ナタリー PowerPush - 銀杏BOYZ
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」峯田和伸インタビュー
銀杏BOYZがニューシングル「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を12月2日にリリース。今回はボーカルの峯田和伸に、新曲の狙いとバンドの状況、そして波紋を呼んでいるビデオクリップなどについて語ってもらった。
取材・文/大山卓也 撮影/平沼久奈
1年半かけてバンドをリハビリしてた
──前回ナタリーでインタビューさせてもらったのが「光」のときだから、ちょうど2年前で。この2年間、銀杏BOYZはあんまりCDも出してないしライブも多くなかったし、世の中的にはあまり動いてないっていう印象があると思うんですけど。
うん、形にはなってないです。
──その間、峯田くんは何本か映画に出演したりはしてましたよね。
バンドがうまくいかないときは、そのまま何もしてないよりかは映画とか、なんかやってるほうがいいしね。そういうタイミングで映画の話が来たから。
──じゃあバンドが映画の撮影のせいで止まってたんじゃなく、そもそも銀杏BOYZ自体がうまくいかない時期だったということ?
うん、撮影中はもちろんバンド活動はできないけど。バンドがうまくいかないときはやっぱりあって。なんだろうな、自分たちの良さとか勢いっていうのは自分たちが知ってるので。それがうまくいってないときは人前には出さない。
──今はバンドの状態は良くなってきましたか?
うん。「光」である程度バンドとしては良い状況になったんだけど、やっぱり体力とか精神面でちょっとガタはきてて。それをリハビリしながら、また今の状態まで持ってくのに1年半ぐらいかかっちゃったんですよね。
できて、壊して、もう1回録り直しての繰り返し
──「光」のあとに全国7公演の「せんそうはんたいツアー」がありましたが、あのツアーは今振り返ってみてどうでした?
あれは総括、あのときの。で、あれからすぐパッと進めばよかったんだけど、メンバー4人ともいろいろ抱えたままで、それが悪くなった人もいれば良くなった人もいて。で、今回の「ボーイズ・オン・ザ・ラン」でやっともう1回足並み揃えられたっていう。
──そのメンバー1人ひとりにいろいろあってっていうのは、具体的にはどういう状況で?
具体的に言ったらなんか「辞めちゃうかも」とかね。「やってらんない」「もう解散だ」とかいう話も数百回あったんで。でもそんなのいちいち言ってたらキリねぇんだけど、どのバンドもあると思うけど、そういうのがありました。そりゃあ焦りとかもあったけど、バンド自体がガタガタッてなってたんで、周りの状況はあんまりわかんなかった。気付いたら「うわーもうあれから1年半だよー」みたいな感じで。
──じゃあその間もスタジオ入ってたりはしていた?
ずっと。スタジオ代バカになんないよ。
──スタジオでは主に何をしてるんですか?
音作ったり、アレンジ考えたり。
──新曲の?
うん。レコーディングしつつ練習しつつみたいな。
──じゃあずっとアルバムを作っていたということ?
作ってた。
──それは「光」までの銀杏BOYZとは違って、またちょっとバンドの新しい形を模索しつつ、という感じなんですかね。
そうすね。5年前の2004年に1stアルバムのレコーディングをしてた、あのときのギリギリ感。切羽詰まってて「これ出さないともうダメだぞ。俺たちもう終わってんだから」みたいなとこに、もう1回持っていきたかったの。やっぱり同じことやってもつまんないからね。
──そうやって1年半スタジオに入って、満足いくものはできました?
できて、壊して、もう1回録り直しての繰り返し。
──その試行錯誤が必要だったってことなんですよね?
こういう話はたぶん、結果が作品として出てないと説明しづらいと思うから、アルバムが出てからのほうがいいかもしれない。
──あ、確かにそうですね。
やっぱりなんぼ説明しようが。例えばもしかしたらメンバーが何かものすごい病気になってて、でもそれを明かしたくないから黙ってると、やっぱり周りから何やってるんだって言われるじゃん。でもそれは言わなくてもいい。言い訳はしたくないってのがあるから、あんまりね。まあ、いろいろ動いてたのは確かなんですけど。
──なるほど。たぶん一部では「なんか峯田が映画に夢中になってもうバンドやる気ないんじゃねえの」ぐらいに思ってるファンもきっといると思うんですが。そうではないってことですよね?
いや、そう思われてもいいやと思ってる、ずっと(笑)。気持ちはわかるから。俺もバンド組む前はいろんなバンドのファンだったし。何かしら出してないとやっぱり「何してんの?」って感じはあるし、それはしょうがないと思う。でもそれを言ってもさ、やっぱり答えは作品で出さないと。
銀杏BOYZ(ぎんなんぼーいず)
2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo,G)が、当初ソロ名義の「銀杏BOYZ」として活動。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン 中村(G)を加え、2003年5月から本格的に活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年にはメンバー自ら編集に参加したDVD「僕たちは世界を変えることができない」、シングル「あいどんわなだい」「光」をリリース。ボーカル峯田は「アイデン&ティティ」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」など映画出演も多数。