ナタリー PowerPush - ニューロティカ

アツシ×宮藤官九郎 白塗りピエロの30年

2014年に結成30周年を迎えるニューロティカ。キャッチーで明快なパンクロックサウンドとアツシ(Vo)の白塗りピエロ姿をはじめとするユニークなスタイルで彼らは音楽シーンを走り続けてきた。そして今年は90年代に脱退したオリジナルメンバーを再集結させてワンマンツアーを実施するなど、アニバーサリーイヤーにふさわしい精力的な活動を展開する。

30周年プロジェクトの1つとして、彼らが日本コロムビアに在籍していた時代の楽曲を収めたベストアルバム「ベスト・オブ・ニューロティカ」が3月26日にリリースされた。今作の監修およびライナーノーツを担当した宮藤官九郎はグループ魂の暴動(G)名義でたびたびニューロティカと競演し、アツシとは旧知の仲。今回はこの2人の会話を通じて30年を振り返った。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 中島たくみ

第一印象は「塗ったらダメだろ!」

左からアツシ、宮藤官九郎。

──まずは宮藤さんに。ニューロティカとの出会いについて教えてもらえますか?

宮藤 初対面は……「木更津キャッツアイ」の年だから12年前か。大阪でグループ魂と氣志團が対バンするとき、あっちゃんも大阪に来ていて偶然会いました。でもそれ以前に僕は1989年に仙台の野外イベント「ロックンロールオリンピック」でニューロティカのライブを観ていて。メジャーデビューしてすぐの頃で、出演順がXのあとだったんですよね。

アツシ うん、でもうちらがハイエース2台で会場に着いて、駐車場でキャッチボールしてたら僕らの車見えなくなるくらいデカいトラックが来たんだよ。「なんだこの車!」って言ってたらXの機材車だった(笑)。

──ニューロティカに抱いた第一印象はどういったものでしたか?

宮藤 「なんだこれ!? さすがにダメなんじゃないか?」って正直思ってました(笑)。だって僕はARBやアナーキー世代だし、ロックのメイクはアンジー(水戸華之介)さんや大槻ケンヂさんのとかが限度だと思っていたんですよ。だから「顔全部白く塗っちゃったらダメだろー!」って正直そのときは偏見を持ってましたね。でもその後ニューロティカはジュンスカとかとよくイベント一緒にやってて、そのビデオを観ながら「この人たちどこにでもいるなあ……きっといい人たちなんだな」って印象が変わってきて(笑)、その後レコードを買いました。

アツシ ふふふ(笑)。

バンドマンは楽しませてなんぼ

宮藤官九郎

宮藤 でもわかんなくなるんですよね。聴いてみると意外と演奏はちゃんとしてるし、今回改めて曲を聴いてみると「あーこんないい曲あった」って思うのに、ライブを観るとレスポールにパンティーをかぶせてたりしてて。

アツシ 昔はめちゃめちゃだったからね。THE BLUE HEARTSと対バンしたときもライブ中に客席を走り回ったらイベント主催者に「あなただけのコンサートじゃないんだから!」って怒られた。

宮藤 新宿ロフトで共演したときもそうでしたよね。ニューロティカのギターとベースがワイヤレスで。「ロフトなのにワイヤレスっておかしくないか?」って気になってたら、ライブで「ロックンロール クレイジーラン」の演奏中に走り出しましたね(笑)。

アツシ 「なんで走るんですか?」って聞かれるけど、僕自身もよくわからなくて「とりあえずやっとけ!」っていう感じ。でもグループ魂もギグ観てるとカマしてるよね(笑)。

宮藤 ええ、カマさないとダメですから。

──その姿勢はニューロティカから学んだものだったりするんですか?

宮藤 そうですね。今のメンバーになってからのライブを初めて観たとき、お客さんのノリが若かったんですよね、実際に若い子もいて。「お客さんと一緒に年を取っていく」っていうバンドって多いじゃないですか。だから「これ新しいな、若い人たちのエネルギーに常に応え続けてるんだな」って勉強になりました。

アツシ

アツシ グループ魂は練り方、悪ふざけの細かさが違うよね。氣志團しかり、こういうバカができる大人がいるっていうのは観ててうれしい。バンドマンはお客さんを楽しませてなんぼだって思うから……まあちょっとパクられてるとこもあるんだけど(笑)。氣志團は僕らの「絶対絶命のピンチに尻尾を高く上げろ!」って曲の「もともともっと」ってコールをやっちゃってて。地方とか行くと「氣志團の真似なんかして!」って言われる。「まあね!」って言うんだけど心の中では「オリジナルは俺だよ! おーれ!」って(笑)。でもうれしいですね。

宮藤 僕があっちゃんの言ったセリフを別の場所で使うときには一応メールを送りますからね、「使わせていただきます」って。最近だと「あまちゃん」の「女のスカートと男のスピーチは短いほうがいい」っていうセリフ、実はあっちゃんがMCで言ってたもの。「あー、うまいこと言うなあ!」って(笑)。

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ライブ情報
30周年記念ワンマン「8人だよ! 全員集合!」
  • 2014年5月10日(土)福岡県 DRUM SON
  • 2014年5月17日(土)宮城県 enn 2nd
  • 2014年5月24日(土)北海道 COLONY
  • 2014年5月31日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年6月1日(日)大阪府 umeda AKASO
  • 2014年6月7日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • <メンバー>
    アツシ(Vo) / 修豚(Vo, G) / カタル(B) / ション(B) / リョウ(G) / ジャッキー(G) / ナボ(Dr) / アキオ(Dr)
ニューロティカ

1984年にアツシ(Vo)と修豚(G)によって結成されたパンクバンド。結成と同時に設立したネオファミリーレコードからオムニバス盤やシングルを発表し、1989年5月には初のフルアルバム「ハーレム野郎」をリリース。翌1990年6月に日本コロムビア TRAID レーベルより、シングル「ア・イ・キ・タ」でメジャーデビューを果たした。ピエロメイクと派手なコスチュームで誰もが口ずさみやすいパンクサウンドを提示し続け、特にライブを重視した活動により現在までの総ライブ回数は1600回を超える。また野村沙知代や小向美奈子との共演や奇抜なライブ企画などユニークな活動でたびたび話題となる。この姿勢をリスペクトし、これまでリリースされているトリビュート盤には氣志團、PUFFY、カジヒデキ、LUNKHEAD、MERRYなど多彩なアーティストが参加する。

宮藤官九郎(くどうかんくろう)

1970年宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、多くの作品の脚本、演出などを手がける。1995年からはパンクコントバンド・グループ魂を結成し「暴動」名義でギタリストとして活躍するほか作詞作曲も担当。俳優としてさまざまな作品に出演するほか、ドラマや映画の脚本・監督も数多く手がけており、近作には国民的ヒット作のドラマ「あまちゃん」(脚本)のほか、映画「中学生円山」(監督・脚本)、「謝罪の王様」(脚本)、「土竜の唄」(脚本)がある。2014年は「宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティや涼 the graduaterの配信限定シングル「ドラゴン気取りのティーンネイジ・ブルース」のプロデュースなどなど多彩な活動を展開し、今作「ベスト・オブ・ニューロティカ」の監修を行った。7月からは舞台・大人の新感線「ラストフラワーズ」に出演。