ENVii GABRIELLA、7曲で世界一周!さらなる大海を目指して漕ぎ出した3人の航海

ENVii GABRIELLAの新作ミニアルバム「DVORAKKIA」が5月29日にリリースされた。

“航海”をテーマに、アフロビート、2ステップ、ジャージークラブ、R&B、カントリー、レゲエ、J-POPなどさまざまな音楽ジャンルの楽曲群で世界一周の旅へと誘う「DVORAKKIA」。本作には先行配信された「哀恋」を含む全7曲が収録されているが、サウンドの異なる2曲を1曲としてまとめるという離れ業を駆使したことで、実質11編の“航海日誌”を堪能できる作品になっている。

エンガブの音楽的ルーツを垣間見せつつ、同時に新たなトライアルもたっぷりと詰め込んだミニアルバムについて、メンバー3人に話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 梁瀬玉実

7曲で世界をめぐる航海へ

──ENVii GABRIELLAは今年2月、タイのバンコクで開催されたアジア最大級のオールジャパンイベント「JAPAN EXPO THAILAND 2024」に出演されましたね。初の海外ライブはいかがでしたか?

Kamus 緊張はもちろんあったんですけど、みんなが振付を一緒に踊ってくれた「BL」をはじめ、どの曲もめちゃくちゃ盛り上がって。イベント後のミーグリでは「やっと来てくれた!」とか「隣の国から来ました」とか、海外のファンの方からの声を直接聞くこともできたし、しっかり楽しめた実感がありますね。

HIDEKiSM シンプルにすごく楽しかったです。エンガブにとって初の海外公演が、セクシャルに対してすごく寛容なタイだったことにもご縁を感じたんですよ。だからこそ気負わずにライブができた感覚もあって。日本とはまた違う、タイのお国柄を感じる盛り上がりを見て、「受け入れてもらえてる!」っていう大きな手応えを感じました。

Takassy 私はもともとタイBLを愛しているので、そこからインスピレーションを受けて作った「BL」という曲をタイで披露できたことがまず感無量でした。「夢が叶ったー!」みたいな(笑)。ライブはもちろん、しっかり観光ができたのもうれしかったですね。アユタヤにも行ったし、向こうのショーバーみたいなところでキレイなオネエちゃんや半裸の男の人を観て楽しんだり。満喫しまくりましたよ(笑)。

Kamus 大人の遊びを(笑)。

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

──海外のエンタメに触れることは大きな刺激になりますよね。

Takassy そうそう。私は海外に行くこと自体が初めてだったので、それはすごく感じました。タイで流行っている曲を現地で聴くとまた違ったイメージが浮かんできたりもしますからね。そういう点では、いいインスピレーションをもらえたと思います。

HIDEKiSM 私は3回目のタイでしたけど、プライベートで行ったときとはものの見方も変わってくるというか。お仕事モードでたくさん刺激をもらえたことが、自分にとってのいいインプットになりました。

Kamus タイの方のあったかい人柄を感じられたのもよかったですね。実は向こうでHIDEKiSMがケータイを落としたんですよ。

HIDEKiSM そうなんです!「終わったわー」って思いましたよ(笑)。

Kamus 海外でケータイを落としたらもうパニックじゃないですか。でも私がHIDEKiSMのケータイに電話したら、拾ってくださったタイの方が出て。カタコトの英語で今いる場所を伝えてくださったことで無事、HIDEKiSMのもとに戻ってきたっていう。「コップンカー!」ってたくさんお礼をお伝えしたんですけど、その方は名前も言わずサーッと帰っていって。それがもうカッコよすぎたんですよね。めちゃくちゃ温かい“微笑みの国”だなと改めて思いました。

──初の海外ライブを経験したことで、ワールドワイドな活動がエンガブの視野に入ってきましたか?

Takassy もちろんお声がけいただければ海外公演は今後もやっていきたいですし、海外の方ともたくさん交流したい気持ちはあります。ただ、作品作りやエンガブのプランにおいては海外進出をまったく考えていないんですよ。だってね、日本国内のことでまだまだ手一杯なのに、海外のことまで考えるなんてできないじゃないですか(笑)。日本での活動をしっかりしていく中で、例えばサブスクを通して海外でも火が付くとか、そういったことが起きたらうれしいですけどね。

──そういうスタンスで活動する中、タイのイベントに呼ばれたというのは改めて大きな出来事でしたね。

Takassy それは本当にそう思います。うれしかったです。

──そんなエンガブから2ndミニアルバム「DVORAKKIA」が届きました。今回は“航海”をテーマにしたコンセプチュアルな内容になっていますね。

Takassy 私は昔から船にまつわる曲を作ることがけっこうあったし、自分たちの活動を船に例えることも多かったんですよ。エンガブという船にスタッフさんやファンの方がどんどん乗り込んでくれて、その規模がどんどん大きくなっていくみたいなイメージで。今回、ミニアルバムのコンセプトを“船”“航海”にすると決めた段階で、「それってどういうことなんだろう?」って改めて考えたところはありましたね。

──結成から7年を経た今のエンガブという“船”は、当初と比べてかなり大きくなった印象がありますよね。そのあたりの実感はどうですか?

