ENVii GABRIELLAがメジャー1stミニアルバム「Metaphysica」を3月9日にリリースした。
本作には昨年10月から3カ月連続で配信されたデジタルシングル「Moratorium」「DYSTOPIA」「CABARET」に、エンガブならではの視点で描き出された胸を打つラブソング「Finally Found You」やインディーズ時代からの人気曲を“リブート”した「Ride/Reboot」、聴き手を一瞬でハッピーな気分にさせてくれるリード曲「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」などの新曲を加えた全8曲が収録されている。
メジャーデビュー以降、その認知度の高まりを実感しているという3人に、本作の制作にまつわる話をたっぷりと聞いた。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 斎藤大嗣
熱量がどんどん上がってきてる
──メジャーデビューから約5カ月が経ちましたが、エンガブを取り巻く環境に何か変化はありましたか?(参照:ENVii GABRIELLA「Moratorium」インタビュー|“オネエ”を掲げ3人でつかんだメジャーデビュー)
Takassy ENVii GABRIELLAというプロジェクトに対して、スタッフさんの後押しの熱量がどんどん上がってきてる実感がありますね。「もっと行こう! もっと行こう!」みたいな勢いをこの5カ月、思い切り背中に感じてます。
Kamus 周りの方たちの熱量が高い分、それに負けないくらい私たちの熱量も高まっていますよね。初心を忘れないようにしつつ、この3人が先頭に立って皆さんを引っ張っていけるようにという思いがより一層強くなりました。
HIDEKiSM YouTubeのチャンネル登録者数やSNSのフォロワー数が増えたりだとか、いろいろな現場で「エンガブのことずっと好きでした」と言ってくださる関係者の方が増えたりだとか、ENVii GABRIELLAという船がどんどん大きくなっている印象はありますね。それに対してもちろんプレッシャーもあるんですけど、でもそれはいいプレッシャーでもあって。エンガブとしての責任をより感じながら、身を引き締めて日々を過ごせている感じです。
──メジャーでより多くの人たちに存在を発信できていることで、ファン層が広がったところもあったんじゃないですか?
Takassy 確かにそうですね。もともと私たちのファンは20代後半から40代くらいの成熟した女性の方がほとんどだったんですよ。でも最近は男性やLGBTQに属する方からの応援もすごくいただけるようになったりして。
HIDEKiSM 同性に好いていただけるのは本当にうれしいわよねえ。ゲイの人たちに対しては、最初はむしろ嫌われるくらいの覚悟でやり始めたところがあったんですよ。
Takassy そうね。あくまで一般論なんですけど、ゲイの方っていうのはものすごくカッコいい女か、カッコいい男、かわいい男に惹かれる傾向があるんですよ。だから、そういう意味ではメイクをバッチリして「オネエです」って言ってる私たちには好かれる要素が一切ないというか(笑)。でも最近は、「元気になる」「希望を持てる」といった感想をゲイの方からもいただけるようになって。
HIDEKiSM ライブに来てくれる男性の方が増えてきたしね。
Kamus うんうん。そういう変化はすごくうれしいことです。
──エンガブが結成以来やってきたクオリティの高い楽曲に、メジャーデビューをきっかけに気付いた人も多いでしょうしね。
Takassy ただ単に「イヤーん、もう!」っておちゃらけてるだけのオネエだったら引っかかってもらえなかった人もきっと多いと思いますね。自分たちで言うのもアレですけど、音楽をメインフィールドとしていることを地道に、明確に打ち出してきたことが、より多くの方に好いていただけるようになった1つの理由かなと思います。
HIDEKiSM メジャーに来たことで、音楽のことがより好きになってますから。「私たちが本当にやりたいことはこれよね」って改めて実感できています。
ネタには困らない3人で作り上げる楽曲
──メジャー1stミニアルバム「Metaphysica」を聴かせていただくと、音楽性の幅がどんどん拡張していってることも伝わってきますね。
Kamus そうなんです! 以前のエンガブに対して、私はちょっとダークなカッコよさ……カザーキ(ハイヒールを履いてパフォーマンスするウクライナの男性ダンスユニット)のようなイメージを持っていたんですよ。でも今のエンガブは本当に幅広いジャンルの音楽をやれるようになって。そこは大きな成長と進化だと思います。
──本作の制作はいつ頃からスタートしたんですか?
Takassy メジャーデビューした2021年10月から3カ月連続でデジタルシングルを配信したんですけど、その流れのあと、2022年の頭にミニアルバムを出すことは当初から決まっていたんです。なので制作はずっとこのミニアルバムを目がけて進めていた感じで。デビュー前に提出したデモ集には第1弾デジタルシングルだった「Moratorium」と一緒に、ミニアルバムに収録されている曲のほとんどはすでに入っていて。それをアレンジャーのCarlos K.さんとブラッシュアップさせていきました。「Sorry Not Sorry」や「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」はそのあとに作った感じですね。
──作品全体としてのイメージは何かあったんですか?
Takassy 多ジャンルの楽曲を収録するというコンセプトは初めから決めていました。正直、メジャーに来たらいろんなことに制限があって、好きなことができないだろうって覚悟もあったんですよ。でもキングレコードの方には「今までのエンガブの色で売っていきたい。だから好きなように作ってください」と言っていただけて。なので本当にストレスなく、自分がやりたいもの、好きなものを全力で作れた感じなんですよね。そこは本当にありがたいなって思います。
──Takassyさんが楽曲制作するにあたって、HIDEKiSMさんやKamusさんにアイデアを求めることもあるんですか?
Takassy どう?
HIDEKiSM けっこうお伺いは立ててくれますよね。「最近、何にハマってる?」とか「どんな音楽が好き?」とか聞いてくれたり、恋愛事情のようなプライベートのことを聞かれたりもするし。そういったことをちゃんと織り交ぜて考えたうえで楽曲にしてくれるんです。だから音楽面はTakassy主導でやってはいますけど、どれもがちゃんと3人の曲になってますよね。3人の共通認識を持った楽曲たちだから、私やKamusもまるで自分が生んだ子のようにかわいがれるっていう。
Takassy あら、うれしい!
HIDEKiSM ……って言っとくとちょうどいいかなー、みたいな(笑)。
Takassy ザケんなよ!
Kamus あははは(笑)。
Takassy まあでも、この2人の存在が楽曲制作においての刺激になるのは間違いないです。この人(HIDEKiSM)には不幸なことしか巻き起こらないからネタには困んないし。
HIDEKiSM ヤーダー!
Takassy Kamusに関しては3人の中で一番考え方が違う人間なので、それが新鮮な視点をもたらしてくれるところがありますから。
Kamus うふふふ。そうだったらうれしいですね。私的にはTakassyの作る曲にハズレは基本的に一切なくって。毎回、振りを作るにあたって曲の内容について詳しく話を聞くのがすごく楽しみなんです。パッと聴きでまず感動して、そのあとに曲に込められた思いを詳しく聞いてさらにもう一度感動しちゃうみたいな。楽しみが2回待ってる感じですね。
Takassy HIDEKiSMとKamusの意見や感想をしっかり聞いていくことは、私が普段から一番注意を払っているところだと思います。
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LGBTQにまつわる言葉自体がなくなればいいな