ENVii GABRIELLAインタビュー|あらゆるジャンルのノレる曲を詰め込んだメジャー2ndアルバム

ENVii GABRIELLAが4月16日にメジャー2ndアルバム「ENGABALL」をリリースした。

2024年5月にミニアルバム「DVORAKKIA」をリリースしたのち、念願だったZeppでのワンマンライブを行ったエンガブ(参照:ENVii GABRIELLAキャリア史上最大規模のツアー完遂、初のZepp DiverCityで熱狂のフィナーレ)。「常に成長できている」と語る3人は、現状に満足することなく新作を生み出し、すでに次のステージへと目を向けている。

音楽ナタリーではパワフルに歩みを進めるメンバーにインタビュー。リーダーであり、ソングライターでもあるTakassyが「難しいことは一旦抜きにして、来てくれたお客さんと一緒にライブ会場をダンスホールにして踊れるような作品を作りたい」と考えたことがきっかけで作り始めたという「ENGABALL」について、じっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 草場雄介

ライブ会場をダンスホールにする作品を作りたい

──フィジカル作品としてはミニアルバム「DVORAKKIA」から約1年ぶりのリリースとなりますね。

Takassy はい。ありがたいことに年1ペースでリリースさせていただいてます。前作以降シングルのリリースがなかったので、ツアー(「ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2024『DVORAKKIA』」)が終わったあと、昨年の秋口ぐらいから3、4カ月かけて一気に制作した感じです。

──今作のテーマに“ダンス”を選んだのはどうしてですか?

Takassy 去年出させていただいたミニアルバム「DVORAKKIA」はすごくコンセプチュアルな内容で。ツアーのステージも含めて1本の映画を観ていただくような作品だったんですよ。もちろんライブではお客さんにノッていただくコーナーも作ったんですけど、全体としてショーを観てもらうような内容になっていた。それを踏まえて「じゃあ次に何をやる?」となったときに、コンセプトみたいな難しいことは一旦抜きにして、来てくれたお客さんと一緒にライブ会場をダンスホールにして踊れるような作品を作りたいと思ったんです。今回の制作はそんな思いから始まりました。

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

──その思い通り、本作には聴いていると自然と体が動き出す10曲が収録されています。しかも“ダンス”というテーマのもと、それぞれがまったく異なるジャンルのサウンドになっているところが実にエンガブらしいなと。

Takassy そうですね。これまではけっこうマニアックなジャンルもやってきたんですけど、今回は皆さんにも馴染みがあって、一聴した瞬間に自然とノれるジャンルをまとめて入れたつもりです。そのうえで、ここまで来たらもう「1つの作品の中でジャンルの被った曲は絶対入れない!」みたいな気持ちも出てきて(笑)。おっしゃっていただいたように、それこそがエンガブというジャンルを形作る、1つの“らしさ”だと思うので。

常に成長できているエンガブの今

──仕上がったアルバムに関して、どんな印象を持っていますか?

HIDEKiSM 作品を出すごとに毎回思っているんですけど、過去イチ好きなアルバムになりました。それはきっと私たち自身や、ソングライターであるリーダー(Takassy)の成長ゆえだと思うんですよ。この10曲を通して聴くと、常に成長できているエンガブの今を感じられると言いますか。私たちの歌唱方法も含め。内容的にすごくバラエティに富んでますしね。過去作を聴いてもカッコよさは感じるんですけど、今回はさらにそれが増している印象があります。自信を持って「エンガブの最新作です!」と世に出せる仕上がりになりました。

Kamus 本当にワクワクするアルバムになったと思っています。自然と体が動く曲ばかりなので、きっとお客さんもライブで一緒に踊って楽しめるはず。強力な楽曲の詰め合わせとなったこのアルバムは、ライブを通じて初めて完成するような気がします。

Kamus

Kamus

──エンガブのソングライターであるTakassyさんの手応えはいかがですか?

Takassy できあがったばかりのときは、「このアルバム大丈夫なのかな」という不安がすごくあったんですよ。新たに挑戦したジャンルも多くて、たぶん今までで一番雑多なアルバムになっていますから。一番身近にいるHIDEKiSMやKamusがこれをどう捉えるかという不安もあった。ただ、1曲1曲に関しては自分が納得いくように作れたし、どれをシングルに切っても成り立つような作品になったんじゃないかとは思っているんですけど。

──Takassyさんの不安は杞憂だったと思いますよ。本当にすべての曲が強力だし、1枚としてめちゃくちゃ楽しいアルバムになっていますから。リード曲として先行配信された「サイコダンス」と「誕生誕生 Birthday」からして、最強の破壊力を持っていますし。

HIDEKiSM ありがとうございます。この2曲はどちらも1つのフレーズを連呼するのが共通しているところで。先日、ライブ&トークイベント「エンガブの部屋」のファイナルで「誕生誕生 Birthday」を初披露させていただいたんですけど、お客様も皆さん連呼してくださってましたね(笑)。

