映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」 PR

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「素敵なダイナマイトスキャンダル」末井昭×峯田和伸(銀杏BOYZ)×尾崎世界観(クリープハイプ)|ギリギリを攻めろ!がんじがらめの時代に“ダイナマイト”を投じる話題作

編集者・エッセイストの末井昭の自伝的著書「素敵なダイナマイトスキャンダル」が映画化。3月17日より全国の映画館で上映される。これを記念して、音楽ナタリー、コミックナタリー、映画ナタリーでは特集を展開する。

音楽ナタリーでは原作者の末井、映画に末井の心の友・近松役で出演する峯田和伸(銀杏BOYZ)、映画好きとして知られ、小説やエッセイを刊行し、雑誌「SHABEL」の編集も手がけた尾崎世界観(クリープハイプ)による鼎談を企画した。峯田と尾崎は映画で描かれる1970年代のカルチャーを体験していない世代ということもあって、末井の話に興味津々。話題は今では考えられない当時のカルチャーの話から互いの創作についてまで広がった。

取材 / 望月哲 文 / 清本千尋 撮影 / 後藤壮太郎

末井と峯田の出会い

──まずは峯田さんと末井さんの出会いについてお伺いしたいのですが、末井さんは銀杏BOYZのライブに初期から通っていたんだとか。

末井昭

末井昭 最初に観たのは銀杏BOYZの2004年1月23日の渋公ライブ(「不登校生徒集会 イン 渋谷公会堂」)なんですよ。ゴイステ(GOING STEADY)から銀杏に変わったばかりのタイミングで。18時くらいに始まって、2時間ぐらいで終わったと思ったら3時間経ってたんですよね。時間の経過が3時間を2時間だと思うぐらい早かった。だからすごいガーッと惹かれたんだと思います。

──銀杏BOYZを観に行くようになったきっかけはなんだったんですか?

末井 友達が「これ聴け」って、銀杏のCDを貸してくれたので聴いたんですけど、そのときは「まあこういうのがあるんだ」くらいな感じで。でもやっぱりライブを観たら全然違いました。

──峯田さんは末井さんのことは以前からご存知で?

峯田和伸(銀杏BOYZ) それこそ、僕は映画の原作になった「素敵なダイナマイトスキャンダル」を大学の終わり頃に読んで。当時1970年代あたりのカルチャーに興味を持っていて、アラーキー(荒木経惟)さんや森山(大道)さんが撮った写真が好きだったんですよね。あと村井(ex. 銀杏BOYZ)くんもそういうのが好きだったので、「これ読んだ?」とか「こういう面白い本があるよ」とか2人で教え合ったりして。そういう中で末井さんの本とも出会って「面白い人がいるなあ」って思ってたんです。あるとき知り合いの編集者の松田(義人)さんが末井さんを紹介してくれたんです。僕はもう「うわ!」と思って話せなかったんですけど、村井くんはワーッと話しててうらやましかったなあ。

末井 僕は、銀杏BOYZに教えてもらうことが多かったんだけどね。例えば“カッコ悪いことがカッコいいんだ”みたいな感じとかさ、そういうことをすごく教えられたと思っていますよ。パッと銀杏BOYZ見ても、普通のカッコいいとは違うからね。でもそれがカッコいいなと思っていました。

クリープハイプの音楽は笛子のような人にきっと響く

──尾崎さんは今回映画をご覧になられてどんな印象を持たれましたか?

尾崎世界観(クリープハイプ)

尾崎世界観(クリープハイプ) 自分が知らない時代の話なんで新鮮に感じました。自分の父親が若いときの世の中はこんな感じだったんだろうかとか思いながら観ました。そういう世界に峯田さんがいて不思議な感覚でしたね。

──全体の中で「ここはすごく印象的だったな」みたいなところを挙げるとするならば?

尾崎 末井さんの愛人・笛子がよかったですね。この時代のことはよく知らないけど、こういう女性は形を変えていつの時代にもいるのかなと思いました。それにああいう感じの人こそ自分の作っている音楽が響いているんだと思います。人に対して求めるものがすごく多いだろうし、感じるものも多いだろうから、生活していくのは大変かもしれないですけど、逆に心が豊かな人なんじゃないかなと思いました。

──尾崎さんからすると、笛子は気になるタイプですか?

三浦透子演じる笛子。

尾崎 そうですね。一緒にいたくはないけど、なんか興味があります。独特の色気があると言うか……峯田さんは一緒のシーンはなかったんですか?

峯田 僕はなかったですね。

尾崎 そうですか。出てくる女性は全員印象的でした。

喫茶店で話したりセックスしたり

尾崎 あとこの映画は喫茶店のシーンが多かったですよね。僕の母親が昔、喫茶店でパートをしていて、子供の頃はそこに一緒に行ったりもしましたけど、今の僕にとって喫茶店はあまりなじみがなくて峯田さんと一緒に行くぐらいですね(笑)。

──喫茶店のシーンはこの映画の中でとても重要なシーンですよね。末井さんと近松さんが語り合う場面とか。

「素敵なダイナマイトスキャンダル」より、喫茶店のシーン。

末井 人と会うのがだいたい喫茶店だったんですよ。それも朝までやってる深夜喫茶。僕は当時あんまりお酒が飲めなかったから、飲み屋で人に会うことはそれほどなかったですね。

峯田 深夜喫茶って、どれくらい払えば朝までいられるんですか? だいたいコーヒー1杯頼んで500円ぐらいですか?

末井 3時か4時に追加料金として、もう1杯コーヒーを注文しないといけないんです。その前に出れば1杯分の料金なんですけど。

峯田 そんな朝までやってる喫茶店、今はあんまりないですよね。

末井 10年くらい前には高田馬場にあったんですけどね。

──当時の若者はそういう感じで朝まで語り合ったりしていたんですか?

末井 いやいや、そんなことないと思いますよ。酒飲む人は飲み屋行ったりしてたかもしれないし。でも喫茶店の数は多かったですね。僕らは喫茶店でいろいろ話したり、セックスをしたり……。

一同 (笑)。

末井 当時は同伴喫茶ってのがあったんです。3階建ての喫茶店で、2階が同伴フロアって呼ばれてて、そこに行けばそういうことをしている人もいて。喫茶店の種類もいろいろあって、今より幅広い活用の仕方があったような気がします。あと、こたつ喫茶っていうのがあったよ。

峯田 こたつ喫茶!?

末井 僕ね、こたつ喫茶に行ってね、映画に出てくる笛子さんとセックスしたんですよ。それがね、ものすごい侘しい感じなの。ベニヤ板で仕切った部屋の中にこたつがあるんですよね。

峯田 へー! なんか憧れません? そういうの。

尾崎 憧れますね。

峯田 もう今は○○喫茶ってマンガ喫茶ぐらいじゃないですか。

末井 今はそうだよね。こたつ喫茶は蝶ネクタイしたボーイさんが部屋にガチャっと入ってきてコーヒーを無言で置いていくの。「あとはどうぞ、楽しんでください」みたいな感じで(笑)。

左から末井昭、峯田和伸(銀杏BOYZ)、尾崎世界観(クリープハイプ)。

峯田 本番はしちゃいけませんよとか、決まりはあるんですか?

尾崎 そういう場合は相手も一般の方のことが多いんですか?

末井 2人の勝手ですからね。何しようが自由です。来るのは主に恋人同士だと思います。そこに女の子は常駐していなかったし。

尾崎 あ、恋人同士が。じゃあラブホテル代わりなんですか。なるほど。

峯田 いろいろあったんすねえ。うらやましいっすね、ホント。

末井 でも僕はこたつ喫茶を恨んでますよ。「こんなとこで!?」みたいな感じで。でもしないで出るのもあれだし……だからものすごいその存在自体を恨んだんですよ。こたつ喫茶の存在を(笑)。

尾崎 こたつ喫茶はどこにあったんですか?

末井 新宿です。新宿のホントに駅にわりと近いところ。

峯田 へえ。末井さん、尾崎くんはぱっと見、きれいに見えますけど、わざわざそういう猥雑なところを選んで歌詞にしてるんです。「ラブホテル」っていう歌もあるくらい。

末井 へえ。オシャレな感じなのに。

尾崎 そうですか(笑)。

峯田 歌はホント猥雑……あ、今のは僕なりに初対面の2人を紹介したつもりです。

尾崎 はい(笑)。

末井 クリープハイプの曲は早口だからなかなか言葉が聞き取れないんだよね。それはそれで気持ちいいんですけど、そういうことを歌ってるんですか?

尾崎 ほかの人が歌っているようなことを歌ってもしょうがないなと思って、「空いてるところはどこだろう」と探して、最初の頃はあえてそういうところを選んでいました。でもよく考えてみれば、こういう猥雑なものや行為ってほとんどの人が経験しているようなことだと思うんです。だから共感してもらえるはずだと思って書いてきて、続けているうちにすごくそれが自分に合ってきましたね。

「素敵なダイナマイトスキャンダル」
2018年3月17日(土)公開
「素敵なダイナマイトスキャンダル」
ストーリー

岡山の田舎町に生まれ育った末井昭は、7歳のときに母・富子が隣家の息子とダイナマイトで心中し、衝撃的な死に触れる。18歳で田舎を飛び出した末井は、工場勤務、キャバレーの看板描きやイラストレーターを経験し、エロ雑誌の世界へと足を踏み入れる。末井はさまざまな表現者や仲間たちに囲まれ編集者として日々奮闘し、妻や愛人の間を揺れ動きながら一時代を築いていく。

スタッフ / キャスト
  • 監督・脚本:冨永昌敬
  • 原作:末井昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫刊)
  • 出演:柄本佑、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重豊、村上淳、尾野真千子ほか
  • 音楽:菊地成孔、小田朋美
  • 主題歌:尾野真千子と末井昭「山の音」

※R15+指定作品

末井昭(スエイアキラ)
1948年6月14日、岡山県生まれ。編集者・エッセイスト。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなどを経て、セルフ出版(現:白夜書房)設立に参加。「ウイークエンドスーパー」「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」など15誌ほどの雑誌を創刊した。2012年に白夜書房退社。以降は執筆活動を中心にフリーの立場で活動している。2014年には著書「自殺」が第30回講談社エッセイ賞を受賞。2018年3月に半自伝的な著書「素敵なダイナマイトスキャンダル」が、冨永昌敬監督により映画化される。またペーソスというバンドにTサックスで参加しており、サックス奏者の顔も持つ。3月1日に太田出版から最新著書「生きる」が発売された。
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
2003年1月、GOING STEADYを解散後に峯田和伸(Vo, G)が、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時に発売する。続くツアーやフェス出演では骨折、延期など多くの事件を巻き起こした。その後も作品のリリースを重ねていたが、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。2016年6月に、サポートメンバーを従え8年半ぶりのツアー「世界平和祈願ツアー 2016」を開催。このツアーの追加公演として8月に初の東京・中野サンプラザホールにてワンマンライブ「東京の銀杏好きの集まり」を実施した。2017年7月から3カ月連続で「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」とシングルをリリース。10月には初の日本武道館単独公演「日本の銀杏好きの集まり」を成功に収めた。2018年は2月発売の東京スカパラダイスオーケストラのシングル「ちえのわ feat.峯田和伸」にフィーチャリングゲストとして参加し、俳優業では「素敵なダイナマイトスキャンダル」「猫は抱くもの」に出演することが決定している。また現在公開中の映画「ぼくの名前はズッキーニ」では、自身初の声優として主人公のズッキーニの吹替えを担当している。
クリープハイプ
尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)からなる4人組バンド。2001年に結成し、2009年に現メンバーで活動を開始する。2012年4月に1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」でメジャーデビュー。2013年7月に2ndアルバム「吹き零れる程のI、哀、愛」をリリースし、2014年12月には「寝癖」「エロ / 二十九、三十」「百八円の恋」といったシングル曲などを収めた3rdアルバム「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」を発表した。2015年は5月に映画「脳内ポイズンベリー」主題歌の「愛の点滅」をリリースしたほか、4カ月間におよんだ全国ツアーの総集編となる単独公演を東京・日比谷野外大音楽堂で実施。9月には明星「一平ちゃん 夜店の焼そば」のCMソングを収録したニューシングル「リバーシブルー」をリリースした。2016年には4枚目のアルバム「世界観」を発表。2017年4月には映画「帝一の國」の主題歌「イト」をシングルリリース。2018年は1月よりホールツアー「今からすごく話をしよう、懐かしい曲も歌うから」を行い、5月11日にはキャリア2度目の東京・日本武道館単独公演「クリープハイプのすべて」を開催する。また尾崎は半自伝的小説「祐介」やエッセイ「苦汁100%」を刊行し、作家としても評価されている。3月16日には2作目のエッセイ「苦汁200%」を刊行する。