藤田麻衣子|迷いから抜け、新たな夢を追う

苦しみを経て、ようやくナチュラルな自分に戻れた

──今回のシングルリリースの発表があったときに藤田さんは、「“たった一人の人に向けて書けばいいんだった”ということを、思い出せたような1枚になりました」とコメントされていましたよね。

藤田麻衣子

はい。私は2014年にメジャーレーベルに移ってきたんですけど、今そこからの約3年を振り返ると、自分なりに壁にぶつかってたなって思うんです。メジャーに来たことでタイアップのお話をいただく機会が増え、さまざまなチャンスが広がった一方で、本来の私とは違った方向性の曲を求められることも増えてきたんですよね。もちろんそれ自体は全然悪いことではなく、そこで自分なりのトライを一生懸命してみることで新たな引き出しを作れるとは思うんです。実際、それによって新しい扉が開けたこともあるし。でも、自分の力が足りないこともあって、なんとなくピンと来ないものを書いてしまったときに、「果たしてこれを聴いて誰が喜ぶんだろうな」って思ってしまうこともあったんです。

──どこかムリをしている感覚に陥ってしまうような。

そう。結果的にそれがちゃんと聴き手に響けばいいんだけど、実際には響いてる気がしない、みたいなときが続いたときは、けっこうヘコんでしまって。「これって私じゃなくてもいいんじゃないのかな」とか思ってしまったり。曲自体はインディーズ時代よりもたくさん書いてはいたんですけど、生むだけ生んで迷ってるみたいな時期がけっこう続いてたんですよね。「私はどんな曲を書けばいいんだろう」って。去年が一番苦しんでたかもしれない。

──どこに向けて曲を書くべきなのかを見失っていたところもあったんでしょうね。

藤田麻衣子

たぶんそうなんだと思います。インディーズのときは自分のやりたいことを超マイペースにやって、結果、そこに付いてきてくれる人がいるから自分は間違ってないよねっていう感覚でいたんです。すごくナチュラルに活動できていた。でも、メジャーに移ったことで今まで以上にたくさんの人たちに自分の歌を届けられるかもしれないと思ったときに、「じゃあ、たくさんの人に届く歌ってどういうものなんだろう」ってすごく考えるようになってしまって。1人の向こうにたくさんの人がいるっていうことを頭ではわかっていたけど、気持ちが焦って遠くを見過ぎてた気がするんですよね。

──そんな迷いを払拭できたのが今回のシングルだったと。

はい。さっきもお話したように、今年に入ってオーケストラコンサートを経験したことで、肩の力が抜けて気持ちが楽になったからか、迷いなく曲を書けるようになったんですよ。今回のシングルは4曲共タイアップが付いているんですけど、どれもホントに無理しないで書けたんです。「たくさんの人に届けたい」とかそういうことは一切考えず、タイアップのお話をくださった方とか、自分の頭に思い浮かんでいる人とか、その1人さえ喜んでくれればいいなっていう気持ちで書けた。そういう気持ちを取り戻させてくれたという意味では、どれもすごくありがたいタイアップのお話だったなって感謝の気持ちもありますし、自分の原点に帰れた喜びもすごくあって。ようやく本来のナチュラルな自分に戻れたなって思うんですよね。

「はじめてのおつかい」と3度のコラボ

──タイトル曲「素敵なことがあなたを待っている」は、8月に放送された日本テレビ系「24時間テレビ 愛は地球を救う」の特別企画「はじめてのおつかい」の挿入歌。カップリングに収録された「やるしかない」も、7月放送の「はじめてのおつかい」の挿入歌でした。さかのぼると1月放送の同番組には「君よ進め」(2016年11月23日発売のオールタイムベストアルバム「10th Anniversary Best」のリードトラック)が使われていましたよね。短期間で3度のコラボが実現したことを見ても、番組サイドが藤田さんの楽曲を大切に思っていることが伝わってきます。

藤田麻衣子

ホントにそうなんですよ。最初はね、番組のディレクターさんがネットで「君よ進め」を知ってくださったみたいで、「使わせてください」っていう連絡が来て。その後直接お会いしてお話しさせてもらったときに「藤田さんは生真面目な方だから、うちの番組にすごく合うと思うんです。その感性でほかにも曲を書いてみてくれませんか」っておっしゃってくださったんです。それを聞いたときに、ちゃんと私の楽曲を求めてくださっているんだなってすごく思えたと言うか。だからこそ、その期待には全力で応えたいと思ったんです。

──で、順番的にはまず「やるしかない」を先に書き下ろしたわけですね。

はい。番組の過去の映像をいろいろ観させていただいた中で、そこに出てくる子供も、お父さんもお母さんも、裏でがんばっているスタッフさんもみんな「やるしかない!」っていう気持ちなんだなって思ったんですよね(笑)。私自身も追い込まれたときには「やるしかない!」って思うことが多いので、その気持ちをそのまま曲にしてみようと。そうしたら番組サイドの方もすごく気に入ってくださって。「いやホントに僕らはこの曲の通り、“やるしかない”んですよ」っておっしゃってくれたのがうれしかったですね。

藤田麻衣子
「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」
2017年9月27日発売 / Victor Entertainment
藤田麻衣子「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37320

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藤田麻衣子「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」期間限定盤

期間限定盤 [CD]
1296円 / VICL-37321

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通常盤CD収録曲
  1. 素敵なことがあなたを待っている
  2. 秋風鈴
  3. やるしかない
  4. あなたがいるから
期間限定盤CD収録曲
  1. 秋風鈴
  2. 素敵なことがあなたを待っている
  3. やるしかない
  4. あなたがいるから
藤田麻衣子「東名阪フリーライブツアー ~素敵なことがあなたを待っている~」

2017年9月29日(金)東京都 池袋サンシャインシティ噴水広場
START 18:00

2017年9月30日(土)愛知県 アスナル金山 明日なる!広場
[1部]START 13:00
[2部]START 16:00 

2017年10月1日(日)大阪府 くずはモール 南館ヒカリノモール 1F SANZEN-HIROBA
[1部]START 13:00
[2部]START 16:00

藤田麻衣子(フジタマイコ)
藤田麻衣子
愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブを軸に活動しながらファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2015年12月にメジャー2作目となるアルバム「恋愛小説」を発売している。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。2017年4月に東京・すみだトリフォニーホールで念願のオーケストラコンサートを初開催。9月にニューシングル「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」を発売した。