藤田麻衣子|キャリア初のカバーアルバムで出会った“シンガー”としての自分

藤田麻衣子がキャリア初となるカバーアルバム「惚れ歌」を9月19日にリリースした。

本作にはCHAGE and ASKA「SAY YES」や槇原敬之「もう恋なんてしない」、山崎まさよし「One more time, One more chance」、ポルノグラフィティ「サウダージ」、竹内まりや「シングル・アゲイン」、中島美嘉「雪の華」など、藤田が愛し、影響を受けてきたという名曲のカバー10編を収録。さらに2013年にリリースされ、今では結婚式の定番ソングとして注目される自身のオリジナル曲「手紙~愛するあなたへ~」のセルフカバーも収められている。

「今まで出会ったことのない自分に出会ってみたかった」という藤田は、本作の制作を通して何を見出したのか? 来年5月には本作を引っ提げて2度目のオーケストラコンサートを開催することも決まった彼女にじっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 星野耕作

活動してきて初めて“吸収”したいなと思った

──今回、キャリア初のカバーアルバムを出そうと思った経緯から聞かせてください。

藤田麻衣子

はい。私はメジャーに来てから3枚目、CDデビューから数えると8枚目のアルバム「思い続ければ」を今年1月に出したんですけど、あの作品には今の自分ができること、今の自分が出せるものをしっかり詰め込むことができたと思っていて。ある意味、出し切った感があったんです。今までであれば「次のアルバムにはこの曲を入れようかな」とかすぐに先のことも思い描けていたんだけど、今回はそういうイメージがあまり湧かなかったと言うか。ストックを含め、まだ世に出していない曲は何十曲とあるけど、それをまとめてアルバムにしたとしても「思い続ければ」を超える作品はできないかもしれないなって。だからちょっと“吸収”したいなと思ったんですよ。“休憩”ではなく“吸収”を。今まで活動してきて初めてそう思ったんですよね。

──なるほど。その“吸収”のために藤田さんが選んだのがカバーだったんですね。

そうなんです。去年、カバーだけで構成したファンクラブライブをやったんですけど、そこですごく新鮮な気持ちが味わえたことを思い出して。シンガーソングライターとして活動をしていると、歌声よりは歌詞や曲について感想をもらえることが多いんですよ。でもそのカバーライブでは歌声についての意見がすごく多かった。それが新鮮だったんです。しかも、そのときにカバーしたのは本当に素敵な曲ばかりだったので、自分としてもめちゃくちゃときめいたんですよね。私は常にときめきを求めているタイプなので(笑)、じゃあここでちょっとカバーアルバムを出してみるのもいいんじゃないかなと思ったんです。そんな思いを周りのスタッフに話したら、みんなの反応も意外とよくって。

──じゃ、スムーズに制作がスタートしたと。

ただ、私の中にいくつか考えがあったんですよ。昨年のオーケストラライブで音楽監督を務めてくださった羽毛田丈史さんのピアノが私はすごく好きなんです。なので、羽毛田さんのピアノをメインとしてカバーアルバムを作りたいと思ったんですよね。さらに、カバーアルバムを出すことができたら、それを持ってオーケストラコンサートもやりたいなって。それらがすべて実現するのであれば、初めてのカバーアルバムにトライしてみたいですって言わせてもらったんです。それが今年の始めくらいかな。

──結果、羽毛田さんの参加と来年5月のオーケストラコンサートが無事決まったわけですね。

はい。私の中にあったビジョンが具体的な形になることが決まったので、そこからはもうワクワクしかなかったというか。吸収したいという私の願いも含めて、全部叶えられそうだぞ、楽しみだぞと。

自分の中で2回好きになった曲をメインに

──カバーをする曲に関してはどうやって決めていったんですか?

ファンクラブのカバーライブでは、自分が子供の頃に聴いて好きになった90年代の曲がたまたま多かったんですよ。でも今回は、子供の頃に聴いて好きになって、さらに大人になってからもう一度共感し直した曲……要は自分の中で2回好きになった曲をメインにするのがいいかなと思ったんですよね。候補は30曲くらいあって、それぞれ1コーラスを私が弾き語りしたものをスタッフや羽毛田さんに聴いてもらって選んでいきました。私的に絶対マストだなって思うものもあったし、周りの方々から「この曲は藤田さんの声に合いそうだよね」って言ってもらえたことで「あ、そう?」ってその気になって選んだものもありましたね(笑)。もちろんすべて大好きな曲ばかりなんですけど。

──タイトル通り、藤田さんが惚れ込んだ曲たちなわけですよね。

はい。惚れ込んで、自分に影響を与えてくれたものばかり。今回選んだ歌たちは歌詞も本当に素晴らしくって、何十回読んでもときめいちゃいますからね。

藤田麻衣子

──アルバムには10曲のカバー曲が収録されていますが、その中で藤田さんとして絶対外せないマストだった曲というと?

マストは「SAY YES」と「もう恋なんてしない」かな。あと去年のカバーライブでも歌った「部屋とYシャツと私」も最初から絶対入れようと思ってました。「SAY YES」に関してはもう怪物曲じゃないですか! 売れた枚数もすごいけど、やっぱり歌詞がほんとにすごいなって思うんですよね。子供の頃はそこまで意識していなかったけど、大人になってから聴くとそこに書かれていることが素敵すぎて。こんなこと言ってくれる男性はなかなかいないよなあって(笑)。

──「部屋とYシャツと私」と「もう恋なんてしない」にはどんな思い入れがあります?

「部屋とYシャツと私」は何度聴いても思わず泣いてしまう曲で。改めて今回のアルバムでも歌いたいなって思いました。槇原敬之さんの曲に関しては、やっぱり歌詞に惚れているところが大きいですね。歌詞をまとめた「うたのきろく」という本をずっと読み続けているくらい大好きなんです。これまでラジオなんかで何曲かカバーさせていただいたこともあるので、今回のアルバムではどの曲にしようかかなり悩んだんですけど、「もう恋なんてしない」にしました。私にとって初めて買ったCDでもあるので。

──スタッフや羽毛田さんからの推薦で収録が決まった曲はどれになりますか?

羽毛田さんが私の第一声を聴いて「これは入れよう」って言ってくださったのは「One more time, One more chance」でした。男性陣からの評判がよかったですね。私としても大好きな曲だったから、こっそり「決まったらいいな」とは思ってたんですよ。でも自分に合う曲なのかどうかの判断ができかねていたので、皆さんが背中を押してくれたのはすごくうれしかったです。

──今回カバーした楽曲群を眺めてみて、藤田さんが惚れる歌に何か傾向ってありそうですかね?

圧倒的にバラードが多いなって思います。自分のオリジナルアルバムだったらもうちょっと全体的なバランスを考えたとは思うんですけど、今回はカバーだし、「全部バラードでもいいよね」みたいな感じで、とにかく好きな曲ばかりを入れていったんですよね。なんなら原曲よりもテンポを落としたアレンジになっているものも多いですし。

藤田麻衣子「惚れ歌」
2018年9月19日発売 / Victor Entertainment
藤田麻衣子「惚れ歌」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3996円 / VIZL-1392

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藤田麻衣子「惚れ歌」通常盤

通常盤 [CD]
2916円 / VICL-65020

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CD収録曲 / オリジナルアーティスト
  1. SAY YES / CHAGE and ASKA
  2. もう恋なんてしない / 槇原敬之
  3. PIECE OF MY WISH / 今井美樹
  4. 揺れる想い / ZARD
  5. 部屋とYシャツと私 / 平松愛理
  6. One more time, One more chance / 山崎まさよし
  7. サウダージ / ポルノグラフィティ
  8. 会いたい / 沢田知可子
  9. シングル・アゲイン / 竹内まりや
  10. 雪の華 / 中島美嘉
  11. 手紙~愛するあなたへ~(セルフカバー)
初回限定盤DVD収録内容
  • もう恋なんてしない(Music Video)
  • 揺れる想い(Music Video)
  • 会いたい(LIVE 2018.4.10 @ 東京国際フォーラム ホールC)
  • Let It Go ~ありのままで~(1人で20人アカペラ)
ライブ情報
藤田麻衣子オーケストラコンサート2019~惚れ歌~
  • 2019年5月25日(土)東京都 文京シビックホール(大ホール)
藤田麻衣子(フジタマイコ)
藤田麻衣子
愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブを軸に活動しながらファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。2017年4月に東京・すみだトリフォニーホールで念願のオーケストラコンサートを初開催。2018年1月にニューアルバム「思い続ければ」を、9月にはキャリア初となるカバーアルバム「惚れ歌」をリリースした。2019年5月には東京・文京シビックホール 大ホールで2度目のオーケストラコンサートを行う。