やれやれ! いけいけ! もっと浴びせてー!
──Kamusさんのお気に入りの楽曲は?
Kamus どれも好きなんですけど……まず挙げるなら「HSP」! デモの段階でワンコーラスだけ聴かせてもらってから、ピーピーピーピー言ってるサビを一緒に歌って、勝手にフリを付けて遊んだりしてたんですよ(笑)。もうホントに癖になる曲なんですよね。たぶんリスナーの方も、一度聴いたら二度と頭から離れないと思います。
──この曲はハイパーポップと言われるジャンルですよね。
Takassy エンガブには取り入れることはないだろうと思っていたジャンルなんですけど、最近はワールドワイドに人気があったりもするのでやってみようかなと。歌うことに関してはすごく楽しかったんですけど、歌詞を書く段階ではけっこうつらかったですね。
──HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)というのは、簡単に言うと感受性が極めて高い人のことですよね。
Takassy そうです。自分はHSPだと言われることが多くて。この曲では脳内のぐちゃぐちゃしているところを支離滅裂に書き殴ってみた感じなので、自分自身を一番さらけ出した曲になりました。
──HSPという特性を持った人はすごく共感すると思うし、そうでない人は「あ、こういう人もいるのか」という気付きにもなりそうです。
HIDEKiSM まさにそうなんですよ! リーダーを見ていても、「え、そんなこと気にする?」みたいな感じで、私は何ひとつわからないですからね(笑)。でも、そういう方がいるということを知れば、対応の仕方が変わってくるじゃないですか。そういうきっかけになってくれたらいいなっていう思いもあります。
Takassy 歌割りに関しても、歌詞の中で客観的なことを書いた部分をHIDEKiSMに担当してもらうことにしました。何ひとつ共感してもらえないだろうなと思っていたので(笑)。ライブでは私が患者で、HIDEKiSMが看護師、Kamusが先生という設定でステージングしても面白いんじゃないかなと思ってます。
Kamus あともう1曲、「Unloved」も大好きなんですよ! このサウンド感がもう刺さりまくりで。もともとアンダーグラウンドなロックが大好きで、ずっと聴いてきたんですけど、まさかエンガブでそれをやる日がくるとは。1番をTakassy、2番をHIDEKiSMが歌う構成もいいんですよね。どこかソロシンガー同士のフィーチャリング曲みたいな匂いがするというか。お互いのよさが際立っていて、本当にカッコいい。最後のTakassyのロングトーンは、聴くたびに「やれやれ! いけいけ! もっと浴びせてー!」って思っちゃいますね(笑)。
Takassy あれ以上やったら死んじゃうから(笑)。この曲はアンダーグラウンドなストリップバーやキャバレーみたいなところで流れている画をイメージしていて。それに合わせパフォーマンスしているような景色の曲はどうしても入れたかったんです。そういうシーンはKamusのルーツでもあるんだけど、今回は3人でしっかり表現したいなって。
Kamus 歌詞も然り、歌い方も然り、新しいエンガブを見せられる曲でもあるので、ライブでどうパフォーマンスしていくのかを楽しみにしていただきたいですね。
──Kamusさんがおっしゃったように、この曲のボーカルはめちゃくちゃ最高でした。
HIDEKiSM うれしいですー! 声質的には2人ともパワー系なので、ロックの楽曲には合うんですよ。でも、ここまでの“THE ロック”な曲は初だったので、レコーディングは難しかったですけどね。声を張りすぎず、切なさやもがき苦しんでいる感じを出すみたいな、そのさじ加減は2人でかなりがんばりました。
Takassy そうね。2人でグワッと歌うとうるさくなってしまうので、抑え気味に淡々と歌ったほうが雰囲気がめっちゃ出るという結論に行き着きました。
1曲目はラブ全開で
──ほかにもアルバムにはキラーチューンが満載で、オープニングを飾る「Love is Always Light of My Life」はキラキラしたディスコナンバーです。
Takassy 前作「DVORAKKIA」のラストでは「Sail On」という曲で出航したので、次に訪れる新世界は夢があるところであってほしかったんです。今回はアルバム全体としてポジティブな愛を歌いたい欲求もあったので、1曲目にはラブ全開の曲を持ってきました。
Kamus この曲でも、「エンガブがディスコをやる日がついに来たんだ!」と思いましたね。聴いた瞬間に自然とカラダが揺れ始めるキラキラした世界観。ライブでの楽しい光景もパッと思い浮かんだので、この曲でみんなをエンガブ色に染める日が楽しみでワクワクしています。
魔法には興味がないHIDEKiSM
──HIDEKiSMさんがメインで歌われている「OL -Happy Ever After-」は、メジャー1stフルアルバム「ENGABASIC」に収録されていた「BL」と対になった曲だそうですね。
Takassy そうなんです。「BL」と同じ時期に作っていた曲で、もともとはテンポがもうちょっと遅い80'sポップだったんですよ。それを今回はHi-NRG、初期のユーロビートっぽい雰囲気でパワフルな感じにしてみました。歌詞の内容で言うと、「BL」の主人公は現実がわかってはいるけど「妄想に生きたっていいじゃん!」と思っているタイプ。一方の「OL」は「いやいやそんなの違うでしょ」と思っているタイプ。女子会で共感し合わない同士がだべってるような2曲ですね(笑)。実際、私は「BL」タイプの人間なので、あの曲はメインで歌ったんです。で、HIDEKiSMは「OL」タイプなので、今回メインで歌ってもらいました。
HIDEKiSM もう最高よね、この曲。歌詞がブッ刺さりまくりで(笑)。
Takassy エンガブの絶妙なところは、私とHIDEKiSMの間にKamusがいることなんですよ。ちょっと「BL」寄りではあるけど、どっちにも共感できるんですよね。すべての物事に対して2対1になることがないのがエンガブの面白いところ。
──勝手なイメージですけど、Takassyさんのほうが現実的で、HIDEKiSMさんのほうが妄想に生きるタイプかと思ってました。
HIDEKiSM あー、そう見えますか?
Takassy 確かにそう見えるかもしれないですね。
HIDEKiSM 私はディズニーが大好きなんですけど、でもそれはある意味、現実的だから。ファンタジーの中にすごい現実味があるというか。
Takassy そうそう。だからHIDEKiSMは「ハリー・ポッター」には全然興味がない。魔法とか異世界ものになった途端、まったく興味がなくなるっていう(笑)。私は好きなんですけどね。
Kamus 私も大好き!
HIDEKiSM 現実味とかリアリティがなくなると、どうしてもね。
Takassy 「セックス・アンド・ザ・シティ」をずっと観てたタイプだもんね。
HIDEKiSM そうね(笑)。でも、そんなTakassyが「利害一致」みたいな曲を書けるのが本当にすごいなと思って!
──めちゃくちゃ現実的な曲ですもんね。
Takassy 人間関係に関する考え方はわりと現実的なんです。そこは実生活と趣味とでは違うっていうことで。
90年代J-POPに浸透していたジャンル
──ニュージャックスウィングを取り入れた「Raining Raining」という曲もありますね。懐かしくてシビれました。
Takassy Carlosさんと私の中では、ボビー・ブラウンとかのイメージで作っていったんですけど、できたものをHIDEKiSMに聴かせたらSPEEDやDA PUMPの名前が出てきて。それくらい90年代のJ-POPに浸透していたジャンルなんだなっていうことを再認識しましたね。
──この曲もオケとしては本格的なニュージャックスウィングですけど、楽曲全体の印象にはJ-POP感がありますしね。
Takassy そうですね。音的にはかなりシンプルにしているんですけど、そこでさらにメロディもシンプルにしてしまうとポップスではなくなる気がしたんですよ。いきなりR&Bっぽくなってしまうというか。なのでメロをダサくすることでJ-POPにしたところがありましたね。そこがHIDEKiSMの感想につながったんじゃないですかね。自分的には「なるほどな」と思いました。
絶対に入れておきたかったゲイアンセムな1曲
──そして「Divalicious」と「(Life is always like a) Ball」は、エンガブのアイデンティティが注がれた2曲。こういった曲がしっかり入っているところにオネエエンタテインメントユニットとしての矜持を感じました。
Takassy 今回はLGBTやゲイカルチャーに対してのリスペクトを込めた賛歌みたいな曲を作りたいなと思っていて。今までそういった曲を大っぴらにはあまり作ってこなかったんだけど、“ラブ”がもう1つのテーマだったりもしたので、そこはちゃんとメッセージするべきだなと。「Divalicious」はザ・ゲイソング、ゲイアンセムになるような曲。このタイプの曲は絶対に入れようと思ってました。
HIDEKiSM こういう曲はエンガブとして入れておきたいところなんですよね。「ENGABASIC」に入っていた「PAY ME」の評判がすごくよかったこともあって、やっぱりこういうタイプの曲はエンガブにとっての大きな武器なんだろうなと改めて思いますね。
楽しみながら生きちゃうよ、私たちは!
Takassy もう1曲の「(Life is always like a) Ball」は、マドンナの「Vogue」へのオマージュとして作ったもので。
Kamus 聴いた瞬間、「え、これで来ましたか!」とワクワクしました。しかもこの曲がアルバムのラストに入ったことにもすごく意味があると思うんです。ディスコな「Love is Always Light of My Life」でキラキラして始まり、深みと厚みを感じる「Ball」で終わる。それってディスコやクラブで感じる一晩の流れのようだなって。みんなで体を揺らして楽しんで、最後に「Ball」を聴いて帰ることで「明日もがんばろう」って思えるというか。「楽しかった! ウエーイ!」な感じではなく、ちょっと大人な落ち着いた雰囲気で、いろんな思いを噛みしめる系のエンディングがすごくいいなと思いましたね。
HIDEKiSM 歌詞に「プリシラ」というワードが出てくるのもいいのよね。私はミュージカルの「プリシラ」を観劇したことがあるんですけど、荒野をドラァグクイーンが旅するストーリーで、それが3人なんですよ。そういう部分で人生という荒野を颯爽と走っているエンガブの3人、自分たちにもマッチする感覚があるというか。最高のエンガブ版「Vogue」ができたと思います。
Takassy 今の社会情勢を見ていると、すごく終末っぽさを感じるんですよ。「地球、終わるんじゃね?」みたいな。それによって暗い気持ちにもなるけど、でも嘆くよりも楽しんだほうがいいじゃないですか。「ここからも楽しみながら生きちゃうよ、私たちは!」っていうメッセージを最後に込めた感じです。
私たちはZeppアーティストよ!
──「ENGABALL」を携えて、6月から5都市を巡る初のZeppツアーが開催されます。最後に意気込みを聞かせてください。
Kamus ありがたいことに毎年、会場の規模を更新させていただけて。とにかく楽しみしかないですね。Zeppでしかできないこともあると思うし、“ダンス”をテーマにしたアルバムを作ったわけなので、みんなに思い切り踊ってもらえるライブにしたいと思います。そのためには私たちもステージングをしっかり作り上げないといけないので、6月までにきっちり仕上げていこうと思っています。
Takassy Zeppツアーが決まったときに「うん、やっぱりそうだよね」っていう感じだったんですよ。「私たちはそこにたどり着くためにやってきたものね」という気持ちが強い。もちろんものすごくうれしいし、周りの方々への感謝も大きいんですけど、自分を卑下することなく「そりゃそうよね」という気持ちで冷静に臨もうと思っています。その次、さらに大きいステージに立てる自分たちを想像して努力を重ねながら。
HIDEKiSM 先日、3月30日に「エンガブの部屋」が東京で終わったんですけど、そのときは冒頭で「Sail On」を、ラストあたりで「僕の名を持つ君へ」を歌ったんですね。そこで感じたのは、年度末で「DVORAKKIA」が本当に終わったんだなということ。それを経て、いよいよ「ENGABALL」の気持ちにガッと切り替わった気がして。そんな流れで初のZeppツアーを迎えられるのがすごくうれしいです。去年、初めてZepp DiverCityのステージに立ったときは「ついにここまで登ってきた!」と感じていたんですけど、今回は「私たちはZeppアーティストよ!」という強い気持ちを持って、堂々たるパフォーマンスをお見せしたいと思います。楽しみにしていてください!
公演情報
ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2025
- 2025年6月7日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2025年6月15日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2025年6月28日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2025年6月29日(日)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年7月6日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
プロフィール
ENVii GABRIELLA(エンヴィガブリエラ)
Takassy、HIDEKiSM、Kamusの3人による総合エンタテインメントユニット。soul juice名義で作家活動もしていたTakassyを中心に結成され、2017年3年に活動開始。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトにスタートさせたYouTube番組「スナック・ENVii GABRIELLA」が徐々に人気を集め、チャンネル登録者数が20万人を突破する。2021年3月にインディーズラストの作品となるベストアルバム「ENGABEST」をリリースした。同年10月にキングレコードよりメジャーデビュー。シングル「Moratorium」「DYSTOPIA」「CABARET」を3カ月連続で配信した。2023年6月にメジャー1stアルバム「ENGABASIC」をリリース。2025年4月にメジャー2ndアルバム「ENGABALL」を発表した。
𝐄𝐍𝐕𝐢𝐢 𝐆𝐀𝐁𝐑𝐈𝐄𝐋𝐋𝐀@エンガブ (@EnviiG) | X