ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
フラカン×伊集院光、初の対談
生放送やライブは解放できる場所
伊集院 たださあ、40代にもなると、予想外のことってなかなか起こらないでしょ。僕はもう、ラジオの生放送くらいしかないんですよね。
マエカワ 僕らもライブしかないですよ。ありがたいですよね、ホントに。
鈴木 解放できる場所だからな。
伊集院 ありがたくもあり、怖くもあり。一番楽しいのも生放送だし、突然死するのも生放送なんでしょうね。
鈴木 落語をやるときはどうなんですかね? 古典落語って、やることは決まってるわけでしょ?
伊集院 それもね、生放送やライブと似てて。確かに古典落語は、話の筋は決まってるんです。でも、間の取り方や登場人物のテンションでずいぶん変わるんですよね。もちろん、名人の域にまで踏み入れた人だけの話ですけど。尊敬している立川談志師匠なんですけどね、僕の中で伝説になってる話があって。「芝浜」っていう有名な落語があって、あんまり働かない旦那が財布を拾って、豪遊して酒飲んで寝ちゃう。それを知った女房が「全部夢だった」ってことにしちゃう話なんだけど、寝てる旦那を起こすか起こさないか迷うっていう見せ場があるんです。そのシーンになったとき、いきなり客席で携帯が鳴ったんですよ。しかも着メロが「笑点」のテーマ。そのときね、全員が「あ、今日はこれで終わったな」と思ったんですよね。そういうことがあると、談志師匠は帰っちゃうから。そうしたら談志師匠がね、「あんた、電話だよ」って。絶妙の間でアドリブぶっこんだ。
マエカワ&鈴木 おおー!
伊集院 そのときの客席の沸き方がすごかったんですよ。突きつけられてたナイフがいきなりオッパイに変わったくらい、ドワーッ!となって。そのとき師匠、「……っていうふうに、こぶ平だったらやるでしょう。帰ります」って帰っちゃたんです。そのとき思いましたね。古典落語って、こんなすげえもん観れるんだって。
鈴木 ……すごいっすね。
伊集院 音楽のことはわからないんですけどね、例えばジャズのアドリブとか、きっとそういうことだと思うんですよ。想像ですけどね。
マエカワ でも、そうだと思いますよ。自分たちのライブでも、ビシッと合うときがあるし。
伊集院 絶対的な決まりもあるんですよね。例えばラジオだったら、終わりの時間が決まってるとか、放送コードがあるとか。
鈴木 そこからいかにハミ出せるか、ということですよね。
伊集院 それをできるだけ高いレベルでやりたいんです。僕は。いつか。
「やってほしい」って言われ続けたまま寿命を迎えたい
──最後にひとつだけ質問させてください。皆さんにとって「ハッピーエンド」ってなんですか?
伊集院 僕はね、どこかで店じまいを考えてるところもあるんです。キレイな畳み方っていうのかな。無様に終わりたくないような気もするし、でも、それは自分で調整できないだろうなっていうのもあって。結局は「チンチンいじって寝よう」ってことになるんだけど……(笑)。バンドにとって一番美しいハッピーエンドってなんすか?
鈴木 なんですかね……。あの、若い頃は「絶頂期で死ぬのがカッコいい」って思ってたんですよ。ドラッグか何かで死ぬのがカッコいいっていう。
伊集院 今はマツキヨばっかり行ってるのにねえ。サプリ買いに(笑)。
鈴木 できるだけ長生きしようとしてますから(笑)。時代のせいもあるんでしょうけど、THE ROLLING STONESが標的みたいになってた時期もあるんですよね。同じ曲ばっかり延々と続けてるのはカッコ悪いっていう。それから20年くらい経って、終身雇用とかもなくなってくると、今度は続けることが難しくなってきたわけですよ。そうすると、ただバンドを続けているだけなのに「すごい」とか「ステキ」とか言われ始めて。
伊集院 あー、なるほど。
鈴木 絶頂期で若くして死ぬんじゃなくて、ボロボロになって、声も出てないし演奏もグチャグチャなんだけど、「あの人たち、死ぬ間際までライブやってたな」っていうのがむしろカッコいいんじゃないかって。
マエカワ そうだね。
伊集院 僕らの場合は、「やってほしい」っていう人のリクエストがないと続けることができないですからね。そうすると、「やってほしい」って言われ続けたまま寿命を迎えるのが一番のハッピーエンドなのかもね。
鈴木 惜しまれて死にたいですよね、できれば。
伊集院 今、無理に死ぬのはカッコ悪いかもしれないね。大事ですよ、寿命は。
- ニューアルバム「ハッピーエンド」 / 2012年10月3日発売 / Sony Music Associated Records
- ニューアルバム「ハッピーエンド」
- ニューアルバム「ハッピーエンド」初回限定盤 [CD+DVD] 3300円 / AICL-2435~36
- ニューアルバム「ハッピーエンド」通常盤 [CD] 3059円 / AICL-2437
CD収録曲
- また明日
- ロックンロール
- エンドロール
- 旅待ち
- 人生 GOES ON
- SO LIFE
- 夏のにおい
- なれのはて
- 246
- ひとつだけ
- 煮込んでロック
- 宛てのない歌
- 天使
DVD収録内容
- エンドロール(Music Clip)
- 新曲リハーサル映像~2012.07.30 at 梅ヶ丘 Rinky Dink Studio~
フラワーカンパニーズ
1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。2012年10月3日、約2年ぶりのオリジナルアルバム「ハッピーエンド」をリリースしたばかり。
伊集院光(いじゅういんひかる)
1967年11月7日生まれ、東京都出身のタレント。1984年に落語家としてデビューし、1990年よりタレントに転身して活動する。1991年3月よりニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」のパーソナリティを務め、若者を中心に急速に支持を拡大する。1995年10月からはTBSラジオのレギュラー番組「深夜の馬鹿力」がスタート。放送開始から17年の歴史を持つ人気長寿番組となっている。このほか数々のバラエティ番組やテレビドラマ、映画などでも活躍。テレビのクイズ番組では雑学王としての一面も披露している。