グループ魂が7年ぶりとなるシングル「もうすっかり NO FUTURE！」を9月5日にリリースした。

今年1月に行われたイベント「三宅ロックフェスティバル vol.1」で披露された表題曲は、人生の折り返し地点を過ぎたおじさんの悲哀とボヤキをトーキングブルースならぬ“トーキングパンク”ふうに仕上げたナンバー。カップリングには石鹸（Dr）こと三宅弘城の50歳を祝って作られた「男は泣く」が収められている。

現在メンバーの平均年齢は49歳。唯一無比のパンクコントバンドとして、独自の道を歩んでいる彼らにシングルのこと、そしてグループ魂の未来について語ってもらった。

取材・文 / 中野明子　撮影 / 菊地昇

遅刻、ギターリフを60パターン考える

──シングルを7年ぶりにリリースすることになった理由はなんだったんでしょうか？

暴動（G / 宮藤官九郎）　いや、特にないんですよ。7年前のシングルも、タイアップが決まって慌てて作ったやつだったし。今回はアルバム作るタイミングじゃないときにできた曲なので、「出すならシングルがいいです」って言ったら、7年ぶりだったっていう。

──自然にできた曲だと。

暴動　そう。タイアップも何も付いてない。

港カヲル（46歳 / 皆川猿時）　いや、カップリングの「男は泣く」のほうはあるよ！ 「三宅ロックフェスティバル」が。

暴動　ああ、うちうちのタイアップがあったな（笑）。

石鹸（Dr / 三宅弘城）　ええ、公式ソングですから。

暴動　そろそろ作品を出さなきゃっていう感じでもあったんです。あとタイトルがすごく気に入ってたんで、このタイトルの曲をリリースできるといいなあって。アルバムの中に入ると別にって感じだけど、これがシングルだとインパクトがあるじゃないですか。アナログも出したことがなかったので、この機会に作ってみようかなと。

──表題曲の「もうすっかり NO FUTURE！」は1月に開催された「三宅ロックフェスティバル」で披露された曲です。こちらは作詞が暴動さん、作曲が遅刻さんですが、歌詞と曲はどちらが先にできたんですか？

暴動・遅刻（G / 富澤タク）　……。

破壊（Vo / 阿部サダヲ）　まさかの作った人間が黙るっていう。

暴動　えーと、確かイメージとキーワードだけ先にあったんですよ。「もうすっかり NO FUTURE！」ってタイトルで、おじさんの哀愁を歌うっていう。あと遅刻には「Aメロにはメロディを付けないでくれ」って言いましたね。サウンド的に印象に残る曲にしたいので、先にギターのリフを考えてくれって言って。歌詞のイメージが先にありつつ、曲と同時進行で歌詞を作って。最初にテーマがあったんで、どっちが先に完成したってことはなかったかな。

──暴動さんとしてはギターリフが肝になると考えて作っていたと。

暴動　そうですね。リフで展開していく曲って、意外とやってないなとは思ったんです。

遅刻　ギターリフは60パターンくらい考えて。

港　60も!?

暴動　1個でいいって言ったのに！

港　ホントに60パターンなの？ 3つくらい使い回してるんじゃないの？

遅刻　テンポとかそれぞれちょっと違う感じにして。暴動に聴いてもらったんですけど、弾かずして運指が難しいものを選ぶんですよ。

港　あのね、運指っていうのは運ぶに指って書くの。わかる？

──はい（笑）。

遅刻　指が楽なフレーズは、普通聴いたことがあるものになりがちだと思うんです。でも逆に弾いてて気持ちがいいやつも悪くはないかなと思ったり、いろいろなパターンを考えて。何回かやりとりしながらプリプロしました。

次の日に口で言えないギターリフはダメ

──最終的に選んだリフの決め手はなんだったんですか？

石鹸　何しろ60個作ってますから。

遅刻　どれがいいか、わかんなくなっちゃうんですよねえ。

破壊　当たり前だよ！

暴動　でもさ、リフ作るときって、印象に残ってるやつは忘れないんだよ。次の日に口で言えないやつはダメ。

港　ああー！ そうだねえ。

破壊　60個も作らないで、それ1個あればいいじゃん。

石鹸　で、どれくらいの期間で作ったの？

遅刻　2、3日かな。

暴動　って言うか、ホント60個作るってどういうことだよ。死んじゃうのかよ。

小園（B / 小園竜一）　はははは。

──ちなみに遅刻さんが暴動さんに聴かせたのは何パターンだったんですか？

遅刻　10個くらい？

暴動　俺、10個も聴かなかった。3つか4つくらいだよ。

港　聴いてあげなよー。60個も作ったんだから。

暴動　そもそも歌のキーが決まってるから、リフもだいたい似てくるし、3つ目以降は聴いてて違いがわかんなくなるんだよ！ だから、選んだのは、まあ、直感ですね。これがいいかなーって。

サビが違うと覚えづらい

──今回の楽曲では、そんな印象的なリフの上に、中年男性の哀愁のこもった語りが乗ってます。さらにサビでは、キャッチーなメロディの上で、「あと何回できるかな あと何回やるのかな 一回一回大事だ もうすっかり NO FUTURE！」というフレーズが繰り返し歌われています。

暴動　サビが1番、2番で同じ歌詞って実は今までやったことがなくて、あえてやりたかったんです。

港　ほー。

破壊　サビが違うと覚えづらいんですよ。

暴動　Charさんと番組で共演したときに、「チャーのローディー」を歌ったんですけど、「（サビを）同じにしておけば楽なのになあ。なんで違うのにしたんだろう」って思っちゃったんです。

破壊　おかげで「もうすっかり NO FUTURE！」は歌いやすいですね。お客さんも歌いやすいだろうし。

──確かにライブで初めて聴いたとき、キャッチーなのですぐ口ずさめました。歌入れはどうでしたか？

破壊　曲の冒頭はセリフだからやりやすかったですね。「パッとしねえ」とか、セリフがあるグループ魂の曲って何個かあるんですけど、しゃべりのある曲が好きなんです。今回はダウン・タウン・ブギウギ・バンドっぽい感じをイメージして。

──語りのある曲のレコーディングで意識することはありますか？

破壊　ありますね。いくつかパターンがあって、安岡力也さんか、宇崎竜童さんか、マッチ（近藤真彦）さんか……。

バイト君（大道具 / 村杉蝉之介）　わはははは（笑）。

暴動　わりと近い3パターンだな。で、今回は？

破壊　ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのイメージだったし、宇崎さん寄りかな。