ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ

フラカン×伊集院光、初の対談

「エンドロール」はとてもいい時期の、とてもいい温度の歌詞

伊集院 あとね、アルバムの中でもう1曲気になったのが「エンドロール」。これね、最初に聴いたとき「ちょっと違う人」っていう感じがしたんですよ。

マエカワ お!

伊集院 「全てを根こそぎさらってく映像をテレビは映す」という歌詞の後、一瞬、音が止まるでしょ。あそこで「あ、違う。これは僕の知ってるフラカンのやり方じゃない」って。で、さっき資料を見させてもらったら、アレンジが違う方なんですね。

──「エンドロール」の編曲は、スキマスイッチの常田真太郎さんですね。

インタビュー写真

マエカワ ドンピシャですね。そこに反応してくれたのはうれしいです。

伊集院 今「そこに気付いた俺、すげえな」って思いました(笑)。だからね、いろんなアレンジで聴いてみたいんですよ。ライブだと違うギアが入るだろうし、フォークっぽい感じもいいだろうし。アルバムの発売前にこんなこと言うのもどうかと思うけど(笑)。

マエカワ いや、素晴らしいです。ピタリと当てられて、ちょっと恥ずかしいくらいで。

鈴木 バレたか、っていう。

伊集院 歌詞はね、もう非の打ち所がないほど素晴らしいんですよ。僕もそうなんだけど、ここ1~2年、「何かを言いたい、何かしなくちゃ意味がない」っていうのがあって。

鈴木 そうなんですよね。俺もうまく言葉にできないんだけど……。

伊集院 「俺の家は流れたか?」っていえば、流れてないわけだから。(被災地の様子を報道している)テレビは観てしまうし、何もできないことに腹も立てるし、怖いっていう気持ちもある。でも、大きな被害に遭った人たちのことを思うと、怖いなんて言う権利はないよな……って。

鈴木 そう、自分でも「お前が言うことじゃねえだろう」って思うし。やっぱり、デリケートだったりするじゃないですか。思うことあるんだったら言えばいいだけで、曲にする必要はないんじゃないのっていう。ずいぶん悩みましたね、そこは。

伊集院 地震の直後にプロ野球の選手が「今は野球をやってる場合じゃない」って言ったじゃないですか。ましてやナイターとなると、照明を使いますからね。それはそれで感動したんだけど、爆笑問題の太田光がね、「そんなこと言うなよ」って言ったわけ。野球選手が野球で救おうとしなくてどうすんだって。「俺は面白いことを言う! 言い続ける!」って。ちょっとグッと来てね。でも実際直後のラジオで「おひさしブリーフ!」って(笑)。そのセンスは最悪なんだけど(笑)、グッと来た。

マエカワ ハハハハハ!(笑)

伊集院 でもさ、歌にしないと何かを放棄してるような気になりませんでした?

鈴木 逃げてるわけじゃないし、そのことを歌わない人たちに対しても、「逃げてる」とは思わないんです。でも、太田さんの言葉をもっと早く知ってたら、ちょっと違ってたかもしれないですね。僕らは答えを出すのに迷ったんですよ。僕らの周りのバンドも同じように迷ってたし。ただ、僕らの場合はツアーがありますからね。東北にも何回も行ったし、なかには「家が流された」っていう人が来てくれたりするんですよ。そういう人たちがライブで楽しそうにしてると、「歌と演奏をやっていくしかねえな」って。ボランティアっていっても、こんなガリガリの身体でさほど力になれるとは思えないし、金だって大して持ってねえっていう。

伊集院 そういう意味でも「エンドロール」っていうのは、とてもいい時期の、とてもいい温度の歌詞だと思いますね。なんて言うのかな、僕にとってのフラワーカンパニーズというのは、熱すぎずヌルすぎず、ウエットすぎずドライすぎず、そういうところに本能的に入っていけるバンドなんですよ。おちゃらけてるところもあるんだけど、「なんでここだけはグッと来ちゃうんだろう」という揺らし方がある。それはもう、うらやましい才能ですよね。

鈴木 ……今、すごく明確に自分の立ち位置がわかった気がしますね。

マエカワ うん。

鈴木 ウエットとドライの真ん中とか、そこは自分でも狙ってるところだと思うんです。ただ、うまく説明できなかったんですよね。

ニューアルバム「ハッピーエンド」 / 2012年10月3日発売 / Sony Music Associated Records
ニューアルバム「ハッピーエンド」
ニューアルバム「ハッピーエンド」初回限定盤 [CD+DVD] 3300円 / AICL-2435~36
ニューアルバム「ハッピーエンド」通常盤 [CD] 3059円 / AICL-2437
CD収録曲
  1. また明日
  2. ロックンロール
  3. エンドロール
  4. 旅待ち
  5. 人生 GOES ON
  6. SO LIFE
  7. 夏のにおい
  8. なれのはて
  9. 246
  10. ひとつだけ
  11. 煮込んでロック
  12. 宛てのない歌
  13. 天使
DVD収録内容
  1. エンドロール(Music Clip)
  2. 新曲リハーサル映像~2012.07.30 at 梅ヶ丘 Rinky Dink Studio~
フラワーカンパニーズ

フラワーカンパニーズ

1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。2012年10月3日、約2年ぶりのオリジナルアルバム「ハッピーエンド」をリリースしたばかり。

伊集院光(いじゅういんひかる)

1967年11月7日生まれ、東京都出身のタレント。1984年に落語家としてデビューし、1990年よりタレントに転身して活動する。1991年3月よりニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」のパーソナリティを務め、若者を中心に急速に支持を拡大する。1995年10月からはTBSラジオのレギュラー番組「深夜の馬鹿力」がスタート。放送開始から17年の歴史を持つ人気長寿番組となっている。このほか数々のバラエティ番組やテレビドラマ、映画などでも活躍。テレビのクイズ番組では雑学王としての一面も披露している。