音楽ナタリー PowerPush - ハルカトミユキ

サウンドとビジュアルに刻まれた変化の道程

「君はまだ知らない」リリックビデオの裏側

──3曲目にできたのは?

ハルカ 「君はまだ知らない」。

──学校を舞台にしたリリックビデオが公開されてますね。

ハルカ ミユキの母校。先生の話、しなよ(笑)。

ミユキ 高校3年間ずっと担任だった、かなりお世話になった先生で。私、進学部みたいなクラスに所属してたんですけど、受験のギリギリまでピアノ教室に通ってて「受験大丈夫なの?」って心配されて(笑)。「でもやりたいんで」って言ったらすごい自由にやらせてくれた先生だったんです。

ハルカ すごい変な子って思われてたらしいんですけど、その先生に急に「PVで学校使わせてもらいたいんです」って連絡をして。たぶん喜んでたよね?

ミユキ 喜んでましたね。「いつ撮影に来るんだ?」みたいな感じで(笑)。ただ歌詞がけっこうダークなことには心配してて。「屋上で煙草とかが出てくるのはちょっと困るかも」みたいなこと言ってたので「大丈夫、大丈夫」って(笑)。

ハルカ 申し訳ない(笑)。

──先生はPVはご覧になったんですか?

ミユキ 観て「こんなにきれいに映してくれてありがとう」って言ってました(笑)。

あ、学校の歌じゃなかった?

──なぜ学校のイメージで曲を?

ハルカ この歌詞はNAOKI-Tさんと作業してる中で出てきたいろんな言葉の断片から完成させたものなんですけど、1月は「世界」、2月は「嘘ツキ」と、今まで私たちの曲を聴いてきた人たちをすごく驚かせるような曲が続いてて「3月はどうしよう」ってなったときに「今回はダークでヘビーなものにしたい」ってことになって。音は、どうやって決めてったんだっけ?

ミユキ というか、これ最初「これはラブソングにしたいね」って言って作り始めた曲だったんですよ。なのに歌入れの日に歌詞見たら全然違うことになってて。

ハルカ あ、そうだっけ? 学校の歌じゃなかった?

ミユキ そうなの。でも「いきなり歌詞が変わったけど、すごいしっくりくるな」っていうことは私も思ってたから。

ハルカ (笑)。私としてはいきなり変えたわけじゃないよ。

ミユキ でも私は歌詞を書くところをそんなに見てなかったから(笑)。歌入れの日にほぼ初めてこの歌詞を見たからすごく印象的で。歌入れのあと、私のシンセを入れたんですけど「こういう歌詞になるんだったら、もうサビはシンセも爆発させよう」ってなって。「この歌詞があったおかげでシンセのフレーズが早く決まってよかったね」ってNAOKI-Tさんと言ってました。

──ハルカさんは最初から学校のイメージで歌詞を書き始めていたんじゃないんですか?

ハルカ いえ。実はスタジオで漠然と「ラブソングで」って話をしていたことは覚えてます(笑)。でも最初に言葉のカケラが出てきた瞬間「これはなんの曲になるんだろうな」って感じになっちゃって。書き進めはするんだけど、イマイチしっくりこないな?ってことが続いた上に、いろんな言葉を書いてくうちにそこからまたイメージが広がっていっちゃっていたので。で、いろいろ書いていくうちに「屋上」ってワードが出てきて「これだ!」ってなった感じ。そこから学校をテーマにした詞になったんですけど、最終的にはただ学校のことを書くんじゃなくて、私自身が昔の私にメッセージしてるような感じになったらいいなと思って。だから「君はまだ知らない」なんです。この主人公、不器用でうまく生きられなかったあの頃の自分に、その時代を生き抜いて今を生きている自分が、ここからメッセージを送る、そんな感じで書きたいなって。

寂しげなんだけど魅せてくれるマゼンタ

──現時点での最新シングルになる、4月リリースの「tonight」は、ミユキさんのニューロマ魂が炸裂ですよね。

ミユキ ただ、私もハルカと同じように、最初はNAOKI-Tさんとお互いのことがなかなかわからなくて。で、いろいろやり取りをしていく中でこういうアレンジができた感じですね。

ハルカトミユキ

ハルカ 逆に私は「tonight」は本当に悩まずにできて。「世界」と「君はまだ知らない」を経て、改めてNAOKI-Tさんとやり取りしながら作った曲だったんで、その2曲のうちに煮詰まった何かがポンと出たのかな。曲を作ってるとき、シンベの音を入れ始めたら楽しくなっちゃって。「これいいじゃん!」みたいな感じでそのまま曲を作っていったら、今度は「このサウンドだから歌詞は『えっ?』っていうことを言わなきゃな」って思い付いて。それで正直な気持ちをパソコンにバーって打ち込んでいったら、“あんな女が嫌い“みたいなイメージの言葉が出てきたから「よしこの方向で書こう!」って(笑)。

──そしてアルバム用の新曲の「マゼンタ」なんですけど、これは前からライブでは演奏してる曲ですね。

ハルカ 2人きりで弾き語りでやってた曲ですね。今回のミニアルバムにも弾き語りが1曲ほしいってことになって入れたんですけど、最初に弾き語りを録ってみたら、ちょっとアレンジを変えたくなっちゃって。またナカムラさんを呼んで「この音を入れてみよう」って相談して……。

ミユキ 化けたよね。

ハルカ でも全然違う曲になっちゃったという感じでもなくて。「マゼンタ」っていうタイトルは空の色のことを指してるんですけど、ライブでやってたバージョンよりもその色をもっと鮮やかにした感じ。寂しげなんだけど魅せる感じにしたいって話をしてこういう形にしてみました。

──この曲については温めていたものをやっと出せたみたいな感じ?

ハルカ そうですね。ずっと出したかったんだけど「でも出すならいつだろう」って話をしていた曲だったんで、このタイミングで出せてよかったです。

ミユキ 前から知ってる人は「あ、出た!」みたいな感じになると思います。

ミニアルバム「世界」 / 2015年4月22日発売 / Sony Music Associated Records
ミニアルバム「世界」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2700円 / AICL-2859~60
通常盤 [CD] / 2160円 / AICL-2861
CD収録曲
  1. 世界
  2. tonight
  3. マゼンタ
  4. 君はまだ知らない
  5. バッドエンドの続きを
  6. ヨーグルト・ホリック
  7. 嘘ツキ
初回限定盤DVD収録内容

ハーモニー / Harmony #1 2015.2.6 東京キネマ倶楽部

  • 終バス(未発表曲)
  • 嘘ツキ
  • ニュートンの林檎
  • 青い夜更け
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるフォークロックユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2作目のCD「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。同年11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表し、2014年には3作目「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」を発表し、2015年1月からは毎月新曲を配信で発表している。そして同年4月、初めてのミニアルバム「世界」をリリースした。