成して、こうして7曲が並んだときに、ようやくトータルとして新しいハルカトミユキの音楽を提示できているとすれば、うれしいですし。作り終わってみて、表現として幅を広げることができたという気持ちと、でも軸の部分は変わってないという気持ち。その2つをちゃんと感じてますね。

ミユキ 「世界」の時点で、それまでに比べてものすごく音楽に対して素直になれたんですね。1980年代のニューロマという、自分が好きな音楽の要素を「世界」で思いっきり注入してみて。今回はそこからさらに素直になって、音楽を作ることを楽しめた気がしてます。ハルカの書いてきた曲も、相変わらず歌詞はヘビーなまま、まるでその対極にあるような明るいメロディの曲もたくさんあって。歌詞と曲が両極端な場所にあるのに、それがちゃんとバランスをとれている、そういう自分たちの新しい表現の形が見えてきたかなって。

音楽に対する向き合い方が変わった

──これはあくまでもリスナーとしての印象で、実際はどうかわからないけど、「世界」の変化は外因性の変化というか、「変わらなきゃ」という気持ちによって音楽的な部分が変化した作品だった気がしていて。一方、今回の「LIFE」はそこに内因性の変化もともなっているというか、ちゃんと歌の世界も更新されている。その違いが、実際の表面的なサウンドの変化以上にしっかり伝わってきたんですよね。

ハルカ それは、本当にその通りだと思います。「世界」のときはまずテーマとして「変わらなきゃ」って思っちゃってたんですね。それはビジュアル面にも出したし。でも今回はもっと無意識というか、自然な流れで。自分たちの音楽に対する向き合い方が変わったことで、必然的に生まれた作品ですね。

ミユキ(Key, Cho)

ミユキ デビューしてから、ライブでずっとお客さんに対してどこか壁みたいなものを作ってしまっていたんです。敵じゃないんだけど、常に怒ってるっていうか。でもその自分で作ってしまっていた壁を取り払いたいという気持ちが、「世界」からの変化には出てると思うんですけど、今回はそれが無理することなくできたというか。

──バンドが入ったライブでも、アコースティックセットでも、初期のハルカトミユキのライブはすごく硬派でストイックでしたよね。

ハルカ 同世代のバンドの人たちのライブをフェスなんかでみて、これは自分たちではできない、でも、私たちなりのライブで広げていきたい。それは歌の本質を変えなきゃとか、そういうことじゃないなって。別に、フェスでモッシュが起きてほしいとか、そんなことを思っているわけじゃないので(笑)。きっと、ハルカトミユキならではのカタルシスの見せ方というのはあるはずで。ライブでハルカトミユキが何を見せるのか、それがずっと突破しなきゃいけない課題としてあったんですよね。

ハルカトミユキ フリーライブ‘ひとり×3000’
ハルカトミユキ フリーライブ ‘ひとり×3000’
2015年10月3日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:15 / START 18:00
ミニアルバム「LIFE」 / 2015年9月30日発売 / Sony Music Associated Records
ミニアルバム「LIFE」
初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / AICL-2962~3
通常盤 [CD] / 2160円 / AICL-2964
CD収録曲
  1. 肯定する
  2. 宇宙(そら)を泳ぐ舟
  3. 春の雨
  4. COPY
  5. All I want
  6. September
  7. 火の鳥
初回限定盤DVD収録内容

ハルカトミユキ ワンマンライブ 2015 '世界'
2015.06.19 at LIQUIDROOM

  1. 世界
  2. バッドエンドの続きを
  3. ヨーグルト・ホリック
  4. 未成年
  5. マゼンタ
  6. 春の雨
  7. 君はまだ知らない
  8. 流星
  9. COPY
  10. その日がきたら
  11. 嘘ツキ
  12. 振り出しに戻る
  13. tonight
  14. ニュートンの林檎
  15. マネキン
  16. プラスチック・メトロ
  17. 青い夜更け
  18. ドライアイス
  19. Vanilla
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)による2人組バンド。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2作目のCD「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。同年11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表し、2014年には3作目「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」を発表し、2015年1月からは毎月新曲を配信で発表している。そして同年4月、初めてのミニアルバム「世界」をリリース。9月30日に新作ミニアルバム「LIFE」をリリースし、10月3日には東京・日比谷野外大音楽堂にてフリーライブを開催する。