ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
フラカン×伊集院光、初の対談
「まだやってる」と言われることに快感を覚える
伊集院 そんなことでフラワーカンパニーズの曲を聴くようになったんですけど、「日々のあぶく」も好きでしたね。完全にメソメソしないっていうのかな。決して明るくはないんだけど、全部が暗いっていうわけでもないっていう、そのバランスなんですよね。
鈴木 僕ね、すごい“メソメソ”なんですよ。だけど、ライブでメソメソしてるわけにもいかないから「ワーッ!」とやるっていう。あと、タッパ(身長)がなくて、顔もこんなで、声が高いっていう、そういうキャラじゃないですか。
マエカワ コンプレックスね。
鈴木 こういうキャラだとね、何を言っても軽めのスタンスになっちゃうんです。だから、かなりメソメソしたことを言わないと刺さらないぞっていうのがあるんですよね。
伊集院 俺が太ってるっていうのと同じかもしれないな。太ってるってだけで「楽しそう」とか「あいつ、おまんじゅうのことでも考えてるんだろうな」って(笑)。
鈴木 ハハハハハ!(笑) でも、そうなんですよね。俺が普通に歌ってても「ギャーギャー騒いでる」ってだけで終わっちゃう。だから、ちょっとキツイ言葉でちょうどいいのかなと。
──フラカンのニューアルバム「ハッピーエンド」は「深夜高速」「日々のあぶく」の系譜というか、じっくり聴かせる曲が中心ですよね。
マエカワ うん、アッパーな曲はいつもより少ないですね。
鈴木 マジメすぎるんじゃないかって気もするんですけどね、若干。
伊集院 「アッパーが少ないから、入れなきゃ」みたいなことにはならなかった?
鈴木 やったんですよ、それ。途中で「アッパーなヤツも作らなきゃ」って思ったんですけど、最終的に選ばれなかったんです。
マエカワ 残らなかったね。
鈴木 そういうモードじゃなかったんですよね。それは僕だけじゃなくて、他のメンバーもそうだったと思うし。
伊集院 勇気ある決断ですよね、それは。僕が今回のアルバムで一番気に入ってるのは「ロックンロール」(「ロックンロールは続いてる / ロックンロールはずっと続いていく」というフレーズが入ったミディアムチューン)。AMラジオの深夜放送をやっていて「いいな」って思うのは、ずーっとやってるってことなんですよ。会社に入ったりすると、深夜放送を聴いてる時間なんてなくなるでしょ。でも、6年ぶりとか10年ぶりくらいに聴いてみたら「あいつ、まだバカやってるんだ」っていうね。「ずーっと同じ感じでバカやってるんだな」っていうのを目指すしか、やってる意味ってないんですよ。
鈴木 全く同じです。いつの頃からか「まだやってる」と言われることに快感を覚えるようになってきて。フラワーカンパニーズは今年で23年目なんですけど、同期のバンドなんてほとんどいなくなってるわけですよ。怪物バンドは違いますよ?
マエカワ 売れてるバンドね。
鈴木 ヒット曲を出したこともなく、メンバーチェンジもないバンドって、皆無なんです。
昔からのファンに対して使命感が出てきた
伊集院 俺もそうだけど、辞めそこなうんだよね? いい潮時を逃すと、あとはもう、やり続けるしかないっていう。
鈴木 そう。つぶしが利かないからやってるだけなんですけどね、こっちは(笑)。若いバンドと話しても、最初の質問が「どうやったら、そんなに長く続けられるんですか?」なんですよ。曲のことは訊かないのか?っていうね(笑)。“続けてる”っていうだけなんですね、存在価値が。
伊集院 「まだやってんの? でも、悪くはないよね」くらいの温度で。
鈴木 そうなんですよね。あとね、結成当初からライブに来てくれてる女の子とかって、もういい年齢になってるじゃないですか。最初は彼氏もいなかった女の子が――まあ、彼氏がいるような女の子は最初からライブハウスに来ないんですけど(笑)。心の穴を埋めたい人だったりしますからね、ライブハウスに来るのは。
伊集院 満たされてたら来ない、と。
鈴木 そうなんです。そういう女の子に彼氏ができて、結婚したら、ライブには来なくなるんですよ。でも、子育てがひと段落したら、戻ってくる人もいるんですよね。僕らは今、そういう段階なんですよ。最初はそういう状況に対して複雑な気持ちだったんですけど、だんだん使命感みたいなものが出てきて。これ、大槻ケンヂさんが言ってたんですけど、筋肉少女帯が解散したとき、行き場をなくしてしまった人がたくさんいる、と。その責任を取るために復活したんだっていうね。冗談なのか本気なのかはわからないけど、その言葉にグッと来たんですよ。
伊集院 歳を重ねてから聴き直したとき、以前と違って聴こえるときもあるしね。再発見とは言わないまでも、違う聴き方をした上で「やっぱりイイ曲だ」ってなったら、これはすごいでしょうね。
マエカワ そうですね。
伊集院 ラジオの深夜放送は、それが難しいんだよね。だから俺、YouTubeが大嫌いで。
鈴木 ハハハハハ!(笑)
伊集院 番組を録音してアップするのはするヤツが自己責任でやればいいよ。逮捕されてもしらないけど。でも、それを聴いて「今と言ってることが違う」とか「つまんない」とか、そういうのは困るねえ(笑)。3カ月前のイクラ食って腹壊したって、それはお前のせいだろうって言いたいですね(笑)。ラジオの深夜放送の賞味期限なんて1秒だから(笑)。
- ニューアルバム「ハッピーエンド」 / 2012年10月3日発売 / Sony Music Associated Records
- ニューアルバム「ハッピーエンド」
- ニューアルバム「ハッピーエンド」初回限定盤 [CD+DVD] 3300円 / AICL-2435~36
- ニューアルバム「ハッピーエンド」通常盤 [CD] 3059円 / AICL-2437
CD収録曲
- また明日
- ロックンロール
- エンドロール
- 旅待ち
- 人生 GOES ON
- SO LIFE
- 夏のにおい
- なれのはて
- 246
- ひとつだけ
- 煮込んでロック
- 宛てのない歌
- 天使
DVD収録内容
- エンドロール(Music Clip)
- 新曲リハーサル映像~2012.07.30 at 梅ヶ丘 Rinky Dink Studio~
フラワーカンパニーズ
1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。2012年10月3日、約2年ぶりのオリジナルアルバム「ハッピーエンド」をリリースしたばかり。
伊集院光(いじゅういんひかる)
1967年11月7日生まれ、東京都出身のタレント。1984年に落語家としてデビューし、1990年よりタレントに転身して活動する。1991年3月よりニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」のパーソナリティを務め、若者を中心に急速に支持を拡大する。1995年10月からはTBSラジオのレギュラー番組「深夜の馬鹿力」がスタート。放送開始から17年の歴史を持つ人気長寿番組となっている。このほか数々のバラエティ番組やテレビドラマ、映画などでも活躍。テレビのクイズ番組では雑学王としての一面も披露している。