自粛期間は
普段聴かないようなジャンルの音楽を

──自粛期間中はどう過ごされていましたか?

最初は家事的なことをやってましたね。それがある程度落ち着いてからは、映像収録をするための準備をして。「GLAY MOBILE」で簡単なベース講座みたいなのをやってるんですが、これまではスタッフ2、3人に来てセットしてもらって俺はただベースを弾くだけだったんですけど、移動が制限されていたので自力で撮影して、編集して……映像データをスタッフに渡す形に変えたんです。

──お一人での撮影、編集には慣れましたか?

いやあ……いかに自分が普段どれだけプロフェッショナルなスタッフたちと仕事ができているのか、そのありがたみをすごく感じました。自宅でレコーディングもしていて、本番に近いようなテイクのものとかも録ってるんですよ。今まではスタジオにエンジニアやプロデューサー、ほかのメンバーや事務所のスタッフもいるのですぐ集中できる状態だったけど、家で自分1人だと集中力が高まるまで時間がかかりますね。何より自分が録ったテイクがいいのか悪いのかという判断がつけづらい。いろんな場面で混乱する部分があるので、ちゃんとしたスタジオでレコーディングできていて恵まれていたと改めて感じてます。

──新しいスタイルに戸惑うこともあったり?

はい。今はあまり表立った活動がないので、時間の流れが緩いんです。だから自分の好きな時間に作業を始めて、じっくり曲と向き合えるのはいい部分もあるけど戸惑う部分も多い。だから録ったものをすぐにメンバーに送るのではなく、客観的に聴こうと思って一晩寝かせて、翌日聴いて違和感がなかったら聴いてもらうという感じでした。

──ちなみに動画編集や自宅レコーディング以外に何か新しいことに挑戦されましたか?

音楽的な話をすると、普段聴かないようなジャンルを聴いて勉強してました。主にSpotifyのグローバルチャートのプレイリストですね。今までは好きな音楽しか聴かなかったけど、世の中でどんな音楽が流行ってるかをチェックしたり、日本の音楽シーンでも聴いたことがないものが多かったので聴いたり。例えばザ・ウィークエンドとかデュア・リパとか今まで触れてこなかったんですが、改めて聴いてみると純粋に曲がいいんですよね。ドージャ・キャットの曲もそうだし。そりゃ人気出るよなあ、だって曲がいいもん、と思いました。

「DOPE」のモチーフはネトフリ番組

──ニューシングル「G4・2020」には、JIROさん作曲の「DOPE」が入ってます。この曲はいつ頃から制作を?

年明けですね。アリーナツアー中にはTERU作曲の「流星のHowl」ができていて。HISASHIが正月くらいに風邪で寝込んでいたときに「ROCK ACADEMIA」を作って、「めちゃくちゃいい曲ができた!」と言ってきたんですよ。その流れからTAKUROから過去の「G4」シリーズみたいにメンバーそれぞれの曲を入れた作品にしたいから、JIROも何か持ってきてくれない?と言われて作り始めました。

──イメージの指定などはありましたか?

TAKUROからは「ビリビリクラッシュメン」みたいな曲を、と言われて。ポップなんだけどマイナー調の曲をJIROに作ってもらいたいとリクエストを受けて生まれたのがこの曲です。

──ストレートなロックチューンで、JIROさんらしい曲だなと感じました。歌詞はアナーキーな雰囲気かつ社会風刺が効いてますよね。何かモチーフやテーマはあったんですか?

Netflixのドキュメンタリー番組「DOPE」ですね。ドラッグ製造をしているコロンビアの田舎の家族が、生活をするために総出でコカインを育てている様子から、それがどんどん悪い人たちの手に渡って、最終的にはドラッグでボロボロになっていく人に迫るというドキュメンタリーなんですけど、それが面白くて。サビはその番組と関連付けて書きました。

──サビは「おぞましい欺瞞 秘密のROCK'N'ROLLの宴」とパンチのあるフレーズが書かれていますね。歌詞はTAKUROさんとの共作ですが、サビはJIROさんが作られたとか。

ええ。最終的にはTAKUROの言葉が加わった感じですね。

JIRO(B)

──作詞方法は以前と変わらずですか? あまり歌詞はかっちり書かないと話されていましたが。

少し変わって、最近の曲はTERUに具体的なメロディラインを伝えたいんで、仮歌詞をしっかり書くようにしてるんですよ。単に言葉のハマり方とメロディのつながり方だけを意識して作っているので、採用してほしいというわけではないんですけど。

──「DOPE」とはサウンドも歌詞も対照的とも言える、HISASHIさんが作られた「ROCK ACADEMIA」の制作はどうでしたか?

この曲はHISASHIが細かくプログラミングしてきてくれたので、俺のほうでアレンジする範囲は狭いんですけど、そこでいかに自分らしさを出すか意識しましたね。

──その“JIROらしさ”というのはご自身としてどんなものだと認識されていますか?

