GARNiDELiAインタビュー|アジア人気急上昇!ニューアルバムで新章突入

SNSやテレビ番組を通して、アジア人気が爆発したGARNiDELiA。1月17日に発売されたニューアルバム「TEN」にはテレビアニメ「うちの師匠はしっぽがない」のオープニングテーマ「幻愛遊戯」、ゲーム「原神」の“2023年原神誕生日応援ソング”「Future Wing」などを含む全13曲が収録された。国外の活動が激増して多忙を極めるMARiA(Vo)とtoku(Compose, Key)は、いかにして本作を完成させたのか。2人に環境の変化や制作スタイルの変化について語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 星野耕作

国際的なお姉さん

──GARNiDELiAはもともと中国で人気というイメージが強かったですけど、MARiAさんが出演した現地のオーディション番組「乗風2023」をきっかけに、現在さらに話題沸騰中だそうですね。

MARiA(Vo) 「こんなことがあるんですねー」みたいな感じです(笑)。もともと中国では「極楽浄土」という曲が広く知られてはいたんですけど、誰が歌っている曲なのかまで把握している人はそんなに多くないという状況がありまして。

──SNSを中心に、いわゆる“踊ってみた”文化の中で広がっていった曲ですからね。

MARiA はい。そこに現地テレビ局の方が目を付けて、「“ご本人登場”みたいな感じで番組に出てみませんか」とお誘いいただいたんですね。もともとは中国国内の人たちだけでやっていた番組なんですけど、私が参加したシーズン4からは国際的なお姉さんを呼ぶというコンセプトに変わりまして……。

toku(Compose, Key) 「国際的なお姉さん」って(笑)。

MARiA ははは。でも、最初はちょっと葛藤もあったんです。何をする番組なのかもよくわかってなかったし、中国語もまったくしゃべれないし。私、英語すら全然しゃべれないんですよ。でもせっかくいただいた大きなチャンスだし、細かいことはやってみてから考えようと思って。

MARiA(Vo)

MARiA(Vo)

──それで思いきって出演してみたところ、大反響だったと。

MARiA 「この曲って、こんな子が歌ってたんだ?」というインパクトを感じてくれたのかなと思います。とにかく反響がすごくて、これまでは中国の中でもどちらかと言うと日本文化が好きな人たちの間だけで認知されていた感じだったんですけど、それが今や知らない人がほぼいないような状態で……街を歩いていてもあちこちに私の看板がドーン!ってあったりするし、ひっきりなしに声もかけられるし(笑)。すごく不思議な感覚ではあります。

toku その番組はネット投票とかもあるんですけど、その数字がぐんぐん伸びていく様子がリアルに見えるんで「すごいなあ」と思って見てましたね。

──そんな中で今年は約4年ぶりのワールドツアーも行ってきたわけですけど、特に中国ではお客さんの反応もだいぶ変わったんじゃないですか?

MARiA 番組出演が決まる前からツアーをやることは決定していたんですけど、中国の会場とかはそれこそ2秒くらいでチケットが完売しちゃうような状況で。「次は大きな会場でやるからね、ごめんね」って感じだったんですけど、中国系の方が多いシンガポールやマレーシアでも波が変わったのをすごく感じました。もともとアジアを中心に活動してきたけど、改めて「ここが私たちの生きる場所だな」という確信を得られたといいますか。

──それはもちろん、日本も含めてですよね。

MARiA もちろんです。ホームと呼べる場所が広がった感覚ですね。アジア全体の市場規模が大きくなったことで、今後は「アジアから世界に」というところを目指したいなと、それが見えるところまで来てるなってのはちょっとあります。……なんつって。

toku ふふふ。

MARiA まあ、夢はでっかく!ってことでね。

──ちなみに前回のインタビュー(参照:GARNiDELiAインタビュー|「春よ、来い」から「若者のすべて」まで、新旧J-POPをカバーしてみてわかったこと)がツアー直前くらいのタイミングで、MARiAさんは「ツアーってどんなんだっけ?」とおっしゃっていました。

MARiA あ、そうでした! 確かにそういう状態からでしたよ。

toku そういう意味では、今はむしろコロナ禍前よりもお客さんの声が聞こえてくる感覚はありますね。

toku(Compose, Key)

toku(Compose, Key)

