これが私立恵比寿中学だ!“Reboot”したエビ中が真っ白な明るい未来に色を付けるセルフタイトルアルバム (2/3)

「真っ白な明るい未来」にみんなで色を付けるアルバム

──そんな9人での初めてのオリジナルアルバムが、グループ名を冠したセルフタイトルの「私立恵比寿中学」という。

星名 最初にアルバムを作るという話があったとき、打ち合わせの資料にどこにもアルバムのタイトルがなくて。みんな混乱してたら「これがアルバムのタイトルです」って。メジャーデビュー10周年と、新体制という節目の中で「これが私立恵比寿中学です」と打ち出すものだから、聴いてくださる方の印象もこのアルバムで決まってしまうという責任とプレッシャーを感じました。

真山 大学芸会の前だったしね。まだ「この9人で私立恵比寿中学」という自信も今ほど持てていなかったから余計に。

星名 「エビ中ファミリーのみんなと一緒に作っていく」というコンセプトもあったので(参照:エビ中、みんなと作る7枚目のアルバム3月リリース!大橋ちっぽけ提供曲を先行配信)、その中でどういう見せ方をしていくか、メンバーでもいろいろ話し合って考えました。

──エビ中はここ数年で打ち出し方も少しずつ変わってきましたよね。先ほどの「年齢を重ねてきた」という部分も大きいと思いますが、単に上から降りてきたものを発信する旧態依然としたアイドル的な打ち出しではなく、メンバーのSNSなども活用しながらファンとのリアルな結び付きをより強めているような。

真山 確かに。エビ中を応援してくださっている皆さんは、すごく私たちの心に寄り添ってくれている感じがあって。私たち自身も、皆さんのことを思いつつも形にすることがなかったので、このアルバムでは一緒に思い出作りをするような感じもあってうれしかったです。

──ではここからアルバム収録曲について伺っていきます。1曲目は先行配信された「Anytime, Anywhere」。今のエビ中の明るさ、軽やかさが表れたポップな曲ですね。

安本 この曲はアルバムを象徴する1曲だなと思います。今の時代だからこそ感じる不安もあれば、今がこんな世の中だからこそ、小さな喜びをすごく大切に感じられることもある。「じゃあこれから何をしていく? どうやって楽しいことを見つけだしていく?」ということを、すごく明るく考えられる曲なんじゃないかなって。大学芸会でだいぶ見えてきたとはいえ、9人のエビ中はまだまだ未知な部分が多くて、私たち自身も正直どうなっていくかわからない。でも、それを不安に思うんじゃなくて、アルバムのコンセプトでもある「真っ白な明るい未来」を私たちで色付けていこうよ、という気持ちがこの曲で表現できていると思うんです。セルフタイトルのアルバムを出す、そしてこの「Anytime, Anywhere」が収録されると決まったとき、私の中では「いけるな」という自信が持てました。胸を張って「いい曲でしょ?」って言えます。

──2曲目の「イエローライト」は、安本さんが悪性リンパ腫治療のため活動を離れるという、エビ中にとって非常につらい時期に行われた2020年の大学芸会で歌われ、「最高だよって笑うため 私は足踏みしたりするんだ」というメッセージがすごく刺さりました(参照:エビ中の新曲「イエローライト」ライブ映像、歌詞は安本彩花の手書きだった)。今回ついに初音源化、かつ9人での歌唱が実現しました。

星名 たむらぱんさんからこの曲をいただいたときは、エビ中への手紙をもらったような気分で。「立ち止まってもいい」と歌う応援ソングはなかなかないと思うし、長年エビ中のことを見てくださっているぱん様だからこその曲だと思うんです。エビ中ファミリーのみんなにとっても大切な曲になっていて。エビ中の歴史を踏まえた曲に3人の声が加わったことで、「9人で私立恵比寿中学だ」と今の私たちが表現できていると思います。

──このメッセージはエビ中が歌うからこそ響く説得力があると思うんですが、エビ中に人間力を求めるなんて、それこそ10年前は考えてもいなくて(笑)。

星名 それなー!ですよ(笑)。

安本 ホントそう(笑)。うちら、ただ生きているだけなのに。

真山 大御所のロックスターの方とか、すごく説得力のある名言を持っているじゃないですか。でも、皆さんきっと普通に自分を生きているだけだと思うんです。だから周りからそういう評価を受けるのはうれしいですけど、自分たちとしてはよくわからないですね。私たち、こんな感じですし(笑)。

真山りか

真山りか

安本彩花

安本彩花

星名美怜

星名美怜

年齢感の違う9つの解釈で表現される“多様性”

──3曲目からはどんどん書き下ろしの新曲が出てきます。まずは「きゅるん」。

桜木 これは私の推し曲です! デモを聴いたときから、私が好きなK-POPに近い雰囲気だなと思っていて。

──確かにK-POP的な今どき感のあるトラックですね。

真山 たぶん心菜が加入していなかったら、こういう曲をやろうという発想もなかったと思うんですよ。新しくなったエビ中を象徴する1曲ですね。

桜木 K-POPっぽさもあるけど、すごくエビ中らしさもあって。どっちも好きだよという人は楽しみにしていてほしいです。

──続く「ハッピーエンドとそれから」はSaucy Dogの石原慎也さんによる提供曲です。アルバム収録曲の情報が出たとき一番話題になっていましたね。

真山 私はこの曲大っ好きです。曲の雰囲気もいいですし、歌詞で描かれている年齢感が今の自分に近いのが特に好きなポイントで。昔お付き合いしていた人に対して、大人になった自分が街の風景と合わせて思いを馳せるというラブソングなんですけど、レコーディングの時点ではタイトルが違っていたんです。最終的にこのタイトルになったとき、もっとグンと好きになりました。「この2人はハッピーエンドを迎えて、そのうえでの“それから”だったんだな」って。私と同世代の人、もっと年上の人にも響く楽曲なんじゃないかなと思うんですけど、それをこの9人が歌っているというのも面白い。声の年齢感はバラバラなんだけど、それぞれの物語の主人公が感じられて、それがこのアルバムのテーマの1つである「多様性」にもつながっているのがいいなあと思うんです。早くライブで歌いたい。

──小林さん、今何か途中で言おうとしました?

小林 いや、今まやさんのタイトルの話を聞いたとき「ハッ、この人たちハッピーエンドだったんだ!」とうれしくなっちゃって(笑)。

柏木 すごいちっちゃい声で「ハッ、そういうことか……」って言ってた(笑)。

柏木ひなた

柏木ひなた

小林歌穂

小林歌穂

中山莉子

中山莉子

真山 そうなんだよ! 学生時代の青春を「ハッピーエンド」ってたとえているのはめちゃめちゃキュンじゃない?

風見 私は小さい頃に好きだった男の子を思い浮かべながら歌いました。

真山 そこがいいんですよね!

星名 その年齢差がこの曲はいい感じで出てる。

真山 意外と年下チームが年齢を感じさせるパートを歌っていたりするのが、すごい曲だなと。曲はライブで歌い続けて育っていくし、年齢によって歌っているフレーズの深みも増していったりするなと感じるんですけど、それを3人がこれから感じていくのかなと思うと、それも楽しみですね。

新たな作家陣との組み合わせで生まれたエビ中の新規軸

──5曲目の「トキメキ的週末論」は児玉雨子さんの作詞で、同じく児玉さんが作詞した「オメカシ・フィーバー」(「playlist」収録曲)と通じるディスコ路線ですね。

中山 児玉さんは言葉選びが面白くて。アイドルが好きな人にはたまらない曲だと思います。

真山 児玉さんはハロー!プロジェクトの楽曲のイメージが強いですけど、ハロプロさんの楽曲はもっと強くてカッコいい、1人でも生きていける強くて凛々しい女性感がありますよね。エビ中だと女子会でわちゃわちゃやっている……女子校感というのかな。同じ作詞家さんでも歌う人で世界観が違うのは面白いですね。

小林 「オメカシ・フィーバー」から「トキメキ的週末論」を続けて聴くと楽しそう。おめかしして生き生きしているような(笑)。

桜木心菜

桜木心菜

小久保柚乃

小久保柚乃

風見和香

風見和香

──次の「シュガーグレーズ」はTORIENAさん参加と聞いて驚きました。これまであったクラブ系のトラックとも違う、攻撃的なサウンドで。

柏木 ピンクや紫のフィルターがかかってるような、カラフルな感じ。レコーディングのテイクの数、超少なかったよね。みんな1回か2回で歌入れが終わって、大丈夫かなと思ったら「あとでいじっとくんで大丈夫でーす」って(笑)。

星名 レコーディング終わるのめっちゃ早かったよね。30分くらい?

真山 アイドルで全編オートチューンは攻めだよね。でも「まだまだ足りない」みたいなワードがアイドルらしいなあとか、ちゃんと外さない感じで。曲の構成もちょっと珍しいですね。

小林 ライブでどうなっちゃうんだろう。

安本 DJブースを作りたい。

──そして「さよなら秘密基地」も今までにない新しさを感じました。こちらも初顔合わせとなるけんたあろはさんの提供曲で、ボカロ曲っぽい世界観は10代のファンに刺さりそうだなと。

小久保 私はこの曲が一番好きです。プロローグから始まる物語のようになっていて、歌詞も深いし、音だけ聴いていても楽しい楽器が鳴っていて……好きです。1人で聴きながら頭の中でアニメを浮かべてました。

真山 あー、絵が浮かびやすいよね。

──歌はかなり難解ですよね。

星名 難しい! アルバムの中でも一番難しかったかも。

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