これが私立恵比寿中学だ!“Reboot”したエビ中が真っ白な明るい未来に色を付けるセルフタイトルアルバム

2021年5月、新たに桜木心菜、小久保柚乃、風見和香という3人のメンバーを迎えて9人組グループへと生まれ変わった私立恵比寿中学。同年末に東京・東京ガーデンシアターで2日間にわたって開催された“大学芸会”ライブ「私立恵比寿中学 大学芸会2021 ~Reboot~」では、新体制になってわずか8カ月、9人そろって行う初のワンマンながら、グループの結束力と新たな可能性を見せつけるステージングで、会場に集まったエビ中ファミリー(私立恵比寿中学ファンの呼称)に安心感と興奮を与えた。

まさに“Reboot”(再起動)したと言える新生エビ中が2022年度の幕開けに向けて用意したのは、セルフタイトル作「私立恵比寿中学」。9人体制初のオリジナルソング「イヤフォン・ライオット」、昨年11月に先行配信された「Anytime, Anywhere」に、石原慎也(Saucy Dog)やTORIENA、けんたあろは、キタニタツヤといったエビ中作品初参加のアーティストを多く含む多彩な作家陣による書き下ろし曲を加えた全10曲からなる通算7枚目のオリジナルアルバムだ。5月にはメジャーデビュー10周年を迎えるエビ中が、このアルバムで描いた今現在の“エビ中像”とは。メンバー9人に話を聞いた。

取材・文・撮影 / 臼杵成晃

9人体制初のワンマン、大学芸会でエビ中を“Reboot”

──ニューアルバムの話に入る前に、まずは昨年末の大学芸会について振り返らせてください(参照:私立恵比寿中学、大学芸会で9人体制“Reboot”「運命と戦い続けます」)。新メンバーの3人が加入して8カ月足らず、ライブの場数が踏めない中で挑んだ大きなステージでしたが、すごく完成度が高く、何よりすごく楽しいライブでした。皆さん自身の満足度も高いのでは?

真山りか どうですか? どうでした?

星名美怜 ちゃんと9人がそろってやるワンマンライブは、これが初めてだったんですよね。

──そうですよね。本来は新メンバー3人のデビュー戦になる予定だった夏の「ファミえん」が中止になり(参照:エビ中「ファミえん」中止が決定、代わりに28時間生配信「#FAMIEN28h」をイベントと同時刻に)、初めて9名全員がそろった「ちゅうおん」(参照:エビ中、9名全員の初ステージ「ちゅうおん」でそれぞれの個性をアピール)は振り付けのない特別な座組のライブだったので、通常のスタイルでの初ワンマンが年末の大舞台という。

真山 今回の大学芸会は演出を「I'll be here」(2019年12月発売のアルバム「playlist」収録曲)の振り付けをしてくださったU-SK先生にお願いしたんです。U-SK先生は5人で回ったコンセプトライブ「MOVE」(参照:エビ中、6月にコンセプトライブ「MOVE」で3都市巡る)のときに初めて演出でお世話になったんですけど、今までのエビ中のライブの作り方とは少し違いました。

星名 先生と1曲ずつ、1場面ずつ丁寧に作っていくような感じで。(桜木)心菜、(小久保)柚乃、(風見)和香にとってはもちろん初めての体験だけど、私たちにとっても初めてのことが多かった。新鮮で斬新な演出が多くて、長年やってきた6人にとっても刺激的なライブでした。

真山 今までエビ中は、春になったら春ツアーがあって、夏には「ファミえん」があって、秋に「ちゅうおん」をやって、そして年末に大学芸会というだいたいの流れがあって。演出も基本は変わらず、やるべきことが決まっていたんですね。でも「MOVE」では私たちの頭になかった発想をU-SK先生が投げてくださって、自然とできあがっていた“エビ中の常識”が打ち破られたというか。大学芸会では場面ごとの演出でやることも多くて「これってアリなの!?」と不安になるところもあったけど、「MOVE」での経験があったので、U-SK先生を信じてやってみようと。

──確かに凝った演出も多くて裏側は大変だろうなと思いましたけど、皆さんひたすら楽しそうでしたね。

安本彩花 すっごく楽しかったですね(笑)。もう、ライブをやることが当たり前に楽しくて。

真山りか

真山りか

安本彩花

安本彩花

星名美怜

星名美怜

──小林さんと中山さんは、すでに形ができあがったエビ中に新しく入っていき、ほどなく大きなライブに挑むという経験を過去にしているので、新メンバー3人が感じる緊張やプレッシャーには特に理解があったのではないでしょうか。

小林歌穂 そうですね。でも、3人は私たちよりも肝が据わっているから、緊張はしてたんだろうけど、怖がっている感じはなくて。堂々としていてすごいなあと思いました。

──中山さんはどうですか? 2014年の自分と比べて(参照:エビ中大阪公演、転入生かほりこ初ステージで新曲お披露目)。

中山莉子 2014年……小鹿時代ですね。

小林 プルプル震えてた(笑)。

中山 3人はまだあんまりステージを経験していないし、緊張はしてたと思うんですけど、ステージに立ってしまえばそれを感じさせない。今まで練習してきたことをしっかり出せているし、アピール力もあって「アイドルだな」と思いました。

柏木ひなた

柏木ひなた

小林歌穂

小林歌穂

中山莉子

中山莉子

桜木心菜 もちろん緊張はしたんですけど、お姉さんメンバーが支えてくださる安心感があったから、不安はなかったです。ステージ上で目を合わせる楽しい振り付けのときは本当にすごく安心できたし、そういうのが緊張の緩和につながったんだと思います。

──小久保さんは2014年の中山さんを彷彿とさせる小鹿感がありつつも、不思議と堂々とした感じもあって。

真山 ひょうひょうとしてますよね。

小久保柚乃 1曲目で下からウイーンと上がってくるまではすっごく緊張してたんですけど、曲が始まって踊っているうちにだんだん「楽しいな」と思って。緊張よりも楽しさのほうが強かったです。

風見和香 私、本番の前はいつも本当に緊張していて、りかちゃんに「顔が怖いよ」って注意されるんです(笑)。大学芸会は2日間とも本当に緊張してたんですけど、何度も練習したことをしっかり思い出しながら、お客さんの顔を見ながら……楽しみつつもやっぱり必死でした。

桜木心菜

桜木心菜

小久保柚乃

小久保柚乃

風見和香

風見和香

メンバーの関係性、変化の理由は

──大学芸会の2日間を通して、メンバーの中でも9人のエビ中の形というのが明確になってきたのかなと感じました。

柏木ひなた やっと見えてきたという感じがしました。

──新しい形になることによって、年上メンバーの役割にも変化がありますよね。柏木さんなんて最初は末っ子だったのに、今では“BOSS”の異名を持つほどに。

柏木 そうですね(笑)。

星名 かほりこが一番変わったんじゃない?

小林 最年少じゃなくなったのは大きいですね。もう新メンバーじゃないっていう……入って何年経ってんだって感じですけど(笑)。それがなくなったから、ちゃんとメンバーの一員としてエビ中に力を添えられているというか。ずっと後ろからちょっと手を添えている感じだったんですけど、3人が入ってきて時間が経つと、私も一緒になって前に進んでいるような感覚があって、すごくうれしいですね。

真山 莉子はどう?

中山 変わった自覚? こう言っちゃうとあれだけど、もっとちゃんと人の話に耳を傾けるようになりました。

一同 あはははは!

真山 素晴らしい(笑)。

柏木 他人への興味が湧いてきたんだよね。

──人間に興味が出てきた(笑)。

中山 それが大きいと思います(笑)。

私立恵比寿中学

私立恵比寿中学

安本 まやさん(真山)もけっこう変わった気がする。たぶん、最年長として「3人に何かを伝えなきゃ」って、エビ中に対していろいろ考えた部分があるんじゃないかなって。まやさんとエビ中の話をしていると、まやさんの言葉が前と変わった感じがする。

真山 それはあなたも変わったからじゃない?

星名 ヤスも変わったよ。

真山 年齢を重ねるうちに見せる部分、見せない部分も変わってるし。6人は全員成人したことも大きいし、そういう変化なのかなあ。変化というよりは、自分というものを確立した、というほうが近い気がしますね。

柏木 そうだね。それが新メンバーの加入とたまたま重なったのかも。

──なるほど。6人がそういう感覚になっていなかったら、もしかしたら新メンバーをここまでうまく迎え入れることができなかったかもしれないですね。

星名 それはあるよね、ホントに。

──最高で11歳という年齢差があってもうまくカラーが混ざり合っている感じがあるし、ユニゾンの変化もエビ中にいい効果をもたらしているような。

柏木 ユニゾンが明るくなった(笑)。いい変化だと思います。