Takassy まあ、あれは連呼するしかないわよね(笑)。

HIDEKiSM それくらい一緒に歌いやすく叫びやすいし、サビには振りも付いているので、みんなでいろんな感情を発散できる2曲になりましたね。エンガブはファンファーストな気持ちが強いので、この2曲がリードになったのは自然だったかなと。

Takassy そうね。ただ、私的には配信曲やシングル曲がアルバムの中で浮いて聞こえるのがすごく嫌なんですよ。だから当初は「サイコダンス」をアルバムから外し、違うジャンルの別の曲を入れるつもりだったんです。でも、レコード会社や事務所のスタッフからの熱意がすごくて。せっかく振りも含めてキャッチーな曲になったんだからアルバムには絶対入れるべきだと。その言葉を受けてアルバムに入れることを決めたっていう。「サイコダンス」を入れることに決めてからは、アルバムの中で浮かないようにするために全体を再構築しました。今となっては入れてよかったなと思ってますけどね。

新たな刺激を求めて

──ジャンルの異なるさまざまなダンスナンバーを作っていく作業は大変でしたか?

Takassy 今回は10曲収録することは決めていたので、いつも一緒にアレンジをしてくれているCarlos K.さんと一緒に、まずはやりたいジャンルを10曲分出したんです。で、そこからが新しい挑戦だったんですけど、Carlosさんの作家事務所に所属する方々に、それぞれのジャンルをテーマにしたトラックを作ってもらうことにしたんですよ。でも結局そこで作っていただいたトラックをそのまま使うことはなく、最終的に私がいろいろ手を加えさせてもらうことになっちゃったので申し訳なかったんですけど。いただいたトラックからいろいろなインスピレーションを間違いなく受け取ったし、すごく新鮮な制作作業でしたね。

──そういうやり方を選んだということは、ソングライターとして新たな刺激を求めたい気持ちが強かったということですか?

Takassy まさにそれが一番大きかったです。自分的には前回の「DVORAKKIA」でやり切った感があって。そのあとのツアーも含め、「エンガブってこうだよね」というものがちゃんと形にできた感覚もあった。だからこそ、そのままの流れで新しいものを作るとマンネリ化してしまうんじゃないかという不安があったんです。それをCarlosさんに相談した結果、今までとはまったく違うアプローチで曲を作ってみることになったんです。意図的にそういうやり方をした感じですね。

Takassy

Takassy

──他者のエッセンスを求めることができるのは、思考が柔軟だからですよね。

Takassy 極論、最終的に売れればいいやって思ってるから(笑)。もちろん作家としてのこだわりはあるし、HIDEKiSMとKamusのことを一番理解しているのは私だと思うので、最終的には自分がハンドリングはするべきだし、したいとは思っているんです。でも、そこにほかの方のエッセンスを取り込むことに関しては全然こだわりはなくて。Carlosさんにアレンジしてもらうときも、「好きに料理していいよ」みたいな感じですからね。そういうクリエイターってあまりいないらしく、Carlosさんはいつも驚いてますね。

「あんたはいつも言わなくていいことを言うわね」

──その柔軟さは強力な武器だと思います。HIDEKiSMさんとKamusさんは、そんな新たなアプローチで作られた楽曲たちの中で特にお気に入りの曲はありますか?

HIDEKiSM 私はもう「利害一致」!

Takassy 「利害一致」に一致してしまって(笑)。

HIDEKiSM そう。一致しちゃって(笑)。デモの段階で姉に聴かせたんですけど、2人で歌詞の内容に大爆笑してしまって。「わかるー!」「これでしかない!」みたいな。っていうか、「これ言っちゃダメでしょ」と思う歌詞でもあるんですけど(笑)。

Takassy そうそう。「あんたはいつも言わなくていいことを言うわね」って言われた(笑)。

HIDEKiSM 恋愛はもちろん、それ以外の場面においても、誰しも少なからず利害関係みたいなところに蓋をして付き合っていく部分があるじゃないですか。その蓋をしていた部分を見事に言葉にしちゃってますからね。そこに衝撃を受けました。サウンドもね、今までのエンガブにはなかった今風な雰囲気だけど、でもどこかにエンガブらしさも感じられる仕上がりになっていて。聴いていて心地いいし、すごく新鮮な感じで楽しめました。

HIDEKiSM

HIDEKiSM

Takassy この曲は“架空のタイアップ狙い”っていうコンセプトなんですよ。深夜のドロドロした30分ドラマの主題歌になるようなものを、エンガブのマニアックな曲を手がけてくれている(Takao)Ogiくんと作りました。最近のメインストリームになっている生っぽいサウンドをダンストラックとして落とし込んでいった感じですね。

──気持ちいいサウンドに乗せて歌われるあけすけな歌詞は、年齢を重ねた人ほど共感しそうですよね。ハッとさせられるというか。

Takassy 今回は年齢層が上の人に刺さるものにしたいなと思っていて。全曲、そこは意識しました。もちろん10代、20代の子でも共感できるようには書きましたけど、さまざまな経験を経て30代に突入した人にこそじわっとくるような。そんなアルバムになっていると思います。