ナタリー PowerPush - DOES

時代とバンドの閉塞感を打破した待望ニューアルバム「MODERN AGE」

時代の閉塞感とか、監視社会とか、もはやデジャブのようにしか聞こえない。もちろん、それは現実だが、DOESにとってそこに漬かっているのはクールじゃない。あくまでドライでザラついた質感を伴いながら、彼らの内側には静かに燃えるものがある。バンド最大の危機からの脱出と「バクチ・ダンサー」のヒットのリンク、そしてさらにこのバンドでしか鳴らせない何かを掴むための前進が、ニューアルバム「MODERN AGE」に結実した。繰り返し聴くうちに冷静さと熱さが身体に行き渡るこの作品について、3人に訊いた。

取材・文/石角友香 インタビュー撮影/中西求

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バンドがうまくいってると、曲を作るのも進む

──DOESにとってホントにいろんなことがあった1年だと思うんですが、振り返ってみて2010年はどんな年でしたか。

インタビュー風景

氏原ワタル(Vo,G) なんかこう躍動の年というか、いい意味で始動なのかな? 去年はドラマーのケーサクが脱退してまた入ってとかで、バンドがガタガタだったんで。それを乗り越えて、決意も新たになって良かったなと思います。

──DOESを取り巻く状況とバンドのモードはリンクしてたんですか。

ワタル バンドがうまくいってると、曲を作るのも進むんですよね。落ち着いて力強くできるっていうか、バックボーンがあるっていうのかな。それがあると曲にもライブにも破壊力が出てきますからね。それがずっとこういいスタンスで続いたなと。そういう年でした。

──DOESってデビューしたとき、すでにできあがってる印象があったんですけど、そんなふうに見えるバンドにもいろいろ混乱は起こるんですね。

ワタル いや、もうね、全然完成されてないし、ずっと葛藤があったからね。特にそんなに「メジャーでやるんだ!」とか「デビューしたい!」とか、そういうバンドじゃなかったし、でもメジャーのフィールドには興味もあったし、ふさわしいと思ってるし。いいスタッフに恵まれて、超ラッキーだなとも思うし。そう思うからこそ「ダメだろ、そんなことじゃ」って、メンバーを怒ってばかりでしたね。今も変わらんかもしれんけど(笑)。そういうことを言い続けて、バンド自体がパンクしちゃったのが去年下半期。

──なるほど。

ワタル でも、それを乗り越えて俺の考え方もちょっとずつ変わってきて。この3人で一丸となってやらんとダメだ、打破できない、未来に進んでいこうぜみたいな。ありきたりなことなんだけど、すごく大切なことに気づいたっていうのかな。なんかロックが「健全」とかいうのも変な話かもしんないけど、人としてそのほうがクールだし、やっぱいいバンドはちゃんとがんばってるし。コンセンサスや意志をしっかり持ってるバンドが俺も好きだし。人に操られてホワホワやってるのは嫌いだから。自分たちの足や頭を使って進んでいこうっていう意気込みが、自分たちの歌詞にも出てるなと思うし。世間というか現代の方向も暗くて、その中でどうにかしていきたいっていう意志って、誰でもあると思うんですよね。で、俺らもバンド活動の中で暗闇を経験したからよけいに思うんだけど、暗い時代に暗闇見てどうすんだ? って気持ちがあるから。

──確かに健全であることは、今、普通にクールですよね。

ワタル うん。新しいものを作り続けるっていうか、チャレンジしてカタチにしていくっていう、人間の当たり前の変化みたいなヤツを当たり前に素直に表現する勇気っていうのかな。その勇気を得て、確信に変わりましたね。

「MODERN AGE」は白色蛍光灯じゃない

──今回は新しくファンになった人にとっても待望のアルバムとなりますが。

ワタル そうですね。たぶん「バクチ・ダンサー」以降で増えたと思うし。その人たちが「バクチ・ダンサー」が激しくてゴリゴリなだけじゃなくて、実は計算されててスタイリッシュでハッピーでかつ暴れてる……すべてが詰まってる曲なんですよってわかってくれるかもなって。アルバム全体を通して聴くと、聴き方がちょっと変わって、より好きになってくれるんじゃないかなぁって思います。

──UKでもUSのバンドでもない、DOESならではのニューウェイブ感が出てる曲が多い印象で。その雰囲気が曲にとって、どんな目的で存在してるのかはっきりしてるというか。

インタビュー風景

ワタル そうですね。なんか暗がりで煙草を吸う画の感じとか。なんかね、普通のバンドとかって、白色蛍光灯みたいで。「良く見えればいいでしょ」って感じで。

──隅々まで見えます、みたいな。

ワタル そうそう。日本のドラマとかもそうで、見えすぎてイヤなんですよね。アナログの良さをわかってて使うとか、ハイファイの良さをわかってて使うとか、その辺のサジ加減がですねぇ、できとらんのですよ。

──(笑)。

ワタル 「もうちょっと質感変えろや!」みたいな。やっぱ本当にウマイものとか、特別な空間とか気持ちとかってのは、そこに行かないとダメだし、ある程度探さないとダメだし、考えないとダメだし、感じないとダメだから。そういう意識は「MODERN AGE」の中身にも反映されてますよね。白色蛍光灯じゃないですね(笑)。

──(笑)。じゃあ「MODERN AGE」のコンセプトとか特色は、具体的なサウンドで表現するとどのあたりですか?

ワタル やっぱり普通にアンプにつないだギターの音の良さ、みたいなところですよね。ホントにいい音が出るアンプ、それは高いからとかじゃなく、古いからっていうのはあるんだけど。楽器って古いとなぜかいい音するんですよ。いぶし銀じゃないけど、ストラディバリウスとかでも、古いのは1億円とかするけど、五感に響くっていうのかな。で、あのアナログの質感とかあったかさをハードディスクレコーディングでハイファイに響かせるのはやったし。ガレージ感のある曲をそのまま録るんじゃなくて、すごいポップに録る、とか。ガレージのまま録ると、俺が作る日本語詞とか歌とかメロディには合わなかったりするんで。たとえばユーミンがガレージで歌ってるとか、はっぴいえんどがすっごいハイファイだ、とかいうイメージかな。

ニューアルバム「MODERN AGE」 / 2010年12月15日発売 / 2800円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1693

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CD収録曲
  1. バクチ・ダンサー
  2. ロッカ・ホリデイ
  3. 天国ジャム
  4. スーパー・カルマ
  5. ユリイカ
  6. 神様と悪魔と僕
  7. 群青夜
  8. 僕たちの季節
  9. ジャック・ナイフ
  10. サイダー・ホテル
  11. 夜明け前
  12. 波に乗って
DOES(どーず)

2000年に結成された、福岡出身の3ピースロックバンド。クラブイベント出演や音源制作を中心に、精力的な活動を展開する。数度にわたるメンバーチェンジを経て、2005年8月より現在の編成となる。2006年には活動拠点を東京に移し、初の全国ツアーを敢行。同年9月にはシングル「明日は来るのか」でメジャーデビューを果たす。その後も活発なライブ活動とリリースを展開。2010年4月にリリースしたシングル「バクチ・ダンサー」は10万枚を超えるヒットを記録し、ファン層をさらに拡大した。