MARiA そうだね。以前よりも一体感のあるライブになってる。だから「戻ってきた」ではなくて、新しい世界が作り上げられている感じがすごくします。前がどんなんだったか忘れちゃってるってのもあるけど(笑)。しかも、なんか平和になった気がする。

toku 平和(笑)。

MARiA なんて言うんだろうな……「楽しませてくれるんでしょ?」って他人事みたいに観るんじゃなくて、お客さんがみんな能動的に楽しもうとしているのが伝わってくるんですよ。それはやっぱり、当たり前にライブが行われて当たり前にチケットが買えるという状況が決して当たり前のことではない、ってみんなが認識したからだと思うんですよね。1回1回を大事にしようという気持ちがお客さん側に強くあって、それは演者側にも当然あるから、その気持ちがひとつになっている。それによって、今まで生まれなかった種類の感動が生まれている気がしていて。

toku ライブという場が当たり前のものではなく、特別な空間なんだということを再認識してもらえてるのかなと。

MARiA だから今が一番楽しい。それはうちらだけじゃなくて、思うようにライブができない苦しみを乗り越えてきたアーティストはみんな感じてることだと思う。アーティスト側も強くなったし、ともに困難を乗り越えてきたお客さんたちもめちゃめちゃ強くなってるから、ライブをやっていると「音楽ってマジこれだわ」っていう、忘れかけていたものを取り戻した感覚になるんですよ。

GARNiDELiA

GARNiDELiA

なかなか家に帰れなかった

──そういった経験を経たからなのか、ニューアルバム「TEN」は根源的な音楽の喜びに満ちた作品という印象を受けました。「そもそも自分たちが音楽をやる理由って、これだよね」みたいな思いを感じさせてくれる音というか。

MARiA おおー、うれしい。ありがとうございます。

──というか、これだけ多忙を極めている中でいったいいつアルバムを作っていたんですか?

toku ワールドツアーと並行してアルバム制作も進めていたんですけど、その合間に中国の番組に出たりもしていたわけですからね。改めて振り返ってみると、よくできたなあと(笑)。

MARiA いやホント、死ぬかと思いました(笑)。1曲目の「―TEN―」なんてツアー中もツアー中、上海公演の楽屋で作ってましたから。あの印象的なイントロのシンセフレーズをtokuが本番前の楽屋で思いついて、その場で一気にメロディと大まかな流れまで作ってくれて。そういう作り方をしたこともあって、めっちゃ勢いのあるアルバムになったと思います。

MARiA(Vo)

MARiA(Vo)

toku うん。今までは自宅で作業することがほとんどで、家にあるアナログ機材とかも使いながらじっくり作る感じだったんですけど、今回はなかなか家に帰れなかったから、“ノートパソコン1台でどこまでやりきれるか選手権”みたいになってました(笑)。いつも使ってる機材の代わりになるプラグインを出先で探してダウンロードして即使う、みたいなこともしょっちゅうしてましたね。常に「ネットどこ?」って探してたような気がします(笑)。

MARiA 移動中の空港のラウンジとかで一生懸命ダウンロードしてたよね。

toku そんなふうに制作環境が今までとずいぶん違う感じだったんで、それが勢いにつながった部分もあると思います。粗削りではあるけど、そういうのもアリかなって。最終的にマスタリングでまとまればいいか、みたいな……まあ、それは毎回そうなんですけど(笑)。

──今作はいつになくエッジの効いたサウンドになっている印象を受けたんですけど、それは作り方の違いによるところが大きいわけですか?

MARiA それもあるし、あとは海外のフェスに出させてもらう機会が増えたことも影響してるかな。海外のアーティストが出す音って、日本の音の作り方とは全然違うんですよ。そういうところから刺激を受けた部分もあるし、うちらがどこを目指していくのかを考えたときに「日本だけじゃなく、もっと広いところを見据えていく」となると、やっぱりサウンド感にはエッジを効かせたいよねという思いがあって。

toku 向こうの人たちは低音がすごいんですよ(笑)。それが日本の場合は……日本というか、特にアニソンとかになってくると主にテレビで聴かれることになるから、どんなに低音を鳴らしたところで視聴者には聴こえないわけです。そういうリスニング環境を前提とした、日本のテンモニ(YAMAHA NS-10M。スタジオモニターの定番機)が培った音場環境というのは、ある意味では音楽制作に特殊な制限を課すものではあるんですよね。

toku(Compose, Key)

toku(Compose, Key)

MARiA もちろん、それにはそれのよさがあるんだけどね。

toku うん。

MARiA 今の自分たちは、その“テレビの画面越しで伝える”というところを超えた地点に来ていると思っていて。それより“どれだけ音で殴れるか”みたいな。

toku ははは。

MARiA というのも、自分たちが何をやってもみんながついてきてくれるという確信を得られたからなんですよ。みんなのことを信じられるようになった。「こういう音にしないと、きっと好きになってくれませんよね?」じゃなくて、「この音でいきますね! ほら、いいでしょ?」という考え方に変わってきたんです。

──まさに、それが先ほど言った“根源的な音楽の喜び”を感じる部分なんですよね。低音の出し方もそうですし、ドラムパターンの入り方なんかもJ-POPやアニソンの文法にはないものが多くて、素直に好きな音を鳴らす喜びが至るところに感じられる。

MARiA まあ、考える時間がなかったっていうのもありますけどね(笑)。とりあえず出したい音を出して、できたものをとりあえず出す!みたいな。

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