HIDEKiSM まだなんか中途半端なんですよねえ(笑)。タイタニックばりの豪華客船って感じでは全然ないので。乗ってきてくださった皆さんをおもてなしできるような船室はできているような気はしますけど、願望としてはね、もっともっと大きい船にしていきたい気持ちが強いですから。

Takassy うん。そんな気持ちが今回のミニアルバムには込められていますね。

──“航海”というテーマにふさわしく、本作に収録される楽曲はそれぞれがジャンルの異なるサウンドアプローチになっています。通して聴くと、本当に世界中を航海した気持ちになれるんですよね。

Takassy 「航海と言えば世界一周だよな」と思ったので、自然とすべての曲を違った国のジャンルにしようという考えになりました。今までもいろいろなジャンルの曲を入れたアルバムを作ってきましたけど、今回は「この曲はこの国発祥で」ということまで考えながら、バランスよく作っていった感じです。

──しかも前半の4曲は、それぞれ異なるサウンドを持った2曲を合体させた作りになっていて。7曲入りのミニアルバムではありますが、厳密に言えば11曲のフルアルバムとも言える内容です。

Takassy そうです。11曲入りなんですよ、ホントは。“航海”というコンセプトを決めた段階で、これはミニアルバムという規格には収まらないと思ったんです。だから勝手に10曲分のデモを作って、フルアルバムで出したいですっていうプレゼンをさせてもらったんですよ。「私たち、これだけ熱量あります!」みたいな(笑)。で、レーベルの方もいろいろ検討してくださって、最終的に7曲ならいけるということになったんですけど、自分としては不満だったんです。最初に10曲作っちゃってるもんだから、「3曲も減ってるじゃない!」って(笑)。

Takassy

Takassy

HIDEKiSM 勝手に作ったのにね(笑)。

Takassy 7曲で世界一周にしようと考えはしたんですけど、それが本当に難しくて。でも、そこでふと思ったんです。私たちは前から曲の途中でジャンルがガラッと変わるような曲をよく作っていたので、「抱きかかえ的な感じで違う2曲を1曲にすればいいんじゃない?」って。レーベルの人には締め切りのギリギリまでそのことを言わないで、「いやこれ、あくまでも1曲なんです!」と言い張りました(笑)。無理やりねじ込んだ感もあるんですけど、結果的にはスタッフの方も私の思いを汲んでくださいましたね。メンバーたちは半分呆れ顔でしたけど。「もうやりたいようにやり切りなよ」みたいな(笑)。

HIDEKiSM 「またなんかやってるわ」っていう(笑)。私としては7曲に決まったときに、いろんなことが重なるなと思ったんですよ。エンガブは今年で結成7周年だし、航海というテーマからすれば7つの海にもつながるし。7が3つでフィーバーじゃんって。でもTakassyはそれじゃ満足できない。だったらやれるだけやってみようよっていう気持ちでしたね。最終的にTakassyの思いをたくさんの方が尊重してくださったのは、ここまで築いてきた関係値あってこそだと思うので、それが1つの作品に昇華できたことは本当に大きな意味があるなと思います。

Kamus 作品としても本当に面白いものになったしね。サウンドがどんどん変わっていくからまったく飽きないし、1曲ごとにしっかりとした物語もあるし。そこはTakassyの才能が存分に発揮されていると思います。まあエンガブという船の船長としてはだいぶ破天荒ではありますけど(笑)。

Takassy あはははは。

Kamus でも船長が破天荒なほうが面白いですからね。そんな船長が作り上げた曲たちはどれも大好きです。

ENVii GABRIELLAが母船

──ミニアルバムの1曲目は「Mother Ship / Message in a Bottle」。アフリカで航海をスタートさせた船は大西洋を経由して進んでいきます。「Mother Ship」にはエンガブという船に乗るすべての人に向けられたメッセージが込められています。船出にふさわしい曲ですね。

Takassy 私たち3人のENVii GABRIELLAが母船となって、いろんな人たちが戻ってくる場所になったらいいなっていう思いを込めました。“航海”というコンセプトを決めた段階で、「Mother Ship」という曲は絶対に入れたいと思っていました。

Kamus 歌詞にある“We are family”のところはみんなで歌っている光景が浮かびますよね。あそこでみんなが一致団結する未来が見えるので、ライブでやるのがすごく楽しみです。

Kamus

Kamus

──「独りにはしない」というフレーズもグッときますよね。

Takassy 書いてるときに「クサッ!」って思ったんですけど(笑)。でもエンガブという船を大きくしていくために、今回は思い切ってストレートな言葉で書くことにしました。

こういうのもいけるのね

──2曲目「Portrait of Love / Petal Dance」で船はイギリスから大西洋経由でアメリカ西海岸へと向かいます。

Takassy 私とHIDEKiSMはもともとクラブでR&Bを歌っていたりしたので、1曲目の「Message in a Bottle」からこの2曲までは1990年代後半から2000年代のクラブ系エッセンスをふんだんに入れました。自分たちにとってはちょっと懐かしいサウンドであっても、1周回ってまた今流行っていたりしますからね。

HIDEKiSM 時代を経ても色褪せないんだなっていうことを改めて感じさせてくれるサウンドですよね。すごくおしゃれだし。レコーディングしててもすごく楽しかったです。過去の楽曲ではわりと張り上げて歌う曲が多かったんだけど、この2曲に関しては淡々と、ずっとミックスで歌ったりもしています。そこは聴き心地のよさを意識した結果ですね。

Takassy 今作には“チル”というテーマもあったんです。なのでボーカルのキーも1音半から2音くらい下げているところがあるし、さらっと歌える曲が多くなっていますね。今回いろいろなジャンルを研究してみたことで、サウンドによって声の出し方が全然違っていることに気付いて。それを踏まえて歌い方はかなり試行錯誤しました。HIDEKiSMと一緒に、自分たちなりの歌をどう落とし込んでいくかという作業をすべての曲でやりながら。

HIDEKiSM うん。だからいつも以上に、楽曲にちゃんと乗った歌になった手応えがありますね。「Portrait of Love」のDメロは、けっこう苦手な感じの歌い方だなと思っていたんですけど、結果的には「こういうのもいけるのね」という気付きもあって。それはすごくうれしかったです。