ナタリー PowerPush - ハルカトミユキ

2人がメジャーで描く「青写真」

ハルカトミユキのメジャー移籍第1弾となる1stフルアルバム「シアノタイプ」が完成した。普遍性のある歌と、破壊的かつ創造性に満ちたサウンドプロダクションが、さらに高い次元で調和。それぞれ異なる色彩と緊張感を放つ全12曲が収められている。今回は「新世代のフォークロックユニット」と呼ばれるハルカトミユキの最初の全貌が写し出された「シアノタイプ」=「青写真」ができるまでを丁寧に語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 上山陽介

格段にバラエティに富んで全体的にポップ

左からハルカ、ミユキ。

──素晴らしい1stフルアルバムだと思います。かなり手応えがあるでしょう?

ハルカ(Vo, G) 手応えはあるんですけど、ちゃんと1枚にまとまってよかったなって安心感が大きいですね。作りながら自分ではどういうアルバムになるか予想できなくて。

──曲調もさまざまだしね。でも、1枚のフルアルバムとしてドラマチックな全体像がしっかり浮かび上がる作品になってると思います。

ハルカ ありがとうございます。最初からバラエティに富んだ曲が並んでるアルバムにしたかったんです。聴いていて飽きないような。でも制作のスケジュール的に、いろんなことが同時進行だったんですよね。レコーディングしつつ、アレンジしつつ、歌詞を書きつつみたいな。あとは、フルアルバムを作ることも初めてだったから、曲調もバラバラな12曲が1枚にまとまったときにどういうものになるのか読めなくて。結果的に今までと全然変わってない部分と、いい意味でリスナーを裏切れる要素を融合できたアルバムになったなと思います。

──ミユキさんはどうですか?

ミユキ(Key, Cho) その通りだと思いますね。

──え、どの通り?(笑)

ハルカ ホントに君はね(笑)。先にしゃべらせないとダメだな。

ミユキ あはははは(笑)。ホントにこれまでリリースした2枚の作品(2012年11月リリース「虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。」 / 2013年3月リリースの「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」)より格段にバラエティに富んだ曲が並んでいて、全体的にポップになったと思うし。かといって、ハルカトミユキが最初から持っているものも変わらず表現できてると思います。1曲目の「消しゴム」はハルカトミユキとして活動し始めた頃のアコースティックなアプローチができたし。私も初めて自分1人でインスト(7曲目の「7nonsense」)を作れたのもよかったなって。

──「7nonsense」はミユキワールド全開の曲になりましたね。

ミユキ まだまだですけど、今できることはやったと思ってます。

──まだまだと思うところは?

ミユキ 「7nonsense」を作ったあとにテクノやエレクトロ界隈のアーティストの作品をちゃんと聴いてみたんですけど、もっと自分の曲も削ぎ落せるなと思ったんですよね。

──でも無軌道に混沌とした音を創造するのがミユキさんじゃないですか。

ハルカ 私もそう思う(笑)。

ミユキ ありがとうございます(笑)。でも、もっと自分なりに突き詰められるなと思って。

入っちゃえばこっちのもの

──相変わらず1曲1曲が鋭く刺さってくるような感触があるんですけど、でも全体的に間口が広く開けられた作品になったなと思って。特にメロディの普遍性がグッと高まったと思います。

ハルカ

ハルカ そうですね。入口を広げたかったので、それが曲調に出てると思いますね。核にあるものは変わってないんですけど、そこに触れてもらうために入口を広くしたかったんです。

──リスナーを核に引きずり込むために意識的に間口を広くしたと。そこからはもう、鋭く刺したり、激しく燃やしたり。

ハルカ そうそう。入っちゃえばこっちのもので(笑)。知らないうちに燃やされたみたいな感じになったらいいなと思って。そこは確信犯的ですね。

──本作には「Vanilla」(「虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。」収録)と「ドライアイス」(「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」収録)という既発曲も入ってますが、これらの曲を発表した時点で示したハルカトミユキの核はどんなものだったんでしょうか?

ハルカ “ある思い”が何十回も裏返って表現として表に出ているんですけど、そのある思いって「希望」とか「期待」なんですよね。それが裏返って「闇」を歌ったり、そこにちょっと射す「光」を歌ったりしていて。でも、もとを正したらそこには絶対希望や期待があるんですよね。ただ、希望や期待をそのまま歌わないからこそ、曲を聴く人が普段意識していないところに訴えかけて、ホントの意味で共感してもらえたらと思っていて。

──本質的な共感を。

ハルカ そう。本質的な共感を求めてますね。だから希望とか期待を、軽く表層的には表現したくないんです。過去2枚の作品でそういう表現の姿勢を示すことができたと思うし、これからもそういう曲を作っていきたいと思いましたね。

ニューアルバム「シアノタイプ」/ 2013年11月6日発売 / 3150円 / Sony Music Associated Records / AICL-2598
収録曲
  1. 消しゴム
  2. マネキン
  3. ドライアイス
  4. mosaic
  5. Hate you
  6. シアノタイプ
  7. 7nonsense
  8. 振り出しに戻る
  9. 伝言ゲーム
  10. 長い待ち合わせ
  11. ナイフ
  12. Vanilla
ハルカトミユキ
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるフォークロックユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源となるミニアルバム「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2ndミニアルバム「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表する。