原因は自分にある。「虚像と実像」インタビュー|げんじぶとは何者なのか?2ndアルバムが浮き彫りにする“虚像と実像” (3/4)

“失われた青春”に感情を込めて

──「半分相逢傘」の次に収録されている「灼けゆく青」では、ポエトリーリーディングに初挑戦されています。

長野 これもまたげんじぶらしいというか。ほかのグループだったらなかなかやらないことができて、楽しかったですね。ただ、めちゃめちゃ難しかったです(笑)。

小泉 特にサビは難しいねー! 歌というより、もう演技している感覚でした。

──メロディに乗らない歌詞の表現には、きっと今までにない難しさがありますよね。

桜木 僕は落ちサビを歌わせていただいたんですけど、落ちサビって大事なパートじゃないですか。この曲の“失われた青春”というテーマをどうやって表現したらいいのか考えながら、「塞いで、塞いで、塞いでいた。」という言葉にどんな感情を乗せたらいいのか、すごく考えてレコーディングした記憶があります。

大倉 雅哉はさ、コロナ禍で実際に“青春が失われた”側だからね。

桜木 そうだね。自分もそうですけど、メンバーの中にも“青春が失われた”人はいて。実際に経験した人間が歌うことによって、共感もしてもらいやすいかなって。僕自身、普段よりも曲のことを深く理解できたような感覚があって、しっかりと感情を込めて表現することができたんです。だからこの曲はすごく思い入れがありますし、ぜひ聴いてほしいなと思います。

大倉 この曲は先日イベントで初披露させていただいたんですけど、実際にやってみるとすごく難しくて。メロディ関係なく、歌詞をオケに合わせるさじ加減や感情の入れ具合に苦戦しました。ライブが終わったあとの反省会でも「『灼けゆく青』は難しいね。いつも以上に丁寧にやっていこう」と、みんなの意見が一致したくらい。なので、これからもっともっとブラッシュアップできればと思っているところです。

大倉空人

大倉空人

大倉空人

大倉空人

「げんじぶは7人なんだ」ということが一番強く表現されている

──そのほかの収録曲で、皆さんそれぞれのオススメはありますか?

武藤 僕は「0to1の幻想」です。ライブで盛り上がるような激しめの曲調だけど、歌詞にはアンドロイドとの恋が描かれているんです。じっくり読み込むと「あれ、すごく儚い恋じゃない?」となって面白いんです。そのあたりのギャップを楽しんでくれたらなって。僕らの声にかかったエフェクトもすごくカッコいいので、そこもぜひ聴いてほしいです。

吉澤 僕は「J*O*K*E*R」ですね。歌詞も曲調もダークな雰囲気で、とりあえずワルい!みたいな曲だけど、ステージ映えしそうな華やかさもあるのが好きなんです。めちゃくちゃ攻撃的なのに、パフォーマンスを観ての印象は「楽しい」になると思う。その違和感にワクワクするような曲だと思います。

小泉 「夜夏」にも注目してほしいです。僕的に、この曲は同じく夏の終わりを歌った「Up and Down」と同じ路線かなと思っていて。解釈が難しいので、僕ららしさもちゃんとあっていいなって。難しい単語はそれほど多くないんですけど、全体を通して意味を理解するのが難しい。何回も聴いてもらって、やっと曲の光景が見えてくる曲なんじゃないかなって思います。

長野 僕は最後に収録されている「藍色閃光」を聴いてもらいたいです。この曲は結成3年目に入った僕らの、今までの総括的な曲だなと思っていて。例えば、サビは普段だったら1人ずつ順に歌うことが多いんですけど、この曲ではユニゾンで歌うんです。壮大な曲調の中に、「げんじぶは7人なんだ」ということが一番強く表現されているんですよ。振りも、今までの僕たちの歩みがわかるようなストーリー仕立てになっているし。

──普通に読むと“君と僕”のストーリーがファンタジックに描かれている曲ですけど、げんじぶとファンの関係性に重ねて読み解ける内容でもあって、この曲が最後にある意味は自分もすごく感じました。

大倉 まさしくですね。「手を取り合ってもっといい景色を見に行こう」って。みんなで一丸となって、さらに上を目指していこうという、そんな曲でもあります。

──大きなライブ会場が似合う、スケール感のある曲ですよね。

武藤 おおー。

長野 いいですね。やりたいなあ。

──凌大さんが特に自分たちらしさを感じたフレーズはありましたか?

長野 気に入っているのはサビの「成層圏を貫いて その君の剣で切り裂いて」というところです。ここはまさしく自分たちとファンとの関係というか……コロナ禍で苦しい時期もあったけど、そのときにファンの方にすごく支えてもらったから。ファンの皆さんのおかげで、僕らの未来が明るく開いたような実感があるので、そういう思いに重なるこのパートが好きですね。

長野凌大

長野凌大

長野凌大

長野凌大

虚像と実像はいつだって隣り合わせ

──そうして完成した2ndアルバムには“げんじぶらしい”と言える曲はもちろん、ポエトリーリーディングを取り入れた曲やロックサウンドが特徴的な曲、そして若者のリアルな恋の駆け引きを歌った曲など、新たな一面を見せてくれる楽曲もたくさん収録されました。ただ、そこで改めて「虚像と実像」というタイトルを考えたとき、いったいどれが“げんじぶの実像”なんだろう?と考えてしまって。

杢代 なるほど。

──今までに見せたことのなかった顔が“実像”なのか?と言われると、それも違うんじゃないかなと思ってしまったんです。皆さん自身は、「私たちが見ている『原因は自分にある。』とは何者なのか。」という問いを投げかけられたとき、どんなことを思うのでしょうか。

長野 自分でも、正直わからないんですよ。例えばライブ中も、さっき「“げんじぶの長野凌大”として気持ちを入れることがある」とは言ったけど、演じているようで実は演じていなかったり。自分なんだけど自分じゃないみたいな感覚もあって……だから、虚像と実像って表裏一体だなと思うんです。いつだって隣り合わせで、それでいいのかなって。僕ら自身は“虚像と実像の間”にいて、それが人によって虚像に見えたり、実像に見えたりする。そういう見え方がげんじぶの正しいグループの在り方なのかなと思っています。

武藤 「虚像と実像」では、また新しい“げんじぶらしさ”が表現できたんだと思います。だから、虚像と実像の間に存在している僕たちを楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

小泉 いろんな曲調に挑戦して僕らの可能性が広がったというか、「こういうこともできるんだぞ!」としっかり証明できたと思う。だからこそ、これからも新しいことにどんどん挑戦していきたいなって思えました。

杢代 「多世界解釈」はそれまでに築いてきた“げんじぶらしさ”をさらに押し進めるようなアルバムだったけど、「虚像と実像」は“げんじぶらしさ”をあえてなくした曲が多いから、自分たち自身も「げんじぶなのにこういう感じなんだ、面白いな」と思えたよね。新たな武器がたくさん増えて、これからがますます楽しみになった感じ。

小泉 「新時代を作り上げる“原因”になる」というのが僕らの活動の目的なので、挑戦がないと僕らじゃないなって思うんです。“げんじぶらしさ”という概念さえ捨てていることが、むしろ僕らのコンセプトに合っているアルバムなんじゃないかなとも思う。

吉澤 このアルバムで、僕らの音楽が「ジャンル:げんじぶ」に一歩近付いたのかなって思います。