最後のピースは「Brighter Than Ever」

──曲作りに関しては、以前のようなモードにすぐ切り替えられました？

JOEY　結果的にいいのができたと思うんですけど、作っている最中はしんどかったです。今回の「AIN'T SEEN NOTHING YET」というアルバムは、待ってくれている人たちのことを想像しましたし、ライブを意識した作品になってます。1回音楽シーンを離れて見てきた景色も書けたなと思うし、活動休止してからの思いも詰めました。

──アルバムタイトルに込めた意味はなんですか。

JOEY　「卵戦争」という自分らの企画を9月24日に開催して、その日にアルバムのリリースを発表することにしました。だけど、タイトルだけが決まらず焦っていたんです。12曲目の「Brighter Than Ever」は松原さんのことを歌っているんですけど、この歌詞は天国で笑ってくれているイメージもできますが、俺らからすれば「まだまだこれからやから、見とけよ」ということを歌詞に入れたかった。それで、どういう英語を当てはめるか調べていたんです。出てきたのが「AIN'T SEEN NOTHING YET」の一文で、和訳すると「未だ何も見てない。まだまだこれから」という意味なんです。そこにグッときて2人に伝えたら「いいやん」と言ってくれて。新しいEGG BRAINにふさわしいタイトルだなと思いました。

──再始動のこともそうですけど、今作においても松原さんの存在は大きいんですね。

JOEY　「Brighter Than Ever」ができてないとき、11曲だけでアルバムを作る考えもあったんです。だけど、どうしても何かが足りない。あと、この曲って最初は全然違う歌詞を書いていたんです。でも、今しか松原さんのことは歌えんよなと思ったし、EGG BRAINしか歌えへんのちゃうかって。それを踏まえて歌詞を書き直して。なんか、「Brighter Than Ever」によって足りなかった最後のピースがハマった感じがしたんですよね。

Uchie　「Brighter Than Ever」は俺が最初に聴いたんですよ。ほかの曲ももちろんいいんですけど、この曲を聴いた瞬間に「あ、これや」みたいな。松原さんに対しての曲というのを知っていたから、聴いてて泣きそうになったんですよね。この曲ができた瞬間はアルバム全体が開けたし、感動すら覚えました。ほかにも「Dear My Friends, Thanks For A Miracle」とか「Surfin' In The Blue」も好きなんですよね。

JOEY　イントロの短い曲を作りたいね、という話もしてて。今の2曲もそうやし、「Welcome To The ROCK SHOW」で作れた。

Uchie　ライブのオープニングで使えるような、「1分くらいの短い曲を作りたいね」と話していたんです。それが今回「やりたいことができた」と思えましたね。あとは「Diamond」のような“ザ・ハッピーな曲”もウチららしいなって。

KUN　今回は新曲以外に過去の楽曲も収録してて。「METEOR」はもともと会場限定で発売していたんですよ。でもお客さんからDMで「どうにかして聴きたい」という声を多くもらっていたので、じゃあしっかり録り直して、今回のアルバムに入れようと。あと「MUZIC」に関しては、シングルをリリースしてから活動休止に入ったのでアルバムでリリースできなかったんですよね。「過去の曲を入れていいのか」という話し合いもしたんですけど、EGG BRAINを知らない人もたくさんいると思うので、思い切って収録することにしました。

Uchie　過去作もあるし、今の気持ちを投影した新曲もある。だから、これを聴いておけばEGG BRAINがわかる作品になったなと思います。それに、過去にありそうでなかったアルバムよね。前はアップテンポで疾走感のある曲が多かったんですけど、今回はミドルテンポでみんなを乗せる。速いテンポじゃなくても戦うぞ、という姿勢で演奏しましたね。

JOEY　1曲それぞれのキャラクターが立っていると思うので、いろんなシチュエーションで楽しめると思います。全体的にはシンプルで、3人でやっている感がすごくあるって。だからこそ、ライブでの再現がちゃんとできる。ツアーも楽しみですね。

KUN　レコーディング中は、1枚通してのバランスがどうなるか不安やったんですよ。ただこうして曲を並べてみると、絶妙なバランスになったかなって。1曲ずつ個性は違うんですけど、1枚にまとまったらまた違うメッセージを感じる。すごく均整の取れたアルバムになったと思います。

──ちなみにジャケットに4人が描かれてますけど、もう1人は誰なんですか？

Uchie　あ、それは僕も聞きたい。

JOEY　僕も知りたいな。

KUN　「聴く人がいて4人」という感じちゃいますかね？ 僕らと、あなたがっていう。

Uchie　あと、SNSで「EGGの3人と松原さんじゃないか」という人もおったんですよ。だからいろんな考察ができますよね。

JOEY　ま、CDを買ってくれたらジャケットの中身を知れるんで。

KUN　買っていただけたら、ヒントがわかるんじゃないですかね！　

JOEY　そうやね（笑）。まとめると2019年に復活して、ここまでは1.5章やったかなって。このアルバムをリリースすることで本当の第2章がスタートする気がしてるのでガンガン行きます。

ファンとの間に生まれる奇跡

──改めて、EGG BRAINは皆さんにとってどんな存在ですか。

JOEY　あー……やっぱり自分自身かな。曲を聴いてて僕っぽいなと思うし、自分の分身な感じしますね。

──アルバムを作ったあとも聴き返すことはあります？

JOEY　めちゃめちゃ聴きますね。EGG BRAINが大好きなんで、家でもずっと聴いてます。

──10年以上のキャリアがありますけど、歌っていることの変遷はどう感じてますか。

JOEY　初期の頃は主に空想で曲を書いていたんですよ。「こんなんやったらいいのにな」って感じで。今のほうがリアルになってきてます。言わなあかんことははっきり言わなあかんし、守らなあかんことは守りたいという思いが強くなって。だからこそ「MUZIC」のような歌詞が書けたり、毎日が楽しいよねっていう「Bob」のような歌詞が書けた。

KUN　僕はこのバンドをやっていなかったら、もっと弱くてだらしなかったと思うんですよね。EGG BRAINを通じて自分自身も大きく成長できたし、視野も広がりました。自分の人生を振り返ったときに、一緒に成長していけるものというか。今になると「このバンドをやってなかったら、どうなっていたんやろう」って。そう考えたら、自分の人生において大事な存在ですね。

Uchie　僕にとっては、自分を表現できる居場所ですね。最初に言ったように、4年間離れていたことで「EGG BRAINはほんまに大事やな」と思い知らされた。過去に山ほどバンドをやっているけれど、その中でもより特別なバンドです。一生かけて人生最期までやり抜きたいな、と思ったバンドなんです。改めて、こうやって聞かれると自分でも再認識しますね。やっぱりそうやなって納得しながらしゃべってます。

──そんな新生EGG BRAINは、2月24日にツアーが始まりますね。

JOEY　アルバムを聴いているだけで、ライブを楽しんでくれている人の姿が思い浮かぶんですよね。今、日本各地を回るのがすごく楽しみです。「Dear My Friends, Thanks For A Miracle」に込めた意味でもあるんですけど、その日のライブは人生で1日しかないわけで。そこに集まってくれている人たちの前でライブをできるのは、ほんまにミラクルやと思うし。その日しか作れない奇跡があると思うので、1日1日を大切にライブしていきたいと思います。

Uchie　そうね。今、ここでインタビューをしてもらっているのも巡り会わせやし、ぶっちゃけ世の中は奇跡で成り立っている。1分1秒が奇跡で、人の命もそうやし……そんなことをあの人（松原）の死からいろいろと考えましたね。だって39歳で亡くなってしまう人もおれば、0歳で亡くなってしまう人もおれば、90歳まで生きる人もおる。毎日が奇跡みたいなものやから、ライブで演奏する俺らがいて、来てくれるお客さんがいる。それが奇跡やもんな。

JOEY　うん。だから一瞬一瞬を楽しみながらライブしたいですね。