音楽ナタリー Power Push - GARNiDELiA

哀情の青、熱情の赤 2つが融合した「Violet Cry」

ダンスナンバーのサウンドは私を強気にさせる

──歌詞の話を続けると、このアルバムには女性の気持ちを歌った曲がいくつか収録されていますが、「どれが本物のメイリアさんなんだろう?」と思ってしまいます。例えば1曲目の「EXXXTASY」は今の「Cry」とは対照的な、非常に官能的な本能に忠実な女性の歌ですよね。

メイリア そうですね(笑)。こういうダンスナンバーの歌詞は、サウンドに引っ張ってもらう形で強めの女性像ができあがることが多いんですよ。「このサウンドに乗せてなら、こんなことも言えちゃう」みたいな。

toku 音を着こなす感じっていうのかな。

メイリア うん。ファッションとちょっと似てるかも。おしゃれやメイクをすることで自分をより美しく見せたり、変身願望を叶えたり。逆に、ロックのサウンドに乗せる歌詞は、わりと常日頃思ってることだったり、世の中に対する不満みたいなものが表れていると思います。

──なるほど。例えば2曲目のデジロックナンバー「REAL」の歌詞は、乱暴に要約すれば「現実を疑え!」ということだと思われますが、メイリアさんご自身もそういうことを普段考えている?

メイリア まあ、今はテレビを観てても何が嘘で何が本当なのかわからないし、ネット上でも不確かな情報が拡散されたりする世の中じゃないですか。それに対して思うところももちろんあるし、私たち自身も「なんのために音楽やってるんだ?」みたいになるときもあるし。あと、信じられるファンがいる一方で、信じられない大人がいたりとか(笑)。

──生々しいですね。

メイリア そうやって迷ったときの自分の感情を表してるのが「REAL」ですね。結局、何を信じていいかわからないなら、自分のやりたいことを信じるしかないじゃないっていう。言いたいことはとてもシンプルなんですけど。

──でも、それを現実にやってきたのがお二人なわけですもんね。ネットに音源を投稿するという、いわば勝算も何もないところから活動をスタートさせていますし。

toku そうかもしれないですね。

メイリア だからこそ生まれた歌詞だと思います。

飲み友達にラッパを吹いてもらった

──アルバム収録曲に話を戻すと、シングル「約束 -Promise code-」のカップリング曲である和風のダンスチューン「極楽浄土」を挟んで、9曲目の「NEON NIGHT」はシャッフルビートにキレのあるホーンと艶っぽいボーカルが乗った、アーバンなダンスナンバーです。

メイリア アダルトな感じを目指して作りました。

toku 歌とラッパ以外は全部打ち込みにして無機質な雰囲気を出すことで、その歌とラッパがより有機的に浮かび上がるように、おっしゃる通り艶っぽくなるように作ってみました。

──ホーンセクションはカルメラのメンバーが担当されていますが、どういうつながりで?

toku 飲み友達です(笑)。

メイリア ミュージシャンが集まる飲み会でお会いしたんですけど、それがライブバーみたいなお店でね。

toku そこで彼らが飛び入りで即興演奏したりしてたんですけど、めちゃくちゃカッコよくて。「絶対一緒に何かやろうね」みたいな口約束をして、今回実現したという。

「変な音が入ってるよ?」って言われたい

──先ほど言ったように「NEON NIGHT」はとてもアーバンな曲なんですけど、バックではグズグズにディストーションをかけた、ほとんどノイズのようなシンセが鳴っていて、思わず「何でこんな音入れたんだろう?」って(笑)。

メイリア いつもそうですよね。「tokuさん、何してんすか?」ってなる(笑)。

toku 最近、楽曲に対する「不思議だね」「変だね」っていう感想を、自分の中では褒め言葉に変換するようにしてて(笑)。

メイリア 「変な音が入ってるよ?」みたいに言われたいんだ。

toku そう。「でも、これが世に出せちゃうのはすごいですね」みたいな。そう言ってもらえるとミュージシャン冥利に尽きるというか。何か引っかかりのあるものを作らないといけないと思いながらやってると、こういう変な音もたまには入れてもいいかなという気がしちゃうんですよ。

GARNiDELiA

──歌詞に目を移すと、「NEON NIGHT」で描かれた女性は「EXXXTASY」とは違う意味で強気な女性ですね。

メイリア 「NEON NIGHT」は束縛からの解放をテーマにしていて、ガチガチに縛られていた女性が華やかな夜の世界に羽ばたいていくようなイメージですね。

──ちょっと耳が痛いですね。「あんまり夜遊びしないでよ」みたいなことを言いたくなっちゃう男としては。

メイリア そのくらいだったらまだいいんですけど、もう完全に丸め込まれてちゃってるようなかわいそうな女子もいますから。そういう子が、もがきながらも強く成長していく様子を描きたかったというのもあります。

友達の恋愛相談も歌詞のネタに

──この「NEON NIGHT」から次の「BAD BOY -GARNiDELiA vs HEAVYGRINDER-」、さらにその次の「My little happiness」でダンスゾーンを形成しているわけですが、この流れは歌詞的にもなかなかヤバイですよね。

メイリア 私もそう思います。

──つまり、「NEON NIGHT」で束縛から解き放たれんとする女性を描いたかと思えば、「BAD BOY」では悪い男にどハマりしてる女性を描いている。

メイリア 悪い男ってわかってるのに好きで、逃れられない。でも、1人の女性の中にも感情の移ろいや起伏があるし、1人の男性と付き合っていてたとしても、長く付き合っていればいろいろあるわけじゃないですか。だから、そう捉えてください(笑)。

toku このアルバムはいろんな“感情の解放”の詰め合わせだからね。

メイリア そう。友達の恋愛相談が作詞のヒントになることもあるし、さっきの「Cry」にも友達の実体験が一部反映されてます。だから私の周りの友達にネタを提供してもらってる感は否めないんですけど、そうすることで自分にはない視点が得られたりするんですよね。そういう別の視点がみんなのさらなる共感を呼ぶのであれば、それは取り入れるべきかなと。

──作曲面においては、「BAD BOY」はLAを拠点に活動するDJユニット、HeavygrinderとコラボレーションしたEDMナンバーです。

toku Heavygrinderとはアトランタのイベントで知り合って意気投合したというか。YouTubeにアップされてる曲をその場で聴かせてもらって、「いいね、僕らもこういうのやりたいからコラボしよう」と。楽曲に関しては、大枠は僕が作って、主にドロップ周りを彼らに肉付けしてもらった感じです。

──この曲は、「極楽浄土」と対比させると面白いなと思ったんですよね。「極楽浄土」は和のエッセンスを土台にしたEDMで、「BAD BOY」は洋楽志向のEDMなので。

メイリア 「BAD BOY」は使われてる音色が「ホンモノだー」って感じですもんね。そりゃ本場の人ですから当たり前なんですけど。

2ndアルバム「Violet Cry」 / 2016年12月14日発売 / SME Records
初回生産限定盤A [CD+Blu-ray] / 3980円 / SECL-2087~8
初回限定盤B [CD+DVD] / 3580円 / SECL-2089~90
通常盤 [CD] / 3100円 / SECL-2091
CD収録曲
  1. EXXXTASY
  2. REAL
  3. 約束 -Promise code-
  4. Burning Soul
  5. LIFE
  6. 祈りの歌
  7. Cry
  8. 極楽浄土
  9. NEON NIGHT
  10. BAD BOY -GARNiDELiA vs HEAVYGRINDER-
  11. My little happiness
  12. 変わらないモノ
  13. MIRAI
初回限定盤A Blu-ray収録内容
  • 「Cry」Music Video
  • 「約束 -Promise code-」Music Video
  • 「MIRAI」Music Video

<stellacage vol.III @ TOYOSU PIT 2015.11.7>

  • True High
  • Steps
  • PiNK CAT
初回限定盤B DVD収録内容
  • 「Cry」Music Video
  • 「約束 -Promise code-」Music Video
  • 「MIRAI」Music Video

<特典映像>

  • 「紫苑」リリックビデオ
  • メイキング映像
  • 「MIRAI」ショートフィルム
GARNiDELiA(ガルニデリア)

モデルとしても活躍するメイリア(Vo)と、アンジェラ・アキ、LiSAらのアレンジャー、ボカロP「とく」などの横顔を持つtoku(Key, Compose)からなるユニット。2010年に別名でオリジナル曲「ARiA」を動画共有サイトに投稿し、同年アニメ「フリージング」オープニングテーマ「COLOR」を発表したのと前後して、ユニット結成を宣言する。以来ハードロック由来のヌケのいいギターロックから、ダンスミュージック、ピアノ1台と歌で聴かせるバラードまで幅広い楽曲群をネットで発表する一方で、2010年末にはミニアルバム「ONE」をインディーズで発表。2014年3月、アニメ「キルラキル」の後期オープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューする。その後、数多くのアニメソングのテーマ曲を手がけ、2015年1月にメジャー1stアルバム「Linkage Ring」を、8月にはインディーズ時代の楽曲を集めたベストアルバム「BiRTHiA」を発表した。2016年8月に表題曲がアニメ「クオリディア・コード」のエンディングテーマに採用されたシングル「約束 -Promise code-」、12月に2ndフルアルバム「Violet Cry」をリリース。