昔のGalileo Galileiを今の自分たちがプロデュースするなら?“高純度”の再録アルバム「BLUE」完成 (2/2)

くるり「ロックンロール」に憧れた頃の気持ちで

──アルバム「BLUE」のリード曲は、新曲「あおにもどる」です。どうして新曲を入れようと思ったんですか?

雄貴 さっきも言いましたけど、このアルバムは「当時の自分たちをプロデュースするとしたら?」と考えながら制作していて。10代の頃、とにかく僕はくるりが大好きだったんですよ。コピーバンドをやってたくらい。特に「ロックンロール」(2004年発表のシングル)は僕にとって特別で。バンドを組んで、「ロックンロール」みたいな曲を作って、ミュージックビデオを撮って……というのが憧れだった。その頃の気持ちをもう1回取り戻したいなと思って、メンバーと一緒に音を合わせながら“せーの”で作ったのが「あおにもどる」です。作ってるときもMVを撮るときの動き方まで考えてました。「ここで岩井くんが前に出て、岡崎くんが下がって……」と。

──くるりの「ロックンロール」のMVのように(笑)。

雄貴 はい(笑)。僕らのスタート地点は“憧れ”だったし、バンドや音楽業界に対してキラキラしたイメージがあって。そこに戻るような感覚もありました。

岩井 もともと俺らはリード曲を決めたくないんですよ。アルバムを聴いてほしいのでシングルを出すのもあまり好きじゃないんですけど、雄貴は「誰にもいい曲だと言われなくても、俺はこの曲がいいと思ってる、という曲をたまに書けるんだよね」と言っていて。「あおにもどる」はそういう曲が書けたという実感があるんだろうなと。

岩井郁人(G)

岩井郁人(G)

雄貴 「あおにもどる」は確かに特別な曲ですね、個人的に。たまにそういう曲ができるんですよ。BBHFも含めて何曲かあるんだけど、ファンにはあまり人気がなかったりします(笑)。

──和樹さんは「あおにもどる」のレコーディングはいかがでしたか?

和樹 クリストファー(・マグワイア。「ロックンロール」発表時期のくるりのドラマー)みたいにシンバルをめっちゃ高い位置にセッティングしてました(笑)。ドラムを始めて最初に憧れた存在がクリストファーなんですよ。

雄貴 シンバルが高いから、スネアを叩くタイミングがちょっとだけ遅れるんですよ。それがクリストファーのドラムに特徴を持たせているはずだ、みたいな話は昔からずっとしてて。

岩井 あと、和樹は新しい機材も導入したよね。

和樹 V-Drums(ローランド社の電子ドラム)を買いました!

尾崎和樹(Dr)

尾崎和樹(Dr)

岩井 電子ドラムをメインにして、スネアやシンバルだけ生にしたり。いろいろ試してました。

和樹 (「ロックンロール」がリリースされた)当時っぽい感じを意識して。

雄貴 僕らキリンジも好きなんですけど、当時のキリンジって「これ、絶対生ドラムだな」と思ったら、実は打ち込みだったりするんですよ。和樹がレコーディング秘話を調べたり、みんなで「どうやってこんなドラムの音を作ったんだろう?」と話したり。そういう憧れや興味を今も持ち続けているのはすごく楽しいですね。「『ロックンロール』みたいな曲、やりてえ」って10代のバンドの発想ですけど(笑)、それが自分たちのリアルでもあるので。

岡崎 「あおにもどる」はアウトロも聴きどころで。けっこう長めに取ってあるんですけど、演奏がかなりフリーダムで、しかも一発録りなんです。

岩井 「2テイクまでね」と言ってたよね。

岡崎 全員30代ですけど、それなりに人生経験を重ねてきた中で、“青さ”を持ちながら初期衝動的な演奏ができるのがすごく面白いなって。

岡崎真輝(B)

岡崎真輝(B)

雄貴 サブスクの時代だからこそ、「アウトロがカッコいい」と感じてもらえる曲は特別だと思うんですよね。「ロックンロール」もまさにそうだし。

ずっと“ワクワクする闇の中”にいる

岩井 歌詞のことで言うと、冒頭の「あおのなかには いない」が僕の中では衝撃的でした。

雄貴 そう、“あおのなか”にはいないんですよ。青春と呼ばれる時代があるとしても、その渦中にいるときは「俺、今が青春だな」とは思わない気がするんです。あとで振り返って「あれが青春だったのかな」と思うものというか。Galileo Galileiの作品には“青”という言葉がよく出てくるし、大事なテーマではあるけど、僕ら自身はその中にいない。「Sea and The Darkness」というアルバムでも歌ってますけど、ずっと闇の中にいると思ってるんですよ。

──闇の中、ですか。

雄貴 はい。今もそうです。どんなに楽しくても、僕らはずっと闇の中にいるし、それはこれからも変わらない。その感覚を改めて歌いたかったし、Galileo Galileiに対して僕が感じていること、もっと言えば僕自身のテーマソングでもあるなと思っています。あと、闇は別に嫌いじゃないんですよ。

尾崎雄貴(Vo, G)

尾崎雄貴(Vo, G)

岩井 暗いところってワクワクするしね(笑)。

雄貴 そうそう(笑)。ウザいくらい明るいよりも、真っ暗で先が見えないほうが冒険心が出てくるので。

──「あおにもどる」のMVは稚内で撮影したそうですね。

雄貴 はい。すごくよかったです。バンドにとっても、ピュアになれるタイミングだったというか。カメラマンと5人で行ったんですけど、「ワチャワチャ楽しむから、撮って」みたいな感じで。編集も楽しかったですね。遊びで撮った映像を見てる気分でした(笑)。

岡崎 自分の中で「あおにもどる」を聴くと、稚内の景色しか見えなくて。リスナーの人たちも、それぞれの故郷や懐かしい顔を思い出せるような曲になったらいいなと思ってます。

いい曲、いい演奏、いい照明をただただ浴びてほしい

──そして3月15日には、東京ガーデンシアターでワンマンライブ「Galileo Galilei “あおにもどる”」が行われます。2022年の再始動後、最大規模の会場になりますが、どんなライブにしたいと思っていますか?

岩井 ……演劇?(笑)

雄貴 演劇だけはやらない(笑)。めっちゃバカなこと言っちゃいますけど、いい曲、いい演奏、いい照明をただただ浴びてほしいですね。すごくシンプルに、いいライブをやるので。

岩井 これまでのライブで、一番言うことがないかも(笑)。「BLUE」を作っているときも「いい音楽、いい演奏をいい音で録る」ということだけを考えていて。さっきも言いましたけど、「こんなこともできるんだぜ」とポテンシャルを見せるとか、そういうことではなかったんですよ。ダイヤモンドの純度を高めるようにアルバムを作っていたので、次のライブもそうなっていくと思ってます。

和樹 Galileo Galileiをより深く知れるライブになるんじゃないかなと思います。

岡崎 「あおにもどる」のMVを撮ったことで、バンドの演奏が変わってきたと個人的には感じていて。ガーデンシアターのライブでも、それが出てくると思います。「Tour M」とも、その前のツアーとも違った演奏感になるんじゃないかなと。

岩井 今までで一番グルーヴしそうだよね。あと、大きいステージに立つワクワク感ももちろんあって。メンバーと一緒に「BLUE」を作って、それを大きいところで鳴らしたいと純粋に思ってるんですよ。すごくバンドらしいライブになるんじゃないかな。

雄貴 デカい会場だからって、それっぽいライブするという流れにはならない気がしていて。特別なミスマッチが生まれる予感がしています。まあ、あんまり構えず、「どんなもんよ?」という感じで来てほしいですね、今回のライブは。「今のGalileo Galilei、どんな感じ?」「なるほど、こういうことか」って気軽に楽しんでほしいです。

Galileo Galilei

Galileo Galilei

公演情報

Galileo Galilei “あおにもどる”

  • 2025年3月15日(土)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)

尾崎雄貴(Vo, G)、尾崎和樹(Dr)らを中心に2007年に北海道・稚内にて結成されたロックバンド。2008年の「閃光ライオット」でグランプリを獲得し、2010年にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビュー。透明感のある美しいメロディと心に響く繊細な歌詞で国内外から支持を集める。ヒット曲に「夏空」「青い栞」「サークルゲーム」など。2016年、東京・日本武道館でのライブをもって活動に終止符を打つが、2022年10月に尾崎雄貴、尾崎和樹、岡崎真輝(B)、初期メンバー岩井郁人(G)の4人による新体制での活動再開を発表。アルバムの2枚同時発売、演劇を取り入れたライブツアーの開催など、コンスタントかつ挑戦的な活動を展開している。2025年3月に新曲を含む再録アルバム「BLUE」を発表。同月に東京・東京ガーデンシアターでワンマンライブを実施する。