ナタリー PowerPush - DOES
「明るいロック」を追求した新作「KATHARSIVILIZATION」
ニューアルバム「KATHARSIVILIZATION」で、DOESは明らかな変化を見せた。メジャーコードのナンバーが連投され、歌詞は明快に人を突き動かす。しかもある曲ではアレンジャーにAKB48などを手がける田中ユウスケを迎え、スケール感とポップさが開放感を拡張する。が、バンドサウンドはこれまで以上に生き生きと躍動し、メッセージは核心を突いてくる。彼らに何が起こったのか? バンドの新たなフェーズを示すアルバムについて、メンバー3人に訊いた。
取材・文 / 石角友香 インタビューカット撮影 / 高田梓
キーワードは「明るい、パワフル、ソウルフル」
──今回のアルバムの制作に入る前の心境は、どんなものだったんでしょうか。
氏原ワタル(Vo, G) 漠然と前回のアルバムよりも明るくしたいなっていう考えがあって。バンドがちゃんと外で勝負するには、一人ひとりのパワーが前に出てないとダメだぞっていうのをメンバーに話してて。もちろん俺も毎日、そんなこと考えてるし。もっと自分の中にある感情をきちんと出すことによって、「ロックやってるんだ」ということを外に出すというか。バンドっていう生命体がちゃんと生き生きしてないとダメなんだよね、っていうので、「明るい、パワフル、ソウルフル」っていうのが今回のキーワードになってました。
赤塚ヤスシ(B) うん。
ワタル それで制作に取り掛かろうとしたときに、東日本大震災が起きて。
──震災前から既に、明るいものを作りたいという気持ちではあったんですね。
ワタル うん、元々。ただ、震災が起きたあとにいろいろ考えたわけですよ。それはそれは悲惨な状況を目に当たりにしてね。やっぱショックだったし、怖かったし、「この状況で音楽をやるのはどうなの?」みたいな気持ちにもなったけど、やっぱ音楽しかできないし。音楽によって人を救うこともできたりするしね。音楽はそういう力を持ってるから。それを信じて、より強く出さなきゃいかんっていうので、歌詞についても楽曲についても、力強いものになったと思う。明るくすることで伝わりやすくなるし、伝えるんだったらよりシンプルな言葉でやったほうがいいんじゃないかと思ったし。日本中が混乱してた時期だったから、そこでややこしいこと言ってもしょうがないし、「がんばれ」って言うのもなんかねえ? 逆に平べったすぎるっていうのかな。
──そうかもしれませんね。
ワタル だから俺が思ったのは、毎日毎日を大切にすることなんだな、と。その……日々が一瞬にして失われた人もいるだろうし、家も壊れちゃったり、そういうことが起こり得るんだっていうのを知った瞬間に、やっぱ生きてる今が大切なんだなと思って。「今を生きる」にしてもね、そういうことを俺も誰かに言ってほしかった。だから自分でやっちゃったんだけど。尊い瞬間瞬間を繰り返して、ちゃんと全力で生きることが自分の幸せにもつながるし、まわりの幸せにもつながるし、うん。
──そうした氏原さんの思いはメンバー間で共有できたんですか?
ヤス そうですね。もう初めにそういう話をして。そのときだけじゃなくて、常に話していましたし。
「変わった感」を出したかった
──今回のアルバムは短い期間に凝縮して作られたような印象があるんですけども。
ワタル ですね。6月、7月ぐらいでほぼ全部を作って。
──早い時期にできた曲は?
ワタル 「ライカの夢」とか「ブルーナイト」とか。
──「ブルーナイト」のマイナーコードで始まって、サビでメジャーコードで解放される感じって、すごくわかりやすい展開ですね。
ワタル 最近、そういうのが好きなんですよ。
──王道ですよね。ジャパニーズロック的というか。
ワタル あー、そうなのかな。ま、このアルバムは国内ロックにちょっと目を向けてみようっていうコンセプトで作られてたりもするんだけど。それで「プロデューサーを入れるのか、どうなのか」って話から「じゃ、アレンジャーを入れて1曲やってみようか」っていうので、AKB48の「ヘビーローテーション」のアレンジをされた田中ユウスケさんに「ブライテンA」のアレンジをお願いしたんです。これはいい経験になりましたね。「俺が書いた曲がこんな感じのアレンジで返ってくるんや」「あ、ここまで飛ばしていいんや、面白いな」と思って。それをうちら流のバランスに着地させたのが、この形なんですけど。
──田中さんとアレンジするっていうのはディレクターのアイデアですか?
ワタル うん、ディレクターと話して。なんかそんな曲があるほうが「変わった感」も出せるだろうし、違ったことにチャレンジしてるっていうのも出せるだろうから、「いいんじゃない?」と。
──違和感はなかったんですか?
森田ケーサク(Dr) 最初はありましたよ。違和感っていうか、お願いして戻ってきたアレンジ聴いて、「やっぱDOESじゃねえな」っていうのはありましたけど。
ヤス シンセきら~、やったしね?(笑)
──DOESらしさを出す上で、具体的にはどんなことをしたんですか?
ヤス 単純にプレイの面だけですね。もうホントにドラムとか、人が叩けるドラムじゃなかったから(笑)。
ケーサク 「どうやったらここにシンバル入るんだ?」っていうアレンジだったから。
ヤス それを自分らのロックに戻す、その作業だけです。
通常盤CD収録曲
- 今を生きる
- アクロス・ザ・ライフ
- ナイスデイ
- アルバトロス
- ダンスホール・ガール
- カタルシス
- サンダーライト
- ブルー・ナイト
- トライブ・ドライブ
- ビタミンU
- ライカの夢
- ブライテンA
- これからここから
アナログ盤DISC1収録曲
- 今を生きる
- アクロス・ザ・ライフ
- ナイスデイ
- アルバトロス
- ダンスホール・ガール
アナログ盤DISC2収録曲
- カタルシス
- サンダーライト
- ブルー・ナイト
- トライブ・ドライブ
- ビタミンU
- ライカの夢
- ブライテンA
- これからここから
DOES(どーず)
2000年に結成された、福岡出身のスリーピースロックバンド。クラブイベント出演や音源制作を中心に、精力的な活動を展開する。数度にわたるメンバーチェンジを経て、2005年8月より現在の編成となる。2006年には活動拠点を東京に移し、初の全国ツアーを敢行。同年9月にはシングル「明日は来るのか」でメジャーデビューを果たす。2010年4月にリリースしたシングル「バクチ・ダンサー」は10万枚を超えるヒットを記録した。同年7月には初のベストアルバム「SINGLES」を発表。全国ツアーも精力的に行い、幅広い層から熱狂的な支持を集めている。2011年7月には初のミニアルバム「FIVE STUFF」をリリース。2012年3月には、東日本大震災を受けて制作したシングル「今を生きる」を発売し、大きな話題を呼んだ。同年5月、ニューアルバム「KATHARSIVILIZATION」をリリース。同月からは全国ツアー「カタルシス文明」もスタートする。