HISASHIの曲はデジタルなアプローチが多いので、カチッとしているんですね。そのカチッとしてる部分に跳ねのグルーヴ感とか出すと、曲がよりよくなるんじゃないかなと思ってるんです。それによって、ほかのGLAYの曲とも混じりがよくなるんじゃないかなと。HISASHIの曲では毎回、サウンドにうねりみたいなものを足していければと考えています。

──TERUさん作曲の「流星のHowl」の制作はどうでしたか?

TERUの曲は毎回そうですけど、アレンジに迷うんですよ。TAKUROの曲はゴールが最初に見えていて、彼が想像していないようなフレーズが入ってもドンと構えているというか。想定外のアレンジが入っても揺るがないから、こちらも迷うことがない。TERUの場合は、アレンジ中にテンポが上がったり、内容が変わったり、ここをこういうふうにしたくなったとか、曲の最終的なゴールが変わっていくんです。そこが天才肌のボーカルっぽいので、こちらも迷うけど面白いですね。

──いちリスナーとしてTERUさんの作曲能力が年々アップグレードされている印象があるんですが、同じメンバーとしてJIROさんはどう感じられていますか?

最近だとEDMっぽいニュアンスも取り入れたり、最近のトレンドを取り入れているのがTERUっぽいなと。DJ Massくんとのアレンジを取り入れたサウンドにしたいとか、今までのGLAYとは違ったサウンドや幅の広がりを自分の曲では見せたいんじゃないかと感じています。

──「G4・2020」には「Into the Wild」の新バージョンとリミックスが3曲収録されます。

「Into the Wild」はTAKUROがすごく手応えを感じている1曲なんですよね。今までGLAYの曲にはここまでサウンド全体を重視する曲はあまりなかったんですが、実際リリースしてみたらファンの人たちやミュージシャンの仲間から高い評価を得て。そこからリミックス企画が始動した感じですね。従来のようにメロディアスな楽曲だったら、誰かにリミックスを依頼したりはしてなかったと思うんです。

──バンドに新しい息吹をもたらした曲だと。

そうですね。リミックスを通してまた広がりを見せるんじゃないかなと思います。

JIRO(B)

早くみんなの前で演奏したい

──6月にWOWOWで放送された番組はひさびさのライブパフォーマンスになりましたが、何か感じるものや発見はありましたか?

パフォーマンス中というよりは、オンエアされた映像を観てすごく興奮したんです。収録当日は、「自分たちも元気にやってるんで、ファンのみんなももうちょっと踏ん張ってね」というエールを送る気持ちでライブをしていて。放送当日はごはんを食べてから少しお酒飲んだ後にファンの方と同じようにリアルタイムで番組を観たらめちゃくちゃよくて。GLAYのメンバーLINEでも「すごくいいね」みたいなやり取りがあって、早くみんなの前で演奏したいという気持ちが高まりました。

──改めてライブの意義を考える機会だったと思うのですが、JIROさんにとってライブはどんなものですか?

やはり非日常的な空間なので、以前と変わらずファンの人たちには日頃のストレスを発散してもらえる場所になってもらえたらと思っています。自分にとっては仕事の1つではあるんですけど、気持ちとしては仕事としてやりたくないんです。ライブがある日は、その日の中でステージ上の2時間半が自分にとっても最高に楽しいものであってほしい。だから前回のアリーナツアーではあまり打ち上げに参加しなかったんですよね。

──以前もそうお話されていましたね。お客さんと同じように、テンションのピークを常にライブに持っていくようにしていると。

はい。

──ライブ関連の話題でいきますと、「HOTEL GLAY」の映像はご覧になりましたか?

普段はあまり過去の映像は観ないんですけど(笑)、今回はオーディオコメンタリーの収録があったのでメンバーと雑談しながら観ました。改めて思い出すと、あのツアーは中盤の「氷の翼」から「Into the Wild」の流れがキモだったなと。決して今までのGLAYの曲のようにグッドメロディを聴かせる派手な感じじゃないけれど、ライブのハイライトを作っていた。あの2曲の世界観を映像演出も含めて作り上げることができたのは、今後のGLAYの強みになると思いました。ダークな雰囲気の曲だからバンドの“自分よがり”になるんじゃないかとか、曲自体も長いのでお客さんが飽きないか不安だったんですが、ライブのときもファンの方からの評判がよくて安心しました。

──こういったライブ映像を観ると、ライブへの思いが募りますね。

ええ。今度コンサートでファンのみんなと会えるのはいつになるのかわからないけど、次に再会したときの感動はとんでもなく大きくて、一緒に過ごす時間の大切さを実感すると思うんです。それまでお互い気持ちを高めましょうという感じですかね。自分たちは制限ある中でみんなに楽しんでもらえる努力をしていくつもりですし、先行きがこれ以上暗くなることはないと思うので、その日を楽しみにお互いがんばりましょうと伝えたいです。