tokuとメイリアの強固な合体感

──2曲目の「SPEED STAR」は、以前のガルニデの代名詞でもあったマイナーコード主体のアップテンポなデジロックナンバー。で、続く「Jesus」も同じ路線です。

メイリア　はい。これは、tokuのルーツになってるサウンドですね。

toku　まあ、わりとゴリゴリしたバンドサウンドで、かつ冒頭のシンセのリフをずっと鳴らしたいと言うか「これさえ鳴ってればいい！」くらいのノリで（笑）。やっぱりこういうのも好きだし、勢いで書けちゃったから、歌詞も含めて過去最速でできた曲だよね。

メイリア　うん。詞もめっちゃノリノリで書けちゃったので。

──「ノリノリ」とおっしゃるわりには、「Jesus」の歌詞は一言で言って絶望的ですよね。「Cry」（2ndアルバム「Violet Cry」に収録）ばりの、救いのないラブソングで（参照：GARNiDELiA「Violet Cry」インタビュー）。

メイリア　確かに（笑）。ひさしぶりにダークサイドに落ちちゃってるんですけど、「Jesus」は、作詞をする前に初めてtokuに「どんなテーマの曲にしたい？」って聞いたんですよね。

toku　それまでは曲から受けるイメージを詞にしてくれてたんですけど、なぜか今回に限ってね。

メイリア　そしたらtokuが「ちょっと中二っぽい感じで」みたいなことを言ってきて。あと、私はビジュアルをイメージして作詞することも多いんですけど、今回の「G.R.N.D.」のジャケットの衣装で歌ってる私の姿を想像した結果、ものすごく救いを求めてるのに救われない、ただただ悲しく終わっていく歌になりました。

──救われなさすぎて、神様に文句を言うっていう。

メイリア　そうそう。この歌では恋愛に置き換えて書いてます。でも、私も大人になって、いくら願っても叶わないことがあるってことも理解してます（笑）。

toku　現実は厳しいよねって。

メイリア　もちろん、叶わないとしても、あきらめなければ別の答えにたどり着くことがあるということもこのアルバムを通して歌ってはいるんですけど。

──今回のアルバムは、メイリアさんの歌詞もとてもいいですよね。

メイリア　うれしい。

toku　僕もそう思います。このアルバムでは、メイリアの作詞における成長もすごく大きくて。今まで以上に歌詞が生きていると言うか、音に負けてない。やっぱりガルニデの曲は僕の曲とメイリアの詞が合体したものでもあるし、今回のアルバムではその合体感みたいなものが一層強まったんじゃないかなと思います。

アゲっぱなしのHeavygrinderとのコラボ

──続いて、マイナーアップの手法をダンスに落とし込んだ高速ダンスナンバー「Hysteric Bullet」を挟んで、5曲目はロサンゼルスのDJユニット・Heavygrinderと再びコラボした「Poppin'Trip -GARNiDELiA vs HEAVYGRINDER-」。前回のコラボ曲「BAD BOY」（アルバム「Violet Cry」に収録）はメロウなパートから徐々に盛り上げていくダブステップでしたが、こちらは……。

メイリア　最初っから最後まで全開ですね。アゲっぱなし。

toku　Heavygrinderは2人組なんですけど、その1人のキャットファイヤーくんがソロで出してる「Coffee Time」という曲があって、それとガルニデがコラボしたような曲にしたいっていうオファーを最初に出して。それから僕がトラックをひと通り作って彼に投げて「あとは好き勝手によろしく！」みたいな感じで。

──わりと雑（笑）。

toku　「戻ってきたデータでやりとりしよう」って話はしてたんですけど、ほぼほぼ一発OKだった。だいたいFacebookの音声チャットで「イエーイ！」とか「最高だぜー！」って騒いでただけっていう。

メイリア　最初のテイクが届いたとき、まず私たちがブチアガったからね。

toku　特に低音のスピード感が異常で。マスタリングのキムケンさんとも「この低音のコンプのうまさヤバいね」って盛り上がって。

メイリア　ちょうど、今日あたりHeavygrinderは日本に来るんだよね（※本インタビューは2月下旬に実施）。

toku　そう、明後日一緒にメシを食うことになってるんですけど、そこにキムケンさんも同席するっていう（笑）。

メイリア　どうやって低音を作ってるのか探るために（笑）。

──そんな「Poppin'Trip」の歌詞は、これは褒め言葉なんですけど、最高に空っぽですよね。

メイリア・toku　あははは！（笑）

──ある意味、めちゃくちゃ正しいダンスナンバーの歌詞なんじゃないかと。ほぼ「ハメ外して騒げ」しか言ってない。

メイリア　もう、おバカさんになってね。難しいこと言われたら踊れなくなっちゃいますから。生きてればつらいこともたくさんあるけれど、今日くらいは全部忘れて踊っちゃえっていう。

“中国を意識した”踊っちゃってみた「桃源恋歌」「紅葉愛唄」

──そこからガルニデとしては異端な超ポップなナンバー「アイコトバ」を経て、「踊っちゃってみた」シリーズの“中国を意識した”ともいえる2曲、「桃源恋歌」と「紅葉愛唄（くれはいとしうた）」が続きます。

メイリア　私たちは「踊っちゃってみた」シリーズ第4弾の「極楽浄土」をきっかけに中国の皆さんからも応援していだけるようになって、「桃源恋歌」はその感謝の気持ちを込めて作ったんです（参照：GARNiDELiA「SPEED STAR」インタビュー）。一方の「紅葉愛唄」は、中国のIT企業・テンセントが作っているアプリゲーム「王者栄耀」に登場する公孫離ちゃんという女の子のイメージソングを作ってほしいというオファーを受けて書いた曲なんですよ。

──「紅葉愛唄」の歌詞は、離れ離れになってしまった幼なじみを慕い続けるというものですね。

メイリア　はい。その公孫離ちゃんというキャラクターに、愛しい人と離れ離れになってしまうという設定があって。それと、彼女がもみじをモチーフにした衣装を着ているので、「離れ離れ」と「もみじ」というキーワードから妄想を膨らませてストーリー仕立てにしました。ただ、歌詞の中にもみじをどうやって入れようか、すごく悩んだんですよ。

toku　「もみじ」って言葉に出して歌っちゃうと、ものすごく日本の紅葉をイメージさせてしまうんです。

メイリア　最終的に、紅葉を「くれは」と読むことでなんとか完成させたっていう。だから、かなり計算して作り込んだ楽曲ですね。tokuの作曲にしても、「桃源恋歌」で使ったメロディをあえてサビに組み込んだりして。2人ともかなり悩んだよね、この曲は。

toku　うん。「紅葉愛唄」は、最初はもっとテンポが速かったんですけど、メイリアの歌詞をきれいに聴かせるにはもうちょっと落としたほうがいいかなとか試行錯誤を繰り返して。

──アレンジ面では、「桃源恋歌」も「紅葉愛唄」も、二胡の音色が効いてます。

toku　この音色、持っていかれますよね。やはり伝統楽器は強い。2曲ともKiRiKoちゃんという若手の二胡奏者にお願いしているんですけど、びっくりするくらい完璧に弾きこなしてくれました。

──「紅葉愛唄」には琴も使われてますよね？

toku　はい。ただ、本物の古琴の生演奏を入れるのは現実的に難しかったので、それに近い音を探していたところ、その名も「Nagoya Harp」という、大正琴のサンプル音源がちょうどリリースされていて。これが本当に素晴らしい音色だったんです。

──めちゃくちゃニッチなサンプルですね。

toku　「誰が買うんだろう？ はっ、俺か！」みたいな（笑）。