今回はレアテイク満載

──あと、曲としていいフックになってるなと思ったのが「ダンスホール・ガール」と「ビタミンU」で。どちらもロマンチックで泣けますね。

ワタル　「ダンスホール・ガール」は歌入れのテーマが「ソウルフルに、感情を込める」っていうものだったんですけど、やりすぎちゃって、最後のサビなんかもう泣いちゃってですね。で、そのままそれが採用になってるんですけど。

──そのテイクを良しとしたのは？

ワタル　いや、俺はエンジニアに「すいません、NGで」って言われるかなと思ったんだけど、牧野（英司）さんっていう重鎮の優秀なエンジニアの方が、「最高のテイクが録れた！」ってすげえうれしそうでね（笑）。「あー、これぐらいでいいんだ」っていう、それも大きな発見で。曲に入り込むっていうのも大切なのかなって。

──そこまで感極まるような何かがあったんですか？

ワタル　いや、具体的にはないんですけど。何かを追い求めるというか、この曲ではそれが女の子っていうメタファーになってるんだけど、見えないものを欲しがるっていう状態はずっと続いてるので。切ない感じにもがいてるっていうか。「遠く思う」みたいなところが入っちゃったね、やっぱ（笑）。

──そうか。レアテイクなんですね。

ワタル　レアテイクです（笑）。レアテイク満載だね？ 今回。

ヤス　そうだね、「カタルシス」にしろ（笑）。

──キレながら叩いたんですもんね（笑）。

ケーサク　ハハハ（笑）。

ワタル　やっぱ何かを込めるっていうか。ロックも芸術のはしくれだったりするから、そういうエネルギーみたいなヤツが必要だったんだな、きっと。

自分の存在を再認識するアルバム

──「ビタミンU」は情けない男子の心情的な曲で。

ワタル　まあ、遊びで作ったんで。こういうのもあっていいかなと思って。

──赤塚さんは演奏しててどうでした？

ヤス　演奏以前に……ちょっとびっくりしたというか。こういう明るくて、ハネてて、どポップな曲は今までの感じじゃないじゃないですか？ でもやってて楽しいですよね。

──男子はより共感するのかなと。

全員　ハハハ！（笑）

──DOESの胸キュンソングですよ。正直に言っちゃう感じ。

ワタル　あー、「正直に言っちゃう」はアルバム全体通して心がけてた感じはありますね。

──震災を境目にいろんな面で「今までどおりでいいのか？」と思うことも多いですが、ずっと好きで信じてやってきたことをもう1回認める、それも本当だなと、このアルバムを聴いて思いました。

ワタル　そうですね。自分の存在を再認識する、生きてるってことを再認識する。それがね？ 今、日本中に満ち満ちてるんで。そこに共感していただくと……そこもうれしいですね。

──しかし、こんなに伝わりやすいアルバムに対して、若干タイトルのわかりづらさが……（笑）。

ヤス　ハハハ！（笑）

ワタル　「カタルシス」と「シビリゼーション」で「カタルシス文明」って、単語を合体させただけなんですよね。文明っていうものが失われるのを目の当たりにしたので。失ったことで、人が作り出すものがそこにある素晴らしさを確認したというか。だから「カタルシスすることによって文明が生まれる」＝ポジティブな方向に変える、しかも軽い感じでやっちまおう、と。まあ何がカタルシスなのかは人によるけど、俺が今思うのは抱え込まずに内面をさらけ出すっていうことですね。