ナタリー PowerPush - DOES
「明るいロック」を追求した新作「KATHARSIVILIZATION」
今必要なのは個人に響くもの
──田中さんとはどんな話をしたんですか?
ワタル 田中さんが「マイブラ(MY BLODDY VALENTINE)が好きなんだ」とか言ってて、ロック好きなんだなあと。共通する話をして「じゃあ、話早いですね」と。
──へー、意外ですが、良かったですね。
ワタル だからこの曲は、無理やりわかりやすくしたわけでもないし。
──確かに。それを言ったらラストの「これからここから」のほうが、よっぽどストレートでわかりやすいですよね。
ワタル うん。そっちのほうがよっぽど明るいと思うし。俺はTHE BLUE HEARTSが大好きで、それでロックを好きになったぐらいだったんだけど、たまたま(甲本)ヒロトさんに千歳空港で会う機会があって。そのときTHE BLUE HEARTSのことをいろいろ思い出して、震災後にそういう明るいパワーとか、ポップパンクっぽい曲があるといいんじゃないかと思ったことから、この曲を書いたんです。だから「これからここから」はホントにモロに被災された方々のことを思って書いてるし。THE BLUE HEARTSの曲も明るい感じでやる気になれるし、ハッピーになれるし、メッセージ性も強いじゃないですか。そういうことを今こそやるべきだと思ってたんですね。
──ロックを好きになったきっかけとつながったんですね。
ワタル そう。むき出しでちょっとおかしくて、壊れててっていう感じが昔から好きだし、個人に響くようなものが、今必要かなと思って。
──そうですよね。例えば「被災件数1万」じゃなくて、ひとり×1万それぞれに起こったことですからね。
ヤス うん、そうそう。
ワタル だから、うちらのファンは当然のように勇気づけられるだろうし、そうじゃないロックにあまり興味がない人でも言葉がスッと入ってくるだけでなんかいいんじゃないかな、と思って作りましたね。
「カタルシス」は感情を出したプレイ
──赤塚さんと森田さんは氏原さんが書いてきた今回のアルバムの歌詞についてどういう気持ちになりました?
ヤス いやー、今までと全く違ったんで。一番違うのは抽象的か具体的かなんでしょうけど。今までが心象風景だったのが、ここ(目の前)で言われてるみたいな近さがすごい新鮮で。やっぱプレイもそのことで変わってくるし。「いいなあ!」と思いました。
──自分も意味をわかって、心の中で歌いながら演奏できる?
ケーサク それはありますね。
──今までは情景を思い浮かべて演奏していたんですか?
ヤス ほとんどはそこまで考えてなかった。だから、自分の世界に凝り固まっていたというか。それが曲と近くなれたことで、演奏も広がりましたね。
──曲順も迷いがない感じで。冒頭、メジャーコードの曲が続くんで、びっくりしたんですけど。
ワタル そうなんですよ。だから最初のほうに固めてるんですよ、「驚きー!」みたいな(笑)。
──ハハハ(笑)。メジャーコードの曲ができやすかったんですか?
ワタル いや、それは決めてたんですよね。震災前からの曲もあったけど、震災後はとにかく「明るくしたい」っていうのがあったから、それをロックっていうフォーマットで自分なりのサイズ感で偽りなくやるって。それでやってみたら以前よりもうまくやれるようになれたっていうのかな? 昔は明るくしようと思ってもうまくできなかった部分が、今はヘビーな感じも加えつつやれるようになったと思います。
──そうですね。明るいけどサウンドの重心は低いし太いというか。
ワタル あとはアナログ感を出したかったんです。それで「カタルシス」は最初クリック鳴らしてたんだけど「カタルシスだから、吐き出さなきゃよー!」って感じになって。もう、クリックも外してケーサクに「もっと来い! もっと来い!」って言ったら、珍しくケーサクが怒って。
ヤス ハハハ!(笑)
ケーサク 「これ『カタルシス』って曲なんだからもっと吐き出せよ」って言われて、それに対して歌詞にあるとおりに「うるせえ!」みたいに返して(笑)。そのまんまの感情で演奏したら、ワタルも周りも「これだよ!」って。
──感情が共有されたと。
ケーサク そういう意味でも曲に入りやすかったですね。それまで感情を出すとか苦手で、ロックやってるのにこんな感じでいいのか? とか、いろいろ無駄に考える癖がひどかったんですよ。「自分をさらけ出してやったらいいよ。お前はそれでも足りないぐらいなんだから」ってずっとワタルからも言われてて。それを今回やってみて、周りから「いいよ!」って言われると「あ、これでいいんだ」って思えるところもあったし。レコーディングでいい経験ができつつ、曲もいいのができたんで、すごく良かったですね。
通常盤CD収録曲
- 今を生きる
- アクロス・ザ・ライフ
- ナイスデイ
- アルバトロス
- ダンスホール・ガール
- カタルシス
- サンダーライト
- ブルー・ナイト
- トライブ・ドライブ
- ビタミンU
- ライカの夢
- ブライテンA
- これからここから
アナログ盤DISC1収録曲
- 今を生きる
- アクロス・ザ・ライフ
- ナイスデイ
- アルバトロス
- ダンスホール・ガール
アナログ盤DISC2収録曲
- カタルシス
- サンダーライト
- ブルー・ナイト
- トライブ・ドライブ
- ビタミンU
- ライカの夢
- ブライテンA
- これからここから
DOES(どーず)
2000年に結成された、福岡出身のスリーピースロックバンド。クラブイベント出演や音源制作を中心に、精力的な活動を展開する。数度にわたるメンバーチェンジを経て、2005年8月より現在の編成となる。2006年には活動拠点を東京に移し、初の全国ツアーを敢行。同年9月にはシングル「明日は来るのか」でメジャーデビューを果たす。2010年4月にリリースしたシングル「バクチ・ダンサー」は10万枚を超えるヒットを記録した。同年7月には初のベストアルバム「SINGLES」を発表。全国ツアーも精力的に行い、幅広い層から熱狂的な支持を集めている。2011年7月には初のミニアルバム「FIVE STUFF」をリリース。2012年3月には、東日本大震災を受けて制作したシングル「今を生きる」を発売し、大きな話題を呼んだ。同年5月、ニューアルバム「KATHARSIVILIZATION」をリリース。同月からは全国ツアー「カタルシス文明」もスタートする。