フジロックはお客さんも出演者も仲間意識が強い

──フジロックってほかのフェスと比べても、ちょっと独特な雰囲気がありますよね。皆さんにとってフジロックの魅力ってどういうところでしょうか？

ROY　まずやっぱり、本当に音楽が好きな人たちが集まってるところですね。出演者としてフジロックに行っても、自分たちのステージが終わるとその音楽好きの中に混じってファンに戻るというか、それが許されるのがフジロック。来てる人たちもみんな音楽ファンだからそりゃ多少は握手したりサインしたりとかはあるでしょうけど、お客さんの中にアーティストが入ってきたからといってそこまで「うわーっ！」ってパニックにならないというか。そういう雰囲気はありますよね。

TAXMAN　そうだね。昔お客として行ったときに、CRYSTAL PALACEのあたりをTHE CHEMICAL BROTHERSの2人が歩いてたんですよ。GREEN STAGEのヘッドライナーですよ？ すごくないですか？

一同　あはははは（笑）。

TAXMAN　それを観て「へっ、THE CHEMICAL BROTHERSがいるよ？」って思っても、みんなそれほど騒がないし。ああいうのってフジロックならではですよね。

ROY　お客さんも出演者もみんな、仲間意識が強いところはやっぱりいいですよね。

フジロック初出演は「ああ、幸せだなあ」って初めて思えた瞬間

──さて、今度は出演者としてフジロックを語ってもらいたいと思います。THE BAWDIESが初めてフジロックに出演したのは2007年、新人アーティストの登竜門的ステージ「ROOKIE A GO-GO」でした。THE BAWDIESにとってフジロック出演は目標の1つだったんですか？

ROY　出たかったですね。フジロックに対する思いはデカいですよ。それこそ学生の頃から遊びにいってた場所ですし、ROOKIE A GO-GOどうこうではなく「フジロックに出たい」という気持ちが強かったんです。

──その頃THE BAWDIESはインディーズからシングル「I BEG YOU」（2007年3月発売）をリリースしたあとでしたね。当時のことはよく覚えてますか？

ROY　このときのライブは今まで……いや、初めての武道館公演も大切ですけども、僕はこのフジロックが初めて「ああ、幸せだなあ」って思えた瞬間でしたね。初めての野外ライブということもありましたし。今まではライブハウスで自分たちのことを知ってるお客さんの前でしかライブをやったことがなくて、これだけ大勢の、自分たちのことを知らない人たちの前でライブをやって、その人たちが最終的に手を挙げてノッてくれてるのを観た瞬間、初めて「自分たちの音楽が“届いた”んだ、自分たちがやってきたことは間違ってなかったんだ」っていう答えが見つかった気がして。こんなうれしいことはなかったですね。しかもそれが憧れのフジロックのステージだっていう。最高でしたね。

──なるほど。

ROY　THE BAWDIESの出演日は初日だったんですけど、僕は1日中ドキドキしながらほかのライブを観ていて。

JIM　落ち着かなかったよね。

ROY　そうだね。で、夕方ぐらいにYOUR SONG IS GOODのステージを観たんですけど、すごく楽しそうにしているのを観て吹っ切れたというか。「ああ、自分たちもこの感じでやれたらいいな」って思いましたね。

出演者としてゲートの中に入れたってだけでも大きかった

──2007年にフジロック初出演を果たし、その後THE BAWDIESは2009年にメジャーデビュー。翌2010年には、2度目のフジロック出演でWHITE STAGEに進出します。このときも初日で、しかもトップバッターでしたけどお客さんがたくさん集まりましたよね。

TAXMAN　このときはライブが始まる10分くらい前まで、客席がスッカスカだったんですよ。

ROY　前のほうに20人くらいいただけで。

JIM　「朝イチのライブってこんなもんなんだ」って思ったよな（笑）。

TAXMAN　で、みんな「大丈夫なの？」ってそわそわし始めたら、本当にギリギリになってお客さんがたくさん押し寄せて。このときも楽しかったねえ。あの日の僕、すげえ二日酔いだったんですよ。前日にテンションが上がり過ぎちゃって、前夜祭で飲み過ぎて。朝起きたときにヤバいと思ってたら、スタッフさんが胃腸薬を買ってきてくれて（笑）、それを飲んだら元気になって無事ライブをすることができました。それくらいWHITE STAGEという場所に舞い上がってたんですよ。

ROY　出演者としてゲートの中に入れたってだけでも大きかったですからね。

TAXMAN　やっぱりゲートの中のステージに出られると、ちょっと認められた感がありますよね。あとは「楽屋エリアってどんな感じになってるんだろう？」みたいなワクワク感もあったし（笑）。

──MARCYさんはWHITE STAGEのライブで何か覚えてることはありますか？

MARCY　……全然覚えてないんです。

──へっ？（笑）

MARCY　いや、ROOKIEもWHITE STAGEもそうなんですけど、緊張してライブ中の記憶が飛んじゃって。どっちかって言うと、終わってからのことをよく覚えてます。だから演奏がどうだったとか、まったく思い出せなくて。

ROY　確かにめっちゃ緊張したよね。フジとかサマソニって、「日本のアーティストはちょっとね」って言うような洋楽ファンが多いと勝手に思い込んでたところがあって。大丈夫かな、認めてもらえるかなっていう不安があったんですけど、実際にはさっき言ったように音楽自体が好きな人がいっぱい集まってるから、いいものはいいと素直に受け取ってくれるし、こっちが本当に楽しんでやっていればそれがちゃんと伝わるっていうのは実感しましたね。