藤田麻衣子がニューシングル「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」をリリースした。
2014年にメジャーレーベルへ移籍して以降、「もっとたくさんの人に届けるにはどうすればいいのか」という思いに苛まれ、「誰のために曲を書くべきなのか」を見失っていたと話す藤田。だが彼女は本作の制作を進めていく中で、「たった1人の人に向けて書けばいいんだった」ということを思い出すことができたのだと言う。今年4月にはかねてからの夢であったオーケストラコンサートを実現させ、そのステージ上において“紅白出場”という新たな夢も掲げた。自らが音楽を作る意味を改めて胸に刻み、これまで以上に気持ちを外に向けつつある彼女が生み出した本作収録の4曲は、アーティスト・藤田麻衣子の健やかな今を明確に感じさせる仕上がりになっている。
果たして藤田麻衣子はどんな思いでシングルを作り上げたのか。じっくりと話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 草場雄介
オーケストラコンサートをするために経験を重ねてきた
──今年4月1日に東京・すみだトリフォニーホールで初のオーケストラコンサートを開催しましたね。藤田さんにとってデビュー当初からの夢が実現したわけですが、いかがでしたか?
長年の夢でもあったので達成感が強い1日になるのかなと思っていたんですけど、実際はもうとにかく楽しくて仕方がない感じでした(笑)。新しい始まりのような感覚もあり、もっともっとやりたいことがあふれてくるような、そんな1日になりました。
──リラックスして臨むことができたんですね。
うん、すごくリラックスしてました。今回、オーケストラと一緒に合わせるリハーサルは2日間しかなかったんですけど、そのときに自分はいろいろな経験をしてこれたんだなということを実感できたんですよ。私は今までにピアノ弾き語りやバンド、アコースティック、弦楽四重奏など、いろいろな編成でライブをやってきたんですけど、その経験のすべてがちゃんと生きていると言うか。「ああ、私はこのオーケストラコンサートをするためにいろんな経験をしてきたんだな」っていうことを強く感じることができたんです。だからこそ本番はもうただただ楽しむだけっていう気持ちで臨めたんだと思います。
──デビューから10年を経て、オーケストラコンサートという夢を実現させるための準備が整ったということだったのかもしれませんね。
そうそう。ホントにそういう感覚になりました。やっと準備が整ったんだな、よかったなってすごく思いました。
──コンサートの当日、ステージ上では新たな夢も宣言されたそうですね。
はい。まず1つは、オーケストラコンサートの規模を大きくしていきたいなっていうことで。今回は東京で一夜限りだったので、今度は東名阪でやりたいんですよね。それを数年に1度のペースでやっていけたら、その間に自分もまた成長することができるし、新たなファンの方との出会いもあると思うので、活動の中での分岐点になるかなって。そんな欲が出ちゃいました(笑)。
この10年があったからこそ「紅白に出たい」と言える
──そしてもう1つ、「NHK紅白歌合戦」に出場したいという夢も。
紅白という場所はね、歌手として今までもたぶん意識していたとは思うんですけど、改めてそこを目指すことで自分自身をもっと成長させることができるんじゃないかなと思ったんです。なので勇気を出して言葉にしたところ、その日一番って言えるほどの大きな拍手をいただいてしまって。「え、出場が決まったわけじゃないよ」って思わず言い直したんですけど(笑)。
──大好きなアーティストが夢を抱いていることは、ファンにとって大きな喜びでもありますからね。
そうなんですよね。私が何かを目指したり望んだりすることに対して、一緒になって喜んで、本気で応援してくれる人たちがいる。そこがデビュー当時とは違うなってすごく思うんです。この10年の間に出会ってきた人たちとの絆は本当に心強いですよね。
──その絆があるからこそ、今の藤田さんはさらに広い場所へと目を向けられるようにもなったんでしょうね。
そうだと思います。この10年があったからこそ、紅白に出たいとか、藤田麻衣子の名前を世の中の人にもっと知ってもらいたいっていう気持ちをようやく口にすることができるようになったのかなって。めちゃくちゃ怖がりで慎重な性格なので、すごく時間がかかっちゃいましたけど(笑)。
──でも逆に言えば、じっくりと着実に歩を進めてきたからこそ、藤田麻衣子のアーティスト性が確立されたと思うんです。ここから今まで以上に幅広い活動をしたとしても軸がブレる心配はないですよね、きっと。
去年、47都道府県ツアーをやっているときに、マネージャーとまさにそういう話をしていて(笑)。私の中には自分が思い描く理想のシンガーソングライター像があるので、そこからはどうしても外れたくないという気持ちが強いんですよ。でも、10年分の軌跡をまとめたベストを出して、夢だったオーケストラコンサートもできるということで藤田麻衣子としての代名詞的なものはもうしっかりできたんじゃないか、ここからはもうちょっと冒険してもアーティスト像は崩れないんじゃないか、みたいなことをマネージャーから真面目に言われたりしたんですよね(笑)。
──うん、崩れないと思います。
私自身、今までは「藤田麻衣子はこうじゃなきゃいけないんだ」みたいな感情にがんじがらめになっていたところもあったんだけど、オーケストラコンサートをやったことでその気持ちがほどけた感覚もあるんです。だからこれからはもっと自由に、もっと自分を解放していければいいなって思えるようにもなりましたね。今はいい意味で肩の力が抜けているというか。
──健やかな気持ちですか。
そう、健やか(笑)。心がすごく軽い感じなんです。
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苦しみを経て、ようやくナチュラルな自分に戻れた
- 藤田麻衣子
「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」 - 2017年9月27日発売 / Victor Entertainment
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通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37320 -
期間限定盤 [CD]
1296円 / VICL-37321
- 通常盤CD収録曲
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- 素敵なことがあなたを待っている
- 秋風鈴
- やるしかない
- あなたがいるから
- 期間限定盤CD収録曲
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- 秋風鈴
- 素敵なことがあなたを待っている
- やるしかない
- あなたがいるから
- 藤田麻衣子「東名阪フリーライブツアー ~素敵なことがあなたを待っている~」
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2017年9月29日(金)東京都 池袋サンシャインシティ噴水広場
START 18:002017年9月30日(土)愛知県 アスナル金山 明日なる!広場
[1部]START 13:00
[2部]START 16:002017年10月1日(日)大阪府 くずはモール 南館ヒカリノモール 1F SANZEN-HIROBA
[1部]START 13:00
[2部]START 16:00
- 藤田麻衣子(フジタマイコ)
- 愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブを軸に活動しながらファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2015年12月にメジャー2作目となるアルバム「恋愛小説」を発売している。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。2017年4月に東京・すみだトリフォニーホールで念願のオーケストラコンサートを初開催。9月にニューシングル「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」を